レベル57 再編成 《ニューパーティ》
さて、今までは敵サイドか謎キャラの立場だった新メンバー・松嶋芽衣も加入し、このパーティーも色トリドリになってきた。
しかしその入った新メンバーだが、パーティー内最強疑惑を一気に独占するほどの逸材である。
特に知力、まさかの428ッ!!アイデンティティーである『知力の高さ』を失ったアリナはこの話題になるとあからさまにへこむのだそうだ。
しかもレイはそれを見てまたさらにアリナをイジる。もう勘弁してあげてって・・・
5人はあれからイーストデルトに南下。装備だけは不十分だった芽衣に新調装備を与えたところで、次の行く先はあのバンダルスサイトと決まっている。
「アリナ、お前の移動呪文でバンダルスサイトまで飛ばしてくれ。」
「任されました。」
バンダルスサイトは実際行ってみるとやはりあの時のままの村の姿だった。もちろんオベロンステッキを譲ってくれた道具屋さんにも行くぜ?
しかし本来の目的はこんな小さいことではない。
覚えているだろうか、この村は隣国との関所があるのだ。千年帝国クルスオードの西端に位置する集落であるバンダルスサイトには、村の西方にまぁ普通くらいの関所があり、ここで軽い申請をして初めて隣国に足を踏み入れることが出来るのだ。
今までのレイたちは各国にある国境を一度は『送迎馬車』で越えているために関所は通らなかった。ちなみにベルトディア村やレントヴィン、ミルビィテリィは全てイーストデルト王国領土内にある集落だ。
「あの、この5人で通りたいんだけど・・・?」
『はい、ではどうぞお通り下さい。』
「え、何か検査とかしないのか?受付さんの横に結構な量の書類とかあるけど・・・?」
『はい、基本的には行き来はフリーですよ。ただしこのルートを通る時のみしか適応しませんけどね。』
このように関所を通る時はかなり簡単に済ませられる。
レイたちは村で一通り準備を済ませ、少しの休息の後にこの関所をくぐることになる。
くぐった先はクルスオード帝国西隣の国『エクスタシア王国』。
数々のミステリアスな建造物が多いことで有名なこの国は、通称“迷宮の都”と呼ばれる。
しかし迷宮感あふれた場所は意外にもごく一部、それ以外の場所では基本ゆるやかな雰囲気が流れている。王国城があるエクスタシア城下町は王国西方に位置するのでここからだとかなりの距離だが、全域の気候が過ごしやすいものなのであながち徒歩旅行も悪くない。大きな街道もあるほどだ。
とはいってもまずは王国初の集落に出向きたいパーティーリーダー。
「みお姉、ここから一番近い村はどこら辺にある?」
「レイくんのすぐ後ろだよ。」
「いやバンダルスサイト村じゃなくて。エクスタシア王国内で一番近い村だよ。」
「分かってたよ。えっとね・・・ここかな?」
拡げた地図でミオンが指を置く場所には、『シェリアス』という比較的大きめな集落があった。
「ここはシェリアス大聖街ですね。寺院の町で多くの神官さんたちがお参りをする場所でもあります。またここの水は不思議なチカラが宿ってるとかで、回復道具の『シェリアスウォーター』の水は全部この街原産の水を使ってるそうですよ。」
街までは地図上で約40キロと言ったところだろうか。
少し遠いが頑張る5人。
シェリアスまでつながるこの街道の名は『ベーリング街道』。この街道では比較的中堅レベルの魔物が出没すると言われているが、とある特徴のゆえに多くの冒険者に敬遠されがちになっている道でもある。その理由とは・・
「えッ!?多くね!?」
「軽く100体はいるよね・・・!?」
そう、敵の多さである。
この辺り一帯に生息するモンスター、特にこの『ヴィザ―ドマン』という人獣系の魔物が最も厄介で仲間を呼ぶ習性がある。
よって長期戦になると一気に不利になるのだ。早めに片付けないといけないのだが・・・
「100体はさすがにきついぞ・・・!?」
アリナの全体攻撃魔法だって範囲に限度がある。さらにこのヴィザードマン、呪文にある程度の態勢があると来ている。いよいよ『不利』に近づいていく。単体の強さはマールクレイティア平野付近で4人が狩り続けた『アヴァロンガゼル』とほぼ同じだ。
「ふふ、やっぱり最初に新米メンバーのチカラを見せる時ってどんな時でもあるもんだよね。」
と言って一歩前に踏み出したのはパーティー最強疑惑を絶賛独占中の芽衣。
「だ、大丈夫なのか・・・!?軽く三ケタ数いるけど・・・!!」
「まぁ見ててよ、時間はかけないから。」
そう言って前方へ歩き出す芽衣の右手は早速も雷のスペルを纏っている。
「・・・あれは上位雷魔法の『ギガレイン』ですね。魔力で分かります。」
と、横にひょっこり出てきて急に解説を始めたアリナ。
「確かこの属性のやつ、お前も覚えてなかったか?」
「はい、私も覚えてますよ。私も知力100オーバーの賢者という職なので、当然です。しかしランクはこれより下の『ギガドロップ』という中位魔法です。」
ッ ―――
芽衣の右手に宿る雷光は、段々と帯電して肥大化する ―――
「しかし対する芽衣さんの知力は400オーバー・・・知ってますか?呪文攻撃の威力って知力の高さに比例するんです。」
芽衣は召喚したスペルを、天高くへ撃ち出した ―――
「おい、あれって・・・・!?」
「私が召喚できる雷撃は中範囲の落雷程度、しかし芽衣さんの場合だと・・・」
ッ ――――
「威力は、大嵐のそれと同等です。」
そして芽衣は、呪文を唱えた。
「 『ギガレイン』! 」
全域が、一瞬にして灼熱に包まれる。
激しく鳴り響く無数の雷は、まるで神の逆鱗に触れたかのように大荒れ。
落雷が鳴り止むことの無いエンドレスハザード、まるで天変地異の大災害を見ているかのようだ。
「すげぇ・・・」
『ヴィザードマンの群れ(127体)を討伐 それぞれ経験値120650、10160ゴールドを獲得。
スキル発動;レイ=ベルディア、シェリー=クラシアは経験値482600を獲得。』
レイの横には討伐完了を報告するステータスパネルの画面が、目の前に起こった出来事に驚くレイに反して、ただ無情に示されていた。
~~~~
「ふぅ~!!今日も疲れたね~!」
「しかしやはりあの威力は凄いですよ芽衣さん!」
「まぁその変わり攻撃力とかは点でダメだったから今鍛えてるんだけどね。」
「お姉ちゃんすごーい!」
「ふふッ、ありがとシェリーちゃん♪」ナデナデ
「えへへ~///」
芽衣がその先も片付けていたお陰で道中そこまで苦労することもなく、一日はかかるだろうと予想していたがなんとその日の晩に到着できてしまった。
今はシェリアスの町の宿に荷物を置いて、名物の『シェリアス温泉』満喫中である。
この温泉の効能はかなりいいと評判で、女子メンバーはこの湯舟を満喫中である。
ただ一人を除いて、は ―――
「(げッ・・皆さんかなり大きいですね・・・むむむ!!)」
アリナ=メルド 14歳 ――― Aカップ ―――
早速自前の眼力『アリナスカウター』発動。
ピピピ・・・(←実際はただガン見するだけなのでこんな音は出てません。)
「(・・・さすがお姉さまですね、『戦闘力』が5000なんて・・・)」
ピピピ・・・
「(芽衣さんもお姉さま程ではありませんが『戦闘力』3200・・・あなどれないですぅ・・)」」
「(ッ・・・でもシェリーにならッ・・・!!!)」
「(勝てるッ!!!)」
ピピピ・・・
「(なッ、なんですって・・・!!??)」
「(『戦闘力』250ぅ・・・!!??)」(←アリナの『戦闘力』は100程度)
「(そんなッ、ありえません!!だってシェリーは11歳ですよッ!?成長期に入ったばっかの幼げ少女に私が負けるというのですか・・・!!!)」←人の事言えない
「(ふ、不公平ですぅ・・・!!)」ガクッ
「・・・」グスッ
「・・・え?アリナちゃんッ!?どうしたの!?何かあったの!?」(←戦闘力5000の物理攻撃(実際はただ当たっただけ))
「!?」
「アリナちゃん何か目が赤いよ・・・!?」(←戦闘力3200の視界攻め)
「うぅ・・!!」
「お風呂たのしー!!あはは!・・・あれ、アリナさんどしたの?」(←戦闘力250による精神攻撃)
「ッ・・!!」
さらにさらにあろうことにも、シェリーの視線はアリナの胸元に寄せられている気が・・・
そしてシェリー、その天然さゆえに
アリナのタブーに易々と触れる・・・というかそのタブーをほじくり返すような勢いだ。
「あー!!わたしのほーがむねおっきい!!やったー!!かった~!!」イェイ!
と、隣の男湯どころか下手したらお風呂の外にも聞こえてるかもしれないほど大きな声で言ったものだから、この通りアリナは・・
「・・・」
めちゃめちゃヘコんでいる。
「だ、大丈夫だよアリナちゃん!!きっとまだ大きくなるよッ!!」(戦闘力5000)
「」グサッ
「まぁ気にすることないよ・・大きくてもいいことあんま無いし・・」(戦闘力3200)
「(巨乳はみんなそー言いますよッ!!)」グサグサッ
「やったー!!かったーかったーかったー!!!あはは!!!」(戦闘力250)
「」グサグサ×30
「もう・・・あがります・・・」
「そ、そう?湯冷めしないようにしてね・・・」
ガラガラ・・・ピシャッ
「はぁ・・・シェリーちゃんはやっぱり天然で毒吐くから怖いよねぇ・・・」
「?」(←自分が一番の原因だと気づいてない)
一方その頃、レイの方では ―――
「・・・」
宿の部屋の布団の上、特に映える模様でもない天井をじーっと見ながら何か考えている。
レイはバンダルスサイトで遠征の準備をしている時、4人とは別で村の教会に立ち寄っていた。いざ行くと教会は普通に建っており、荒野だった時の面影は一切残っていなかった。しかしとあるものだけは、教会の横角に静かに落ちていたのだ。
「これ、どうすっかな・・・・・」
持つ手を上に上げ、何となくそれを窓から指す月光に照らしてみる。どこを照らしても変わらない、あの時にも拾った同じものだ。さらにはあの時に拾ったはずのそれは、今は綺麗に無くなっている。決して落としたとかそんなマヌケな理由ではない。
一体、これは何なのであろうか。
――― ゼゴの顔が描かれたその石ころは、拾ったあの時のまま
次回投稿日;6月2日