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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第5章 ねぇ、私のものになって 《サイコパス・フィースト》
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レベル50 夢物語 《ファンタジスタ》


『異文化の町』ミルビィテリィ ―――

あまり多くない人口とは裏腹に数多くの伝説や言い伝えが幾千となく交錯するこの町の2つ名は、通称『情報の町』と呼ばれている。

その名前の通り、実際来てみると情報屋の数が多い。おそらくイーストデルトの次くらいに多いだろう。しかしここで話されるモノとはイーストデルトのようなダンジョンの宝の在り処や有数の経験値稼ぎポイント情報などではなく、結構ダークな内容かつミステリアスなものが大半である。

とにかく、このような話が街中に蔓延するような場所だ。

治安の悪さなど、物理法則より簡単に分かる。


「おいおいおい・・・あちらこちらで人が倒れてるぞ・・・?」

「これは確かにガラ悪いですね・・・私結構苦手ですぅ・・・」


さらに言えば、この町に漂う空気も少し汚い、大気汚染もひどい街なのだ。

この町でロクな生活が遅れているのは、情報屋とごく一部の家庭のみである。


「でもアリナちゃん、どこで情報とか手に入るの?」


「そこまではちょっとわかりません。私自身行ったことがあるわけではないので・・・」


「確かに10才以下のヤツが行くような町ではなさそうだしな。」

「この町を知ったのは12歳の時ですが?」

「確かに“精神年齢”10才以下のヤツが行くような町ではなさそうだしな。」

「言い直す場所かなり間違えてますけど」



町の中心通りを歩いていると、やはり左右で情報屋の姿をよく見かける。まさにこれこそが『治安が悪く見える』一番の要素となっているのは言うまでもない。この世界の情報屋とは、大半がスラムなどの貧困層の生まれである。

しかし今回に限っては、おそらくここの情報が最も鍵になりやすい。


レイは適当に近くの情報屋に掛け合ってみる。


「なぁ情報屋、ちょいと聞きたい事あるんだけど。」


「あ?なんだ。」


「この町の中で歴史とか怪奇現象に詳しいヤツとか知ってるか?そいつの居場所が知りたい。」


「へぇ~・・・それは結構高いねぇ~・・・」


同時に金を媚びる時によくやりそうなポーズ。


「・・・いくらだ?」

「1000ゴールドだぜぇ?」

「チッ、払ってやる。」

「おうおう、中々太ぇヤツだなあんちゃん。そういうヤツはキライじゃないぜ。」


じゃあ好きなのかと言い返したくなるようなテンプレート台詞の後、情報屋は条件に一番近しい人物とその居場所を紹介した。

しかしその居場所とは、レイたちにとって意外な場所であった。

その場所は、



「ホントにここかおい・・・」




意外も意外、まさかの『神代のほこら』 ―――




~~~~


覚えているだろうか。

レイとミオンは初めてのボス戦で黒獣ペーディオと殺り合った場所がこの神代のほこらである。現在は復旧工事が終わり、元のほこらに戻っている。


こんな場所に、本当にいるのだろうか。情報屋の情報は何とも疑わしい。

しかしまずは試し、今4人は神代のほこらの前に立っている状態だ。



「・・・来ないな。」

「来ないね。」


「これホントにいるのか・・・?」


「確かあの情報屋の話だと、『夜頃にこの付近で不思議な現象が起こるとどこかで聞いた。』でしたね。レイさんよくこんなパチモン率満載な情報を鵜呑みにしましたね。」

「お前鵜呑みの意味知ってんのか知らないだろ覚えたての言葉使って賢ぶるなこのガキ」

「最近この早口罵倒多くなりましたねッ!!!」



夜になると不思議な現象が起こる ――

何とも信じがたい現象だ。しかしレイたちはこれ以上に不思議な現象を目の当たりにしている。

このような現象が起こるわけないと思う思考は完全に消えている。


すると、




ヒュウウ・・・・ ―――




急に吹く風が荒っぽくなり


何だか夜風がさわぎ出す ―――



「来るんじゃないか・・・?」

「2人とも一応身構えといてね。」

「うん(はい)。」



ほこらの内部に風が届くと、内部が急に光を放つ。

白い光でも黄色い光でもなく、紫色の光。


「・・・入ってみるか。」




不思議な現象と聞いていた。

本当にそんな現象だと聞いていた。


しかし目の当たりにしたのは不思議な現象ではなく、




世にも最悪な光景であった。




「マジかよッ・・・!!」

「何でここにいるの・・・!!??」



クルスオード戦以来




『あなたたちは・・・・』





――― “焔王妃”シル・ガイアの姿であった





4人は一斉に武器を構え、目の前のシル・ガイアを迎え撃つ態勢。

あの時の強さをまだ4人は忘れていない、手は若干震えている。



「ッ・・・!!!襲って、こないのか・・・・!!??」



対するシル・ガイア、武器を構える4人を不思議そうな目をして見つめるだけ。

なぜ武器を構えているの?

表情からそんな感じの言葉が読み取れそうだ。



(なんだコイツは・・・!?)



武器を構えるレイ、段々と目の前の強敵に疑問を募らせる。

しかし段々と分かってくる、目の前のシル・ガイアはあの時のシル・ガイアと雰囲気が違う ―――


レイはふと思い出す。

それは別れ際、フィルが言ったとある台詞である。



――― シル・ガイアは二人いる ―――



本当にフィルの言った通りであるならば、目の前のこのシル・ガイアに直接的な害はない。フィル曰く破壊と創造、2つのシル・ガイアが存在するらしい。

そして最後に聞いた、とあるメッセージ




「・・・マツシマメイ」

『ッ!!??』



シル・ガイアの表情が疑問から驚きに変わる。


『なぜそれを知っているの・・・!!??』


フィル曰く、この言葉はレイにしか発動されない特殊な条件下に置かれた呪文の類らしい。

しかし目の前の光景を見ると、これは効果があるのではないだろうか。


その瞬間、シル・ガイアの身体は光の粒に包まれる。その光の粒子たちは心なしか、その闇の衣をはがしているようにも見える。



みるみるシル・ガイアの姿が“人間”へ変わっていく ――――







「・・・」


今の4人の目の前にはあの強敵のシル・ガイア焔王妃ではなく、この大陸にはいない人種『人間』のただの女性が一人。


「・・なんで私の名前を知っているの・・・!?」


そして言葉を漏らす。

しかしレイは一度マツシマメイ・・・いや、松嶋芽衣なる存在と会っているはずだ。しかし相手はどうやらレイを認識できていない。まるで初見の相手が自分の名前を知っていることに驚いているような表情だ。


「・・・風の噂で聞いた名前を言ってみただけだ。たまたま当たっただけだから。」


「そ、そうなの・・・」


「レイさん?この人はどちら様ですか?」

「ちょレイくんッ!!誰この人!!?浮気!?」

「わぁ~人間さんだぁ~!!」キラキラ


レイはともかく、3人がこうして『松嶋芽衣』を聞きたがるのは仕方がない。特にミオンであるが。


「あ、あぁ・・・この人はな・・・」


ここで言葉がストップする。

確かにあの森で会った松嶋芽衣はこのような容姿をしていた。雰囲気もどこぞと似ている。

しかしこんな意味不明な世界で会ったという事実が混入しているので、おそらくあの時の松嶋芽衣と今ここにいるのとはおそらく別物・・・

と考えられる。よって・・・


「・・・前に見たことのある人とそっくりだっただけだよ。」


この答えに行きつくのだ。



しかしこんな夜分に神代のほこら、そしてあんな不思議な登場の仕方で舞い立ったこの『松嶋芽衣』。

さすがに意味が分からない。

なぜこの人なのか。そしてなぜここなのか。



「・・・あんたは何でここにいるんだ?」


「それは・・・私自身も分からないの。最近毎晩こんな『夢』を見るんだ。今日は少し違ってあなたたちも見えたけどね。」


「は?ゆ、夢?」


「えぇ、違うの?」


「ゆめ・・・まさか幻想世界のことか・・・!?」


「げんそうせかい・・・?」


「・・・それも違うのか?」


「え?だってこの世界って ―――




「 私の『夢』の中、でしょ? 」




レイが思う『夢』、松嶋芽衣が考える『夢』・・・それは全くの別物である。

レイが思うのは幻に包まれた幻影の世界、しかし松嶋芽衣が思うのは寝ている時によく見るあの『夢』である。

本人はこの世界を、『自分の夢の中』と言っているのだ。


「夢って・・・ここは寝てる時に見るそんな世界のことなのか・・・!!??」


「レイくん、さっきから何の話してるの?」


ミオンも話に参戦。


「あぁ、どうやらこの世界は目の前のこの人の夢の中らしい。」


「え?そうなの?」


「俺も分からん。だって今初めて聞いたしな。」


変な事ばかりが起こる奇妙な世界が、まさか夢の中の世界であるとは。

しかしここまで出来過ぎた夢、そうそう見るヤツなどいないだろう。

目の前の松嶋芽衣、フィル曰くおそらくこれが『創造のシル・ガイア』に相当する存在であるのだろう。

しかしそのことを、この松嶋芽衣は自覚しているのだろうか。


「なぁ、少し聞きたいことがあるんだけど・・・」


「ん、どうしたの?」


レイは浮かんだ疑問をぶつけてみる。


「『シル・ガイア』って名前、知ってるか?」


もしこの松嶋芽衣がシル・ガイアの存在を知っていたならば、レイたちが関わってきたこの意味不明な現象に深く関係している可能性が高い。何でも創造が出来るという創造のシル・ガイア、この世界を作り出したのはおそらくそれである。

しかし返ってきたのは、思いもよらぬものであった。


「当たり前だよ。」


「・・・」







「だって私が考えたキャラクターだもん。」





次回投稿日;5月22日

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