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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第5章 ねぇ、私のものになって 《サイコパス・フィースト》
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レベル51 再来 《ペーディオ》


『だって私が作ったキャラクターだもん。』





この言葉、まず言われてうんそうだねと二言返事で返せる者は一人もいない。

おそらくこの世界の全員の思考が一時停止して、今の4人のようにただ立ち尽くす状態になるだろう。


「へ、今なんて・・・?」


『だから、私が作ったキャラクターだよ?知ってて当然でしょ?』


私が作ったキャラクター・・・つまり創造のシル・ガイアが作ったキャラクターが『シル・ガイア』そのものと言っていることになる。意味が分からない。

さらにここは自分の夢の中だという変な事も言っている。


「作るって一体どうしたら・・・!!??」


とある一つの存在を作り出すことは、まぁ出産という方法を除いて一つもないはずだ。さらに自分自身で自分を作るという意味不明の解釈まで言い放たれた。

レイ、ミオン、アリナ、シェリーの脳内は、フリーズから脱することが出来ない。


『ただ想像するだけかな?この世界は私の頭の中だし。』


「は?想像・・!?」


漢字は間違っていない、確かに『創造』ではなく『想像』と言った。頭の中で浮かべるという意味の想像である。

本来そんなことをするだけで世界まで作れる ―――

そんな夢物語は存在しない。


「「「「・・・!?」」」」

『あ、信じていないみたいだね。じゃあ見せてあげる。』



芽衣は両目を閉じ、頭の中で何かを連想する ―――




『荒れる獣・・・荒れる獣・・・荒れる獣・・・荒れる獣・・・!!!』



芽衣は呪文のようにぶつぶつと連呼を続ける。

あまりにも小さい声で、レイたち4人には全く聞こえない。


そして、





(・・・・・!!!!!!!)




4人が立つ地面が、急激に大きく揺れ始める ―――


「なんだこれッ」

「何か来るのッ!?」

「「~~~!!!」」





4人が驚く、次の瞬間



『・・・見て、これがそういうことだよ?』

「ッ・・・!!??」





4人の前には、正気が荒れる一匹の獣の姿。


『これ全部私が「作った」んだよ?』


「おいこれッ・・・!!??」

「うんッ・・多分そうだよ・・・!!??」





激しく荒れる漆黒の獣


名を、“黒獣”ペーディオ ―――




―――― ~~~~~!!!!!!!!!! ――――


「「「「ッ・・・!!」」」」

『・・・フフッ』




誕生と同時に上げた獣の雄叫び、4人の身を揺らすことなど容易い。

威力はかなり劣るものの、蒼獣ゲリュオンと似たような性質の能力であるこの『ゾーンプレス』能力を4人はもろに受け



『ミオン=プルム、アリナ=メルド、シェリー=クラシアは瞬発力が半減、攻撃力が半減した。』



レイ以外の3人の能力を一時的に下げていく。



「(まずいぞこれッ・・・!!)」



この世界の仕組みを思い出してほしい。

クロムやレイのドッペルゲンガーは、本人が持つチカラの何倍ものそれを有していた。チート並みの補正機能である。

駆け出し時期で龍人体に変身(フォルムチェンジ)、かつ特殊スキルが発動してやっと倒せたかつてのペーディオ。今のステータスでやったらおそらく難なく倒せそうな相手であるはずだ。

しかしこの世界に効く補正、『あの時はこんなだった』は通用しない。


現に、





!!!!!!!!





あの時のペーディオは、一踏みで地震など起こせなかったはずだ。



「くぅ・・・!?」

「みんなこらえてッ!!次来るよッ!」

「「!!」」



態勢を立て直す4人を瞳に映し、ただ眺めるだけの松嶋芽衣。


『・・・あ、そろそろ時間だ。また会おうね。』

「え、ちょとまてッ・・!! ―――




そして次の瞬間、松嶋芽衣は姿を消した。


最凶の獣をこの場に残して。



「クソッ・・!!アリナは呪文準備!シェリーも射撃準備!みお姉はサポートやってくれ!!」

「「「了解!」」」


一部能力が半減しているとはいえ、切り替え能力までは半減していなかったようだ。

レイ含め4人全員は、眼光を放つ一匹の獣を前に武器を構える。



「(スキル発動!)」


『スキル2;「ルート」を発動します。』


レイの視野が一気に拡がる。


「レイさんどうですかッ!?」

「・・・あぁ、シェリーは空中戦!アリナは爆発魔法!みお姉はシェリーと俺に補強呪文!」


戦闘時に指示をするのは基本的にレイであるが、「ルート」があるとこの指示がさらに的確なモノになる。

しかしこうも悠長に解説など言ってはいられない。



目の前から、ペーディオが一瞬で消えた ――― 



「・・・!!シェリー真上だ!!真上に射撃してけッ!!」

「分かったッ!!」



シェリーは背中を真下に向け、天空へ弓を引いていく。

シェリーは様々な態勢で様々な技を繰り出すことが出来る。

こんなに射撃しにくい態勢でたった今生まれたシェリーの新技 ―――




「やッ!!『爆矢射(ノヴァブラスト)』ッッ!!」



核のスペルを撃ち込んだ爆発属性の乱射撃。偶然にも弱点の属性である。

誰もいない上空だったその次、高速移動したペーディオがシェリーの頭上に。

目にも止まらぬスピードのペーディオ、さすがにこの攻撃はかわせないはず。



そしてシェリーの矢がクリーンヒット



!!!!!


「よしッ、次は ―――



したかと思えば、



ッ ―――



瞬間移動、またもや姿を消す。

しかしまだレイのスキル『ルート』は発動中である、移動先の予測など容易だ。


「・・!!アリナ振りかえってそのままぶち込め!!」


周りで光り出す核を粒子たちを解き放つ。

アリナは呪文を唱えた。



「 『スーパーノヴァ』ぁ!!! 」


ペーディオがそこに現れた瞬間、散りゆく粒子たちが一瞬で大核爆発を起こす上位爆発魔法・『スーパーノヴァ』。


「今度は当たるだろ!!」


呪文スペル召喚はコンマ何秒かの世界。シェリーの特技のスピードより桁違いに早く相手に達する。

こんな高速攻撃、おそらくペーディオも逃れられない。



『ッ・・!!』



予想通り的中。どうやら瞬間的に急所を避けたのだろう、狙いからズレた左腕が燃えている。

アリナは呪文発動中にも狙いを変えることが出来るが、それよりも一歩スピードが上回っていたようだ。


しかし左腕のやけど程度にしかダメージが与えられていない。この世界の不思議な補正効果である。



『ッ・・!!!』


まだ荒れる黒獣ペーディオ、今度はこちらへ猛突進。反撃だ。


「うおッ」



!!!!!!!!



やはり持つチカラも桁違い、受けてみて分かることだ。

以前のペーディオは、一殴りで大突風など起こせなかったはずだ。


「どこまで補正かかってんだよッ・・・!!」

「レイくんまだ来るよッ!!」



!!!!



今度は背後から粉砕の回し蹴り。瞬間的に剣でガードする。

しかし補正効果によるパワーでその圧力が尋常でない。


直撃は防げたものの、勢いのまま100m程吹き飛ばされる。



「ハァハァ・・・ッ、やっぱつえーわ。」


まだ『ルート』は発動している。



(弱点属性は爆発系、次は俺に正面からもう一殴り・・で弱点は・・・)


「レイさん危ないですよッ!!!」

「ッ」



右手に魔力を召喚、



「 『烈火弾(ソルブレット)』ッ 」




一閃の爆光、レイに拳が達するより早くペーディオの脳天を貫通する。



『~~~!!!!』



頭部が爆ぜるペーディオ、しかし拳はそのままレイの身へ。



ッ!!!!!!

「ブフッ」



威力はすさまじいもの。何とかスキルで直撃前に剣を構えて顔面直撃は防いだがやはりそれでも重い拳だ。

レイはそのまま再び吹き飛ばされる。



しかしペーディオの頭部は大燃焼中。動きを封じた。



「 『光雷雨(ホーリーシャワー)!!』 」

「 『ダラディトス』ッ 」



二人は動けないペーディオにとどめの爆発攻撃。

シェリーの放った無数の矢は次々とペーディオの身体を貫通し、アリナの爆発魔法はペーディオの身と共に大きく爆ぜる。






そして、ペーディオは消えた。









世界は、朝を迎える。


疲弊しきった4人は戻ったイーストデルトの宿で一泊。しかし中々寝付けない者が一人・・・

なぜ自分にこんなスキルが発動したのだろうか。

そう、ミオンである。


「・・・」


ミオンは特に何かのトリガーを掴んだわけでもないはずだ。なのにこんな異能の能力がなぜ自分に。

発動したスキル『ルーピング』、このスキルを言い換えればまさに『時間を戻す』である。


「・・・もしかしたらあの時まで戻るかな・・・・・」


ミオンはふと考える。

思い浮かべたのは、かつてミオンが小さい頃のベルトディア村の風景。

あの時はもちろんレイがいて、またソリューも一緒にいた。

あの時は二人とも仲が良かったはずなんだけどなぁ。今はケンカが大半だけどね。


あぁ、戻りたいなぁ。

なんぜソリューくんがあんな魔物になったんだろう・・・

見て確かめたい、そして可能ならば防ぎたい。



「・・・ッ」






『スキル2;「ルーピング」を発動します。』






そして時が、戻る ―――






次回投稿日;5月23日

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