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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第6章 『天』という世界で 《ヘブンズ・ウェイハザード》
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レベル63 感情魔 《デモンスカウザム》


「君たちは『バル神話』というのを知っているかい?」


『バル神話』というのは、このグラド大陸で古くから伝承されている神話のことだ。三聖山を護る守護獣たちがとある3人の獣騎士と共にシル・ガイア妃に立ち向かったというのが大まかなあらすじになるこの神話だ。


「まぁ、聞いたことはあるかな・・・みお姉どうだ?」


「う~ん、小さい時に聞いたことあるくらいかな?」


「・・・まぁこの神話自体は別にいいんだが、その神話の中に『デモンズカウザム』という魔物が出てくるところは知っているかい?」



――― 『“魔王獣”デモンズカウザム』 ―――

遥か古代のグラド大陸に突如現れたという伝説上の最恐悪魔である。

伝説上では、デモンズカウザムは『生物の生死』を操ることが出来るという項目がある。

詳細はというと、死後の御霊が集う世界に侵入して御霊の意識に『悪感情』を芽生えさせる。その悪感情を段々と肥大化させ、最終的にはその多大な悪感情が精神を飲み込んで、その御霊を『しもべとしての』悪魔へ変えてしまうというもの。

そしてその肥大化した悪感情がついに生物世界にまで侵食を始めると、同じようなことが起こる故に国自体が滅びる。

過去にそのような方法で滅んだ国の中には、エクスタシアの前身の国である『ラミースト王国』もあるという伝説も残っているそうだ。



「・・・で、そのめちゃめちゃな悪魔が話に出たのって?」


「あぁ、その『デモンズカウザム』なる存在がいるのかもしれないのだ。」


過去1か月で、生活する住人が突如悪魔に豹変したという報告が10件ほど上がっているらしい。

さらにうち7件は、直近一週間内に起こった件数だそうだ。


デモンズカウザムという悪魔は、言い伝えでは実体のない悪魔として記されている。というのも古代の人々は、デモンズカウザムを『悪感情そのもの』としてとらえていたためである。しかしその悪感情という無形物こそがこの世界に存在する最も恐ろしい、そして最も浸透させやすいものなのかもしれない。


「今までは無形物と捉えていたこの悪魔なんだが、とある冒険者の目撃情報でそれがガラリと変わってしまったのだ。」


「それが鵺族の魔物ってワケか・・・なるほど。」


「あの蒼天の塔は元々別世界への架け橋として神々が人間にもたらしたという伝説がある。対してデモンズカウザムが誕生したとされる場所というのは・・・まぁこの地図を見てくれ。」


大臣は机上にエクスタシア王国の領土地図を広げ、とある箇所に人差し指を置いて指し示す。


「・・・孤島じゃないか。」


「この島の名を、『エルゴ』。」



『絶島“エルゴ”』

どの亜人も生活してこなかったにも関わらず、遥か昔から『エルゴ神殿』という神殿が一つ建つだけの小さな島である。

しかし蒼天の塔とこの絶島エルゴ、物理的な距離から見るととてつもなく遠い。しかし古代の言い伝え通りならデモンズカウザムは無形物の感情扱いだ、一切の物理概念が通用しない。

しかし最近の冒険者が主張する目撃談を考慮すると、体力的な問題などの疑問が浮かび上がるのだが・・・


「このエルゴ島と蒼天の塔、二つの場所に手掛かりがあると踏んでいる。しかし我が国の兵力は決して強いと言えるほどではない。」


「・・・で、それで俺達というわけか。ところでさっき目撃情報とか言ってたけど、それは何処での目撃情報だ?」


「一つは蒼天の塔の7階、もう一つはエルゴ方の海上だ。」


ここでの7階というのは、外から見て7階という解釈である。内部で把握する『7階』と外部で把握する『7階』は、高さが全然違うのはレイたちも体験済み。



「調査兼デモンズカウザム討伐を依頼したい。まだ元凶がデモンズカウザムと分かったわけではないが、とにかくお願いしたい。」


レイはミオンに目線を向ける。


「・・・ん?私はリーダーのレイくんに任せるって言ってるでしょ?他のみんなもそうなんだし、レイくんが決めるトコだよ。」


「・・・引き受けるか。」






「というわけでクエスト受けてきたんだが・・・」


「でノープランですか?相変わらず計画性ないですねレイさん。」

「お前いつかロリ鍋に入れて煮込んでやる」

「ムキィーーー!!!」プンスカ


「でもこの先どうするの?さすがに行く場所は決めないと動けないよレイくん?」


『エルゴ島』は言い伝え上ではとある場所からワープを通して向かうらしいが、その場所も分からないためまずはその場所を探したい。

蒼天の塔は・・・もう少し後にしよう。不可解過ぎるので、もう少し謎を解いてから出動したい。


「まぁまずはそのワープ場がある場所だな。でもどこら辺にあるのか分かったりとかは・・・?」


レイはそう言って芽衣の方を向いて回答を促す。

が、


「・・・ん?いや、さすがに分からないよ。ごめんね。」


ですよね~


「でもレイくん、そう言うワープ場とかって神聖な場所とかあること多くない?」


「神聖な場所?」


「あ、確かにそうですね。浄化の鈴があった暗黒洞(ダークサイト)とかバル・グラデの聖窟とか・・・だいたいキーポイントってそういう場所にあったりしますね。」


「みお姉、この国の地図って買ってないか?」


「うんあるよ。でもこの国って結構領土は狭いんだよね。多分そういう場所とかってあの塔ぐらいしか・・・あれッ」


「どした?」


ミオンは地図のとある一点を凝視したのち、なるほどなるほどと言いながらうんうんと首を縦に振っている。


「・・・なんかあったか?」


「いや~この国の地図はあまり注意深く見てなかったから見落としてたよ。見てこれ。」


ミオンが差し出してきた地図の西方を指で示しながら



「三聖山の一つ・『バル・デルト山』だよ。」



グラド大陸の西端に大きくそびえたつ霊峰『バル・デルト』。数々の文明の跡が多く残存するこの聖山を護り続けるのは、守護獣ゲリュオン。

そう、シェリーの守護獣である。


「なるほど、シェリーがいるからあの聖域にも立ち入ることが出来るわけだ。」

「そゆことだよ。」


「う~ん・・・私は行っても大丈夫かな~・・・?」


とつぶやいたのは芽衣。自分の半身が以前クルスオードで戦っていたことはレイたちから聞いて知っている。ゲリュオンは聖域に立ち入るのを認めてくれないかもしれない。

そう思っているのだ。


「え?なんでダメなの?」


しかしそんな心配をかなり軽い感じで吹き飛ばす、シェリーの一声だ。


「だっていまはお仲間さんでしょ?ゲリュオンだって分かってると思うしだいじょーぶ!」


「そ、そうかな・・・?」


「だってわたしがそう思ってるもん!ゲリュオンはわたしの言うこと信じてくれるもん!」


(だってそういう関係だもんなお前らは・・・)


「そう・・・じゃあ大丈夫かな。」



こういう無垢なヤツの発言は時たまこのように確かな自信をつけさせてくれるものだ。さらにこのような場合、大抵言った本人はそういう自覚がない。

よって少しのことでどーですかどーですか!?と言ってくるトコロがあるコイツにも少しは見習ってほしいと思うのだった。

なぁアリナ?


「・・・レイさんどうしたんですか?」


「いやなんでも」


「?・・」





意外にバル・デルトの聖堂までというのは距離がある。

幸いアリナがバル・デルト山に一度言ったことがあるのが結構助かって、麓までは移動呪文『トレイフ』でひとっ飛びだったが、そこから聖堂までの登山が想像以上につらい。

ちなみに聖堂とは、バル・グラデ山で言うところの『聖窟』と同じ場所。いわば『守護獣が住む聖地』のバル・デルト版みたいなものだ。


「ハァハァ・・・!!」

「お前ホント体力ないな(笑)」

「なんですと~!!??」


「でも結構遠いね・・・もう2時間くらい経つけど全然だし・・・やっぱ大きいんだね聖山って・・・」


「・・・シェリーは楽しそうだけどな。」


4人の先頭をただ一人。全然疲れていないのか、その場をダッシュしたりポップしたりステップしたりたまに遊んだり・・・など、めちゃめちゃ楽しそうな感じのシェリーとは対照的に、ホントこのロリガキはww (チラッ)


「!?フンッ、ぜ~んぜんッ疲れてませんし!!!」


けっして荷物持ちなどやらせているわけではない、いやむしろアリナが持っている荷物はこのパーティーメンバーの中で一番軽いはずなのだが。

しかも今朝食い足りないからっておれの朝食まで分けてやったっていうのに・・・


「・・・お前高燃費だな。」

「“成長期”と訳して欲しいですね。」

「じゃあ君の前で元気ハツラツなあの少女を見てみろよ。確かお前より年下で成長期だと思うんだが?」

「・・・ノーコメントでお願いします。」




そして結構な時間が経つ頃(およそ8時間である。途中休憩を入れたのは当たり前。)、5人は頂上にある『バル・デルトの聖堂』に到着した。

大理石なのか、とにかくそのような成分で出来ていそうな柱が数本、屋根などない。そして柱が立つ下には何かの紋章が描かれた円状の床面。ゲリュオンの姿はまだ見えない。

一般人が踏み入れると襲い掛かってくると聞いているのだが、今ここにいないとなるとただ入っただけで襲われるというのはデマに近い。

・・・それともシェリーがいるからだろうか?

まぁそんなのどーでもいい。


「・・シェリー、早くゲリュオンを呼んでくれ。ゲリュオンにワープゲートについて聞きたい。」


「どーやって呼ぶの?」


「俺が知るかよ・・・」


「『来て~!!』と言えばペット感覚で来るんじゃないですかね?」

「『守護獣』のイメージぶち壊すな」


「まぁとにかくシェリー、来て欲しいと願えば来るんじゃないか?」


「ん、分かった!やってみる!」



シェリーは一歩前に出て目を閉じると、小さくつぶやきながら『相棒』を呼び出す。




(ゲリュオン・・・来てッ・・・!!)



そして次の瞬間、聖堂全域を一瞬の突風が通過する。

そしてその風に乗ってきたかのような感じで、



5人の前に現れる ―――



「あッ!ホントに来た!ゲリュオン!」




――― シェリー・・・今、来タゾ ―――





聖堂全域の空気が締まるような、そんな感触が4人の身体を走り抜ける。




本編3度目、ゲリュオンの登場である。




次回投稿日;6月8日

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