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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第0章 駆け出しに眠るなにか《プレ=ヴィローゼ・オブ・ナイト》
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レベル4 神獣 《エヴィウス》

明暗の概念とは異なる闇に包まれるこの空間で、レイはただ突っ立っているだけ。

しかしレイはふと芽衣がいないことに気づいた。


「・・・あれ、めいさんッ!?どこ!?」


レイは慌てて周囲を見渡すが、芽衣の人影はおろか、いる気配すら感じない。

まず、見えない。


「・・・!?」


しかし、消えゆく芽衣の気配とは裏腹に、段々と気配を増す存在が。


「!?まさか・・・うそだろッ!?」


その気配はゆっくりと、しかし確かに、こちらに向かっているのがランク0のレイでも分かる。

それは芽衣が消えた途端、急激に気配を感じるようになったからだ。


足音も聞こえ始め、なぜかレイの身体は硬直を始める。


「なんだよ・・・!?なんだこれ・・・!!」



そしてついに、気配の正体は姿をレイの前に現した。



「!!??」



その姿は、まさしく聖域の存在

背中に生やした大きな聖翼に、神々しいオーラを放つその大獣

その名は冒険一回目のレイでも分かった。




―――― バル・グラデの守護獣 エヴィウス







「えッ!?守護獣じゃんッ!!」


大きく赤い眼光を放つエヴィウスの目は、レイの怯える顔を鮮明に映し出す。

神が創造したとされている守護獣は特別な力がない限り、ダメージすら与えられないという強力なチートスキルを持つ。

さらに守護獣は獣ではあるが、魔物ではない。神の獣・神獣の類だ。

もし一体でも倒されることがあれば、聖山の崩壊は免れない。

守護獣は、聖山を護る最後の砦なのだ。


「まずいッ!逃げねーとッ!!」


レイは驚きで落とした木刀を拾い上げると、出口の方向へ一目散に駆け出した!暗闇の中で視界は最悪だが、先程二人でたどってきた道を必死に思い出しながら走り出す!


(めいさん・・・ゴメンッ!!!)


しかし、守護獣のスピードはレイのそれとは比べようがなく

守護獣はなんと一瞬でレイの前に立ち憚った!!


「なッ!!」


――― ・・・・・ ―――



再び赤い眼にレイの小さき姿が映し出される。


「くッ・・・くそ・・・!!」


目の前の強敵に、レイの足は拒絶を始めた。


(足がすくんで動けねぇ・・・!!)



・・・



しかしエヴィウスはレイの前に憚ったまま特に何もすることなく、ただレイの眼を見続ける。


「!!・・・んん?」


本来の守護獣は聖域の侵食を良しとしないため、偶然立ち入った者でも追い払う習性があるのだ。

しかし、エヴィウスは何もしない。


「!・・・それならッ!」


段々足も動くようになってきた・・・!


「ッ!!」ダダッ


レイはエヴィウスが何もしてこないと悟って、すぐさま外の方へ駆け出した!!




――― 待ツノダ、青年ヨ・・ ―――



「ッ!?」


レイの脳裏に、ふと誰かの声がこだまする。

レイとエヴィウスを除いて、この空間には誰もいない。

――― もちろん、『松嶋芽衣(かのじょ)』もこの場にはいない。



――― ・・・ ―――



エヴィウスは再びレイの前に立つと、またレイの眼を見つめ出した。

それは本当にレイの生気を奪うとかそういうものでもない。ただ見るだけだ。

もちろんこんな巨大獣を前に、もうレイは逃げることなど諦めている。


しかし先程のあの異様な気配は、今はなくなっている。




――― 名ハ・・・貴様ノ名ヲ申セ ―――



守護獣の問いかけは急に来た。

しかしこのしばらくの沈黙で、レイは心の方も少しずつ冷静を取り戻していた。


「俺は・・・俺はレイ=ベルディア、竜人族・・・だ。」


エヴィウスの赤い眼光は、レイを静かに伺っている。



――― レイ・・・、貴様ハ弱イ、違ウカ? ――― 


「なッ!?ちがッ ―――


!!


その時、赤い眼光が輝きを増した!!


「ッ!!・・・」



――― 貴様ハ弱イ、違ウカ? ――― 



エヴィウスは、また静かな眼でレイを伺いだす。


「・・・あぁ、俺は弱い。ただし、それは今だけだ。」



――― 勇敢ト無謀ハ違ウ 弱キ身デ聖域ニ立チ入ルナド、ソレハ無謀ダ ―――



「ッ!・・・



レイはようやく気付いたようだ。

自分が今ここにいることの、域を超えた間違いに。

いうなれば選ばれた者だけが入ることを許される場所、それがここだ。


「・・・引き返せってことか?だったらそこを通りたいんだが。」


しかし、エヴィウスは再び口を開く。



――― 先程ノ娘ハ、ナゼ傍ニイタ? ――― 



「?・・・それは俺が誘った。お陰で行方不明だ。いきなり知らない場所で行方不明なんて、不安マックスもいいトコだバカ野郎・・・。」



――― ・・・ ―――



「彼女は違う世界から『転生』させられた身らしい。理由は聞かせてくれなかったけど、何か役割があってだと思う。」


「そんな矢先、俺は彼女の未来を奪ってしまったようなモンだ・・・。クソッ、俺がもう少し有能ならッ・・・」



そんなレイに、エヴィウスは思いもしないことを言い放った。




――― 未来ヲ奪ウ・・・ソレハ、貴様デハナク、アノ娘ガシヨウトシタノダ ―――



「・・・えッ」



――― ・・・ ―――



「な、なぁ。それってどういうことだ・・・?あの娘がしようとしたって・・・?」



――― ・・・貴様ハアノ娘ヲ知ラナイヨウダナ マァ良イ・・・ ―――



「ちょッ、えッ!待てってッ ―――



――― 直ニ分カル・・・オ前ガ冒険ニ出タ時ニ、イツカ・・・ ―――



「ま、待てよッ!!まだ話はッ ―――



――― サラバダ。ソシテ強クナレ ―――






――― 『赤ノ獣騎士』ノ資格ヲ持ツ者ヨ






エヴィウスは、レイの前から姿を消した。何も音など発することなく、エヴィウスは静かに消えて行った。そして先程までエヴィウスがいた場所には、とある一本の剣が置かれていた。


「なんだったんだ・・・今の状況は・・・」ハア


ただ茫然と立ち尽くすレイは、しばらくしてその場から動き出し

地面に置かれたその剣を拾い上げ、その剣を腰にさす。


「うわッ、重・・・!なんだこれ・・・?」


見た目から想像も出来ないほどの重みを感じるその剣は、まだ『眠っている』武器のようだ。刀身が錆びているのを見ると、使えない武器のようだ。刀身が死んでいる剣のようだ。


「・・・まぁ持ち帰っておくか。ていうか早く出ないと。」


レイはその思い剣を背中に背負うと、エヴィウスが消える前に指示した出口に向かって進みだした。












(・・・・・フフッ)






洞窟には、もう誰もいない






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