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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第5章 ねぇ、私のものになって 《サイコパス・フィースト》
53/110

レベル48 分離 《ドッペルゲンガー》


「ここも荒地かよ・・・!?」

「なんでよ・・・!!???」



今4人がいる場所、それは紛れもなく二人の故郷・ベルトディア村である。

しかし4人の目の前に映る光景は、ここに村があったのかと疑問を抱いてもおかしくないほどの荒れ度を持つただの荒地。

要するにただの荒地だ。


バンダルスサイト村だけでなく、なんとベルトディア村まで綺麗に消えてしまった。

さすがにここまでの異変、察知出来ない方が珍しい。


「まぁ早速ソリューの家があった場所に行ってみるか・・・」

「そ、そうだね・・・」



今のベルトディア村は昨日のバンダルスサイト村と同様、痕跡として残っているものは何もない。

つまり手掛かりは、昨日の石のような地味なモノとなる。

さらにそういったものがある場所は昨日の事例から察するに、おそらく町の中心部分にあるという予測もついている。よってここはまず最初に教会や図書館などの施設に行くのが先決なのだろう。

しかしそれよりも今はソリューの家が無性に気になってしょうがない。



「ここ・・・だよな?アイツの家って・・・」


本来なら普通の一軒家があるはずの目の前には、やはり何もないただの荒地が広がっている。


「ここら辺に何か落ちてないかちょっと探してくれ。」


レイの指示通り、3人はアイテム探しを手伝っていると


「・・・何これ?」


見つけたのはやはりシェリー。


「どれ?また変な石か?」


・・・どうかそうであってほしい。

そうであったならこの先の探索に何かをつなげられる。

しかし、



「・・・石板、か?」



全く読めない古代文字のような記号文にコケが生えている古びた石板だ。おそらく結構昔のものだろう。

しかしこの文字、レイは解読できない。


「おいアリナ、これなんて書いてあるか分かるか?」


「さすがにこんな変な文字までは読めません。シェリーはどうですか?」

「分かるわけないじゃん」真顔

「ッ・・・!!」


「(マジレスされてやんの~)」ププー!


「なッなに笑ってるんですか!!///」


「でもレイくん、ひょっとしたらレイくんのスキルで分かるかもよ?」


「まぁ最初からそうしようと思ってた。」

「じゃあなんで私にふったのですか!?」

「面白そうだったから。」

「ムキィーーー!!!」


「(ムキーって声に出して言うモノだったんだ・・・)」




『スキル2;「ルート」を発動します。』



(どれどれ・・・お、ホントに読めるわこれ・・・)



その石板に書いてある内容とは・・・



(・・・ッ!?)






『サッサト死ネヤ』






その瞬間、


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「「「「ッ!?」」」」


入口の方で何かが爆ぜた。


「何事なのッ!?」

「なんですかなんですか!!!」

「後ろに何かいるよッ!!」


レイがシェリーの言葉でうしろを振りかえる。

爆発により舞い上がった砂塵で少しの間前方は見えなかったが、うっすらとその影が見えてくる。

そしてその正体に、うち2人は驚愕する。



「おいおいあれってッ・・・!!??」


「うんッ、そうだよッ・・・・!!!」






「私のおじいちゃんだよッ・・・!!!!」





右手に狂気の斧、左手にいくつも狩った亜人の首を持ち

目からは狂気に満ちた赤い眼光を放ちながら、ゆっくりとこちらに迫ってくる。


そう、爆発の張本人とは・・・



ミオンの祖父・クロム=プルム ―――




~~~~~~



「どうなってやがる・・・!!???」

「あれがお姉さまのお爺様ですかッ!?失礼ですが見るからに殺人鬼ですよッ!?」


全身に返り血を浴び、手持ちの斧からは狩った亜人の血がポタポタと滴ってはその場に落ちる。

これだけ見るとどうみてもサイコキラーにしか見えない。

仮面を取ったジェイソンかよ、今日って13日の金曜日だったっけぇ?しかも持っている武器もジェイソンは鉈であれは斧だし結構似てるんですけど・・・!!??


「どうするの・・・!?私いくらあれでも攻撃したくないよ・・・!!」


「・・・まぁあれはバケモノだ。おそらくモノホンはどっかにいるはずだ。」


(ちょっくら見てみるか・・・)



『スキル2;「ルート」を発動します。』



レイはスキル効果を利用して、迫りくる殺人鬼を観察する。幸いあちらの動きが比較的鈍い上に遅く、長い時間観察することが出来る。

しかしそれほどの時間を要しても正体がはっきりとつかめない。


「レイ来るよッ!!」


シェリーが叫ぶと同時に、殺人鬼は斧を振りかぶってこちらへ猛突進。先程までの遅い動きからは想像できない加速度だ。

さらに持つあの斧も見た目だがかなりの重量がありそうだ。そんな武器をあんな軽々しく振るうなんて・・・



(やはりあれは偽物だッ・・・クロムさんはあんなに力持ちじゃねぇ!!)


レイは再びスキル『ルート』発動、瞬時に殺人鬼の弱点を探る。


(なるほどッ・・・・)




!!!!!


振るった斧が大地を揺るがす。

これでミオンも分かっただろう、これは自分の祖父ではないことに。


「みお姉シェリーの攻撃力を上げてくれ!シェリーはアイツにヘッドショット喰らわせてやれ!」


「「うん!」」


ミオンは持つ杖から赤色をスペルを召喚する、強化呪文『キルディ』発動。

シェリーが引く弓に大きなチカラを内包し始める。


「行くよッ!」



閃光放つシェリーの一射。



「てやぁ!!」



ッ!!!



輝空閃(シェロスパーダ)』、見事頭に直撃。

直撃と同時に殺人鬼はその場に崩れ落ち、そして最終的には地面に吸い込まれる形で消えて行った。





~~~~~~


「あれ?倒したはずなのに討伐確認のあの表示が出てきませんね。」


「お前が言いたいのはひょっとして『〇〇を討伐。それぞれ経験値***、+++ゴールドを獲得』みたいな表示のことか?」


「その通りです。」


「まぁ出てこないはずだ。さっきのあれは魔物じゃない。」


「え?魔物じゃないんですか?」


「あぁ、あの後スキルで確認してみたんだ。」



観察対象は静止している時が最も観察に適している状態だ。地面に吸収されて消える前に、レイは『ルート』を発動させていたのだ。

今更だがこのスキル、こういう時にはめちゃめちゃ使える。


「・・・で何だったのあれ?」


「あぁ、あれは『ドッペルゲンガー』だ。」



ドッペルゲンガー ―――

容姿や境遇、様々な要素に置いて自分と瓜二つな存在が出現するという超常現象の一つである。

自分のドッペルゲンガーと対峙した者には死が待っているという言い伝えもある程恐ろしい現象だ。



「こ、こわぁい・・・!!!」ブルブル


「でもドッペルゲンガーなら、本物のおじいちゃんもどこかにいるってこと?」


「あぁ、そうだ。でもさすがにどこにいるのかまでは分かんないわ。」


「でも本来のドッペルゲンガーって、別に攻撃とかしてこないはずだと思うのですが・・・」


「訳分からん世界だし、そんな理屈なんて通用しないんじゃね?分からんけど。」


スキルの発動は先程の使用で今日残り1回。しかしこのスキル、本物のクロムの居場所を見つけ出す関係物がこの周りにはない。こんなところで使ったところで無駄使いになることは誰でもわかる。

しかし先程のあの石板、見事に殺人鬼ドッペルゲンガーとタイミングが重なったが、やはりあれはレイたちに向けていっているモノなのか。

だとしたら今のような襲撃はまだ来る可能性がある。しかもレイに覚えがある人のドッペルゲンガーであるはずだ。


しかしこの付近で、ドッペルゲンガーも近づけない地帯が一つ存在する。

そこに行けばもしかしたら何かが・・・という期待もないわけではない。



「・・・次はバル・グラデの聖窟に行くぞ。ちょっと調べたいことがある。」


「えッ!?あそこには聖獣エヴィウスがいるんですよッ!?そんなのおそわr・・・あ、そうでしたね。」


「俺は襲われない・・・はずだ。」


「『はず』・・・なのですか?」


「あぁ『はず』だ。この世界はどことなく様子がおかしい。もしかしたら聖獣という存在自体がいないかもしれないしな。」


「用心していかないと・・・!!」




4人がいる荒地には、やはり異様な空気は感じられなかった。

しかしここまで付近の森が静かであることにも確かな疑惑と恐怖を覚えながら、レイパーティーは聖窟へ足を運んでいくのだった。





ところでドッペルゲンガー現象というのは肉体から霊魂が分離、そして実体化したものであると伝えられている。

そのような奇怪現象によって生まれた二重身の出現、それすなわちその人物の死の前兆を意味すると信じられてきた。さらにこのドッペルゲンガーは、その人物にとても関係の深い場所に出現することが多いのだそう。


さて、ここで少し考察を入れる。

もし先程の殺人鬼が同じような境遇の下で生まれたものだとしたら?

それは肉体から霊魂のみが分離して実体化したモノという仮説が立てられる。この経過を踏まない限りドッペルゲンガーは成立しない。


何が言いたいのか?・・・そう、『分離』である。

ドッペルゲンガーは『分離』という過程を経て実体化している。『分離』をしていない時点でドッペルゲンガーは生まれない。



――― 思い出してほしい

レイはフェージョ=サタナ戦で現実世界に戻る前、確かに『分離』していた。


――― 思い出してほしい

4人が帰ってきたバンダルスサイト村は、予想していた光景とはかけ離れた荒地であった。


――― 思い出してほしい

フェージョ=サタナは現実世界と幻想世界、二つの『分離』させた世界を無理やり結合して入れ替えようとしていた。



バンダルスサイトに初めて到着した時、入口付近にいた老婆が放った一文



――― お前さんらは明日死ぬというのに ―――



別れ際にフィルがレイに言ったこんな内容



――― シル・ガイアは二人いる ―――



4人に掛かった呪いの一種・『幻撃(ゲンゲキ)


レイとアリナ、そしてミオンとシェリー




あの森でそれぞれはそれぞれのドッペルゲンガーを見ていたのだ。


じわじわと来る恐ろしい呪い、そんなものが金化の聖水如きで完全除去できるわけがないのだ。老婆は所詮まやかしに過ぎない、老婆はあの時何も解決策を提供しなかった。アリナが言った金化の聖水、それがもたらす効果など本来は知っているはずなのに。

金化の聖水など、幻撃効果進行を抑えるものにすぎない。





この現象は、4人がバンダルスの森に入った瞬間から始まっていたのだ ―――




ドッペルゲンガーはその人物と関係性が深い場所に出現する、ともあった。


この文、何が言いたいのか?・・・いや、もう察しがついてくる頃であろう。


4人が進むバル・グラデ聖窟、ここはレイにとって関係性の深い場所である。

神獣エヴィウスに遭遇したのもここ、松嶋芽衣と離れた場所もここ、竜絶の剣を手に入れた場所もここ、ランクが上がった場所もここ。

・・・もうわかるだろう。






4人がたった今立ち会っている、この状況を。




目の前に、いるのだ ―――







レイ=ベルディアの、ドッペルゲンガー ―――




次回投稿日;5月20日

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