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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第6章 『天』という世界で 《ヘブンズ・ウェイハザード》
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レベル60 虚無街道 《インサイド・バベルワールド》


さて、ここは蒼天の塔の中。居るのはたった3人。レイ、シェリー、芽衣の3人である。

しかし前回と同様、中に漂うのは虚無の空間。アリナがいたらまた怖がる程度。

シェリーはこういうのには興味が勝るので『怖がる』よりも『興味深々』という感じだ。少しはアリナもこういうトコ見習ってほしいものだ。


「もうすぐで3階だね。」


「よし、ここらへんでちょっと外見てみるか。」


レイは階段横の吹き抜けから外を見やる。

しかしその高さとは、まぁ普通の建物の3階ほどの高さである。前回のような大気圏越えという異常な高さではないようだ。


まだここまでは『普通の塔』のようだ。


「・・・じゃ、上がってみよっか。」



3人は三階に登ってみる。

拡がるのはやはり虚無の空間








――― ではなかった




「なんだこれッ・・・!!??」

「こんなの、昨日はなかったよね・・・!?」


フロアの中心には何かのチカラが働いたのか、巨大な空気のゆがみが深紫のオーラと共に禍々しく存在する。

ゆがみの中心部分には、どことなく何処かのフィールドが映し出されているようだ・・・

辺りを見渡す限り、上階への階段はあるしフロアにはゆがみ以外何もない。一点を除いて昨日と変わらない光景が広がる。


「入るのレイ・・・?」


見つけた昨日との『違い』。正直上に行ってからの方がいいのかもしれないが、レイはとある一点について気になっていた。

その箇所は、



「なんだろ・・・あの影・・・」



芽衣がつぶやいた先、それは前方のゆがみの中心部。

そう、映る何処かの世界の中央に黒く映る影が一つ、小さく動いてはすぐに止まる。


しかしその影も、どことなく何かに似ている気がするのだ。


「・・・準備良いか?あそこに入るぞ。」




そして3人は、ゆがみの中へ飛び込んだ ―――







~~~~~


どうやらあのゆがみは異世界へのワープ場だったようだ。

3人は覚悟の元でそのゆがみの中へと飛び込んだ、そして今3人がいる場所

それは、



とある

洞窟 ―――



「レイここどこ?」


「俺に言われても知らん。でもまぁ探る方法はあるんだけどな・・・」


レイはそう言ってとあるエピソードを思い出しながら、自分のステータスパネルを操作し出した。

以前浄化の鈴を探しに行ったとき、アリナが浄化の鈴か否かを調べる時にステータスパネルの項目を開いていたことを思い出した。あの時調べていたのはアイテムだったが、大まかな情報だったらこのパネルでも教えてくれるだろう。


「確かここを開くと・・・よし、こうだ。」


ページを開いて居場所を確認してみるが・・・


「・・・何も書いてないよ?」

「あれ?これじゃ分かんねーのか?」


「じゃあベルディアくん、今度はベルディアくんのスキルで調べてみてよ?」


「あ、あぁそうだな・・って言ったっけこのスキルのこと?」


「やだなぁベルディアくん、私と戦ってる時にさんざん使ってたじゃない。」


「え?でもあの時はまだ敵同士だったろ・・・よくわかるなぁ。」


「えへへ、まぁね。」



レイは、今度は自分のスキルを使って情報獲得を試みる。



『スキル2;「ルート」を発動します。』



「・・・どうやらここは洞窟のようだな。」

「それはもちろん分かってるよ?」


「いや、しかしそれ以上の事が分からない・・・ここ何処だ?」


「え?ホントに分からないの・・・?」


レイのスキル『ルート』は一通りの情報までなら読み込みができる程のスキルなのだが、それでもこの場所の詳細は見えてこなかったようだ。しかしこの洞窟の名前はともかく、洞窟の出口くらいは知りたかったのだが。

しかしこのような意味不明の場所、防御や対策なしに突っ走るのは無考慮というもの。さすがに警戒していかねば身が持たない。


「・・・さすがに身は隠して進みたいモンだこれ。」


「『透明化』なら出来るけど、それでいい?」


「え?透明化?」

「何それお姉ちゃん!?」

「ば、バッカ!声でけーぞシェリー・・・!!」


「あはは・・・でもそういう呪文わたし覚えてるんだ。持続時間はまぁまぁだし、使ってみる?」


「で、ではお願いします・・・」

「はいよ。」


芽衣はパーティーリーダーの指示をもらい、隠蔽魔法を詠唱する。

『隠蔽魔法』とはその名の通り『隠す、隠し通す』という意味を孕んだ魔法である。

しかしこの隠蔽魔法、覚えている方が稀だ・・・というレベルではない。覚えているヤツなんて一人もいないだろ?というのが現世界の常識かつ見解だ。なぜならこの隠蔽魔法は『古代魔法』とよばれる遥か昔の魔法の一つだからである。『別大陸にいたどっかの誰かさんがなぜか作ったけど結構それらの効果えぐくてめちゃめちゃ使えたけど伝承者とかいないから今この世界にないんじゃね?』と、この大陸の住民は思っているだろう。


しかし、それはここで覆されるのだ。



「行くよ。 『プラニイェト』 」



ほんの一瞬光が指に灯ったと思えば、それ以外に起こった変化は特にない。しかし初めての古代魔法でもそう思うのは仕方のないことだ。

なぜなら3人はそれぞれの姿を認識できているからである。つまり『見えている』ということだ。


「・・・あの、これホントに出来ているのか?」


「うん、周りの魔物たちには見えてないと思うけど。」


「でもお姉ちゃん、私レイもお姉ちゃんも見えてるよ?」


「あぁなるほど。それはねシェリーちゃん、この魔法は味方には使えないんだよ。まぁ良い言い方をすると『仲間に対しては、仲間の位置とかが見えるようにするために透明化はなされない。』だね。」


この古代魔法『プラニイェト』、視覚認識が出来なくなるのは敵だけである。さすがに味方の位置まで見えていないと連携もクソもない、と古代にいたどっかの人は考えたのだろう。


「・・・なるほど。でも芽衣さん、さっき『良い言い方をすると』って言ってたけど、悪い言い方とかあるのか?」


「・・うん、残念ながらあるんだ。」


「え、あるの?てきから見えなくなるんだしじゃんじゃん進めるじゃん!」


「・・・『シル・ガイア』か?」


「うん。私にとって『シル・ガイア』はいわば半身みたいなものなの。だからこの魔法を使っても彼女を『敵』として認識してないから、結局あっちにはそのまま見えちゃうんだ。下手すると側近の幹部とかにも見えちゃうかもしれないんだ。」


「・・・その側近がここに居たらってことか、なるほどね。まぁそこは用心して先に進もう。」


「でもレイ、でるトコ分かるの?」


レイのあのスキルでも出口が分からなかった以上、ここからは自力で進んでいかねばならない。透明化という補正がかかっている今なら精神的にも安心感が生まれてくるものだが、しかしそれでも不安と疑問の量は多い。

なんせこの場所から、道が5つに枝分かれしているのだ。

すると、


「私にいい考えがあるよ、ちょっと前良いかな?」


と言って出てきたのは芽衣、何やら前方で考えこんでいるようだ。


「・・・芽衣さん?」

「お姉ちゃんどうしたの?」


2人が様子を伺うが、とある何かに集中している芽衣には聞こえていないようだ。

そして少しの間が経過する。



「・・・右から2本目の道かな?多分ここ行けば出られると思うよ。」


「え?今ので分かったの?」


「うん、まぁ全部説明すると電波みたいな話だし分かりにくいと思うけど、まぁ端的に言うと『スキル発動』かな?」


「でもお姉ちゃんレイみたいなスキル持ってなかったよね?」


「そうだね、確かに『私』は持ってないね。」



目の前のみんなには説明しよう。

『松嶋芽衣』なる者が持つ『チート能力given by神さまっぽい人』は4つあるのだが、うち二つはこっちの芽衣、もう2つはシル・ガイアが持っている。

レイが一番最初に『松嶋芽衣』なる者に会ったのはランク0の時だが、その時の芽衣が使っていたとある呪文をお覚えだろうか?

それは


――― 『事物探知呪文“アーケノン”』 ―――



推定半径500m以内の範囲内の詳細や過去1日に起こった出来事など、多くのことがこの呪文で分かるという最上位呪文の一つである。

この魔法を使えるのは『シル・ガイア』の方だが、この芽衣とシル・ガイアは元々同じ身の存在。

芽衣は『この呪文を使える能力を一時的に自分に移し替え、それを発動して終わったら返す』という作業をしていたのだ。

他方能力の永遠保有はなぜかできないため、このように『一時的に借りる』形になってしまうところには深入りしないことにしよう。説明がさらに電波みを帯びることになる。




3人は意味不明なこのダンジョン?(実際は洞窟)を探索していく。

長いくだりで忘れてしまいそうだが、元はあの蒼天の塔からワープしてきている。これはまだ『塔の探索』だ。


「シェリーそっちなんかあるか?」


「ううんないよ。」


と、結構変なものを見つけるのが得意なシェリーでも収穫無しだ、場所は違えど性質はあの塔と同じである。

よってここを『虚無の洞窟』、そう名付けることにしよう。


「もうすぐで何かしらあると思うからもうちょっと頑張って。」



そして歩くこと約400m地点、ようやくその“何か”を見つけた。


「・・お、あったあった。これが反応に引っかかってたものか・・・」


芽衣は足元のそれを拾い上げると、結構暗いなかなのでよく吟味してその物体を観察する。


「?芽衣さんそれなに?」


「ん、これがまず一つ目の手掛かりね。見てみる?」


芽衣が手渡してきたものは、手の感触から察するに何かの石ころ。妙に所々にかなりの凹凸が確認できる。


「ベルディアくん、ちょっとよく見てみてよ。わたし暗いところだと視力悪くなるんだよね・・・」

「ん・・・?」


竜人族の視力は結構高い。明暗にもばっちりと対応できる性質を持つことから、このような場所で最も動けるのは竜人族ということになる。

レイは凝視してその物体を観察する・・・



・・・?


「!!」

「どうしたのレイ?」


何かに気づいた様子のレイは、すぐに自分の横ポケットにしまっていたあるモノを取り出して見比べてみる。



まぎれもない、


『あの石』であった。



「おいおい何でこんなトコにもあんだよ・・・!?」


レイはスキルを発動する。


『スキル2;「ルート」を発動します。』



(何でこのゼゴの石ころがここに・・・!?)


しかし見えたモノとは、レイが予想していたシーンではなく



予想を大きく外れた、こんな一文であった。









『この先に、あなたの探すモノがあります。』





次回投稿日;6月5日

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