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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第5章 ねぇ、私のものになって 《サイコパス・フィースト》
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レベル47 異変 《ゲンエイ》

いよいよ第5章まで突入です!

皆さんここまでの読了有難うございます!


「村が・・・ないッ・・・!?」


アリナの移動呪文『トレイフ』により移動した場所は正確なはずである。したがってここは紛れもなく先程まであったバンダルスサイトの村である。幻影を作っていたフェージョ=サタナの現像崩壊により幻影は消え去ったはず・・・これが幻想でないのだとしたら、


「レイくん、ひょっとしてあの村も幻想の一部だったのかもしれないよ?」


バンダルスサイトという村はフェージョ=サタナによって造られた架空の集落であったのかもしれない。

ということはあの村は合計で三つの顔を持つことになる。

レイたちが初めて来たときの異様な光景の村、そして幻呪縛から解かれたときに見えた村の姿、そして今は更地と化したこの姿。


「・・・幻想の一部じゃないんじゃないか?さすがに三つの顔を持つことはないだろ。証拠としてあの村で買った道具はここにあるわけだし、幻影だとしたらこれらは存在しないはずだ。」


「しかしだとしたらこの光景はさらに意味不明になりますよ?」


「それもそうだが・・・」



4人は荒地となった集落跡を探索していく。たとえば4人が泊まった宿があった場所、次はレイが立ち寄った道具屋の場所・・・など。

しかし手掛かりになりそうなモノは見つからない。さらにいうと、怪しい場所には必ずと言っていいほどある異様な雰囲気もここからは感じられない。


何もない虚無の空間、ここはそう言った方が妥当だろう。


「・・・あれッ?ねぇレイ、なんか見つけたよ~?」


シェリーがいる場所はかつて村の教会があった場所、今はただの荒地となっているが。


「何見つけたんだ?」


レイが近くに駆け寄り、シェリーが指差す方を確認する。中くらいのサイズの岩の影にあるようだ。


「・・・なんだこれは?気持ちわりィ物体だな。」


潜むように落ちているそれは、何かの魔物の顔が彫られている小さな石ころだった。さらに言うと、その石に刻まれている魔物の顔は結構いびつで気持ち悪い。

まぁシェリーがドン引きしていない辺り、フェージョ=サタナのあれよりかはマシであるが。


「この顔・・・どっかで見たことあるよね?」


ふとミオンがそんなことを言った。


「え?これか?」


「うん、それも割と最近に。えっとなんだったけなぁ・・・」


レイもミオン同様に、石に刻まれた魔物の顔をじっくりと観察。

しかし言われてみるとこの顔、確かに覚えがあるような気もしてくるのだ。説明しよう。

百獣の王のような顔立ちに、しかしそれの両目はつぶされている。盲目なのだろうか。

さらに見ていくと魔物の顎の下には、なぜか千切れた首輪がぶら下がっているようにも見える。ここまで見ると、ミオンの勘はやはり当たっていた。



「これはゼゴ・・・暗黒洞(ダークサイト)にいた魔物みたいですね。」



覚えているだろうか。

クルスオード帝国戦争において、国王に取りついた悪霊ディモーネの除霊の道具となる『浄化の鈴』のために出向いた暗黒洞で遭遇したキマイラ種の魔物である。

確かレイたちは首元の鈴を奪取してそのまま逃亡を図り、ゼゴの両目を潰したままレントヴィンの町へ逃げていった。つまりあの時では、ゼゴは野放しということになる。


しかしなぜだろうか。

盲目にされたのも首元の鈴を奪ったのも全て2週間程度内の出来事だ。

なのになぜレイたちがダメージを与えた時の姿を映した顔が彫られているのか。

もっと言えば、なぜそれがこんな場所にあるのか。



「気味悪いね・・・これ・・・」


その通りである。


「まさか野放しにしておいたからでしょうか・・・!?」


「なんで野放しにしたことと顔を描いた石が転がってることがつながるんだよ。」


「それは・・・ゼゴの怨念、とかでしょうか・・・?」


「ッ・・・ありえそうだから何とも言えねぇな・・・」



魔物の怨念が具現化するという説はよく聞いていたレイなので、確かに今回のことと繋がりがある可能性は低くないだろう。

そんなのがなぜこんな場所に・・・そんな疑問と一緒に、レイはとある方法で探ってみることにした。


「ちょっと探ってみるわ・・・スキル発動。」



『スキル2;「ルート」を発動します。』





すると、




「ッ!!??」



レイは、まさかの事実と対面する。



「どうしたのレイくん!?」

「「!?」」



(この石の正体は確かにあの時のゼゴ・・・これは間違いない!!でもマジかよッ・・・そのゼゴって・・・)





「お前だったのかよ・・・・ソリューッ・・・!!??」



ソリュー ソリュー=エルゴ ――――

レイが育ったベルトディア村でレイをからかい続けていたムカつく旧友でムカつくライバルだったソリューのことだ。

レイが旅に出る前、ソリューは確か村に残っていたはずだった。いや、そのはずだ。


しかしなぜソリューは、魔物に豹変したのだろうか。


「・・・まだ『ルート』で探れないの・・・?なんでここでソリューくんが出てくるの・・・!?」


ミオンもこの事実に結構な動揺を見せる。まぁ当然の反応だろう。

残りの二人は頭に?マーク・・・まぁこれも当然だろう、だって二人はソリューを知らないのだから。

レイは再びスキルを発動、事の詳細を確かめる。



『スキル2;「ルート」を発動します。』


しかし



「・・・これ以上は分からない。ったく、なんでこういう重要なことは分からねぇんだよ・・・」


核となる真実は簡単には教えてくれない、まぁ真相解明の定番イベントだ。

しかしこの事実でまた新たな疑問も生じる。

それは、



「何でソリューがゼゴなんだ?」



ソリューが魔物に具現化するという選択肢が濃厚のはずなのだが、濃厚と同時に最もありえない可能性でもある。

ドラゴンに変身できても、(ヌエ)というキマイラ族の魔物に変身は出来ないだろう。


「ねぇレイくん、一回ベルトディアに戻ってみない?もしかしたらこのことは嘘で、本当はソリューくんがいるかもしれないよ?」


スキル発動によってみられる真相は最も正確なものであるが、どちらにせよ一番ソリューと関係が深いのはまぎれもなくあの村だ。


「・・・それもそうだな。おいアリナ、悪いがベルトディアまで呪文で飛ばしてくれ。」


「私そのベルトディア・・・ですか?その村には行ったことありませんので、瞬間移動は出来ませんよ?」


移動呪文『トレイフ』の効果は、対象者が一度言ったことのある場所であれば瞬間ワープが可能であるというもの。よってアリナにとって初上陸どころか初耳であろうベルトディア村に、その移動呪文は効果なしだ。


「じゃあ一番近いイーストデルト城まで飛ばしてくれ。お前の故郷だろ?」


「それなら大丈夫です。」


「まぁ今日はもう遅いからあっちに付いたら宿屋で寝よう。さすがに夜のあの道は雰囲気がヤバめだ。」


「そうだね。まぁどっちにしても不気味で怖いのは変わらないけど。」


「まぁ俺もだ。なんでソリューがこれと関係してんのか訳分かんね。」


「私ももう疲れた~・・・」


「もうすぐだシェリー。じゃあ早く飛ばしてくれアリナ。」


「頼まれました!『トレイフ』!」




そしてイーストデルトで夜を過ごし、4人は翌日を迎える。

レイたちは商店街が賑わい始める頃に城を出て、二人の故郷であるベルトディア村へと向かっていく。

この周辺はカメラゼというザコモンスターのみの地帯なので、耐力的には全く問題ない。


「あれ、確かここら辺に小さな小屋があったはずなんだけどな・・・」


「覚えてるよ!!小さい時にかくれんぼで使ったあのボロ小屋でしょ!」


「あ、あぁそれそれ。でもそこまでテンションあげんなみお姉。」


「・・・でもそろそろあってもおかしくないのにね・・・なんでだろう。」



そして4人はしばらく山道を歩き、ベルトディア村付近まで歩を進めている。

しかし近くにつれて聞こえてくるはずの村人の声や音が、なぜか一寸たりとも聞こえない。


「あれ、俺耳遠くなったのか・・・?」


「大丈夫だよ、私も聞こえてないから。」


「そうか・・・まぁまだ俺若いしな、この年で遠くなるってことは相当老いが酷いってことになる。」


「それもそうだね。」


二人がそんな会話をしていると、後ろから


「・・・あのレイさん、この先に何があるのですか?こちらは確かバル・グラデ聖山の方向ですけど・・・?」


「お前知らないのか?イーストデルト城に一番近い村のベルトディア村だぞ?お前魔法は出来んのに基本的な地理は分かんねーのかよ。」


「え?」


「これだから脳内幼稚園は・・・」

「それどういう意味ですか!!」


「・・・でもアリナちゃん、一回は聞いたことあるでしょ?この大陸で珍しい竜人が住んでいる集落、それがベルトディア村だよ?」


「・・・」


「レイくんと私は竜人族の亜人なの。ベルトディア村は私達の故郷なんだよ。」


「・・・?」


「・・・アリナちゃん?聞いたことない?」


ミオンの問いかけにもアリナは首をかしげてはてなマークを浮かべながらマヌケ顔。

しかしそんなアリナを見るところ、どうやら知らないのは本当らしい。


「お前・・・マジか・・・?」


「はい。・・・その村は前にあった集落の名前ですか?」


「ッ・・・(コイツ、言ってる時の目がマジだ・・・!?)」



このパーティーに入る前に別のパーティーにも入っていたアリナは、少なからずイーストデルトの外を探索する機会はあったはず。さらに魔法を操れるほどの天才幼女、周辺地理くらい把握しているはずだ。現にベルトディアより遠いレントヴィンは知っていたわけだし。

しかしこうも『知らない』を顕著に示されては、いよいよ疑問も飽和を越して洪水状態。


そして4人は到着した。




いや、ここは確かにベルトディアがある場所だ。

ここら辺にレイの実家があり、あっちの方には村の図書館がある。ミオンの実家だ。


しかし、





「「なにコレ・・・・!!!???」」

「「?」」







その場所は、ただの荒地であったのだ




まるで昨日の村のように ―――




次回投稿日;5月19日

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