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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第4章 幻影の向こうに映る世界 《キャンバス・フェード》
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レベル45 儚い夢《キャンバス・フェード》


フェージョ=サタナの姿は例え現実世界に降りたといっても、メデューサのような禍々しい姿であることに変わりはない。さらにフェージョ=サタナは持てる力を解放し出し、身体のあちこちから紫色のオーラのようなものが溢れ出している。見た目は少し気持ちが悪い。


「う、うわァ・・・」


この通り、あのシェリーもこのドン引きだ。何にでもまず興味が勝る体質のシェリーがここまでドン引きするのは、パーティーに入ってからおそらくこれが初めてであろう。


「こ、これが相手ですか・・・」


「・・・お前は良いだろ、直接触れるような職じゃねーんだから。」


「そ、そうですけど・・・」


おいおいそんなに気持ちわりーのかよ。さすがの幻魔王様でも少し傷つくぞ。

一方相手の方は幻想世界を破壊されたことでの怒りで気づいてはいないみたいだ。


しかし、同情したのもつかの間



――― ッ・・・ ―――



次の瞬間、フェージョ=サタナは自分の尾で3人を薙ぎ払った。



「「「ッ!!」」」



少し油断していた。

今のフェージョ=サタナはチートが効かない状態で、先程に比べたら強さはかなり劣るだろう。

しかし仮にも『魔王』という肩書きがついている、そう簡単には倒せない相手だ。

レイ含め、3人はここで集中力を再び高めていく。さすがにあのテンションで勝てる相手ではない。


「・・・で、レイさんどうするんですか?あの紫色のオーラのようなものは一見すると結界の一種に見えます。しばらく放置しておくと厄介になると思いますよ?」


こういうアリナの勘は結構鋭い。そう、あれは紛れもない『魔法結界』である。

あの結界が完全に形成されると、フェージョ=サタナは呪文攻撃が全く効かなくなるのだ。


「・・・」


しかし実質結界を壊す完全な術を持っているわけでもない、なら残った方法は一つ。


「結界形成前に倒す。時間との勝負だ!行くぞ!」


レイはフェージョ=サタナに剣先を向け、心臓目掛けて猛突進。

2人はそのすぐ後ろで攻撃準備。



――― 悪足掻きなのよッ・・・行動すべてがッ!! ―――



右手に暗黒の魔力を召喚、呪文攻撃『デスヴェルム』の準備だ。


「シェリーは光属性の矢を左手に放て!アリナは右手に光魔法をぶち込め!」


「はいッ!」

「えッ左手でいーの!?」


「あぁそうだ!左手だ!頼んだぞ!」


二人はレイの言う通りに、シェリーは“光の矢”『輝空閃(シェロスパーダ)』の態勢に、アリナは光魔法『ダラディトス』を詠唱。フェージョ=サタナも魔力が溢れ出していて、今にも撃ってきそうだ。


(・・・よしッ)


「今だ撃て!!」


その掛け声と同時に、3つの攻撃が放たれた。



――― 『デスヴェルム』ッ! ―――


「ッ」

「『ダラディトス』!」


フェージョ=サタナが放った暗黒のスペルは、アリナが放った光の粒たちと激しく衝突。


――― ッ!! ―――

「くぅぅ・・・!!」


最初は暗黒スペルが優勢だったものの、アリナの光が徐々に巻き返し・・・



ッッ!!!!



お互いのチカラが衝突の後に消滅を始め、二つの魔力は双方の中心位置でかき消された。



――― なッ・・!? ―――


そしてもう一方は、



――― ッ!?な、なにッ!? ―――



フェージョ=サタナの左手首を貫通。

二人が放った同属性攻撃はどちらも光で、眩しさによる視界ゼロを狙った攻撃だ。

ここでレイが左手を狙えと言ったのは、アリナとの鍔迫り合いでフェージョ=サタナは右手により集中力が向くだろうという予測によるものだ。

これで左手を封じた、呪文も召喚しにくくなるだろう・・・


・・・というのは間違いだった。


「お、おいあれ・・・」


3人の目に映る光景とは、まさに異様なものだった。

シェリーの矢が貫いたはずの左手首が、みるみる再生していくのだ。


「き、気持ちわるい・・・・・」


シェリーはこれでさらにドン引き、しかもその再生の仕方がかなりグロテスクで気持ち悪い。11歳にはかなり堪える絵面である。

特に再生する後半経過が表現できないほど気持ち悪いものなのだ。


しかし


「再生能力あるのかよ・・・!?」



――― 言ったでしょう、全てが悪足掻きなのよ ―――



幻魔王の大尾がその瞬間、3人の元へ振り下ろされた。



!!!!!


「よけろ!こっちだ!」


(再生能力があるなんて聞いてねーぞ!今までの魔物でもそんなヤツいなかっただろッ・・・!?)


再生能力は種族による特性などではなく、個々人で発生するスキルの一種にカウントされる。よって他種間でも再生能力の有無は存在する。しかしそのようなスキルが発生するケースは今までの戦闘で一度もない。またこの世界の中では、再生能力を持つ存在自体が稀である。


最も対処法が不明に近い性質なのだ。


「・・・再生能力の弱点は、相手の動力源・・・・」


「ふぃ、フィル・・・!?お前大丈夫か?」


「問題ない。この神官のおかげである程度は回復した。ところで再生能力を持つ魔物の弱点かつ急所はその存在の動力源だ。」


「動力源・・・?」


「あぁ。つまり・・・―――


――― うるさいッ!!! ―――




ッッ!!!!




フィルの身体が、振るった大尾で宙を舞う。


「ッ!!」


――― 本当に嫌な事を言う奴だねお前は・・・さっさと死んじまいな!! ―――



そして再び大尾を振るう。







――― ・・・やっと静かになったわね、あんたは邪魔なのよ ―――



しなる大尾の乱

荒れ狂う大蛇の尾で幾度となく痛めつけられたフィルの身体は、現状動いていない。


「ッ!?みお姉すぐに回復魔法頼む!」


今の連続乱撃により、ようやく落ち着いたフィルの状態が再び崖っぷちまで追い込まれている。しかし先程も回復に結構な時間がかかっている、今回も回復したところでまた乱撃が来ることも予想できる。


フィルの言っていた『動力源』を破壊しない限り、おそらく永遠ループ。



(動力源ッ・・・!!どこだよそれッ・・!?)




シェリーとアリナは手を止めずに必死に攻撃している。

しかしそんな二人にも疲れが顕著に見え始めていた。

アリナのMPはもうすぐ底を尽きそうでかつオーバーリリース状態に近い状態、シェリーは残弾が尽きそうで動き回っているせいか体力消耗も激しい。対するフェージョ=サタナは厄介な再生能力のおかげで、二人に攻撃を喰らってもすぐに再生し、ダメージはほとんど与えられていない。



このままでは、いずれ飲み込まれる ―――




いずれ、飲み込まれる ―――




(ッ・・・どうすればッ・・!!)









――― 君はチカラが欲しいのかい? ―――



(この声・・・まさか・・・!?)



――― 君はチカラが欲しいのかい? ―――



(あぁ欲しい。この状況を一発で覆す切り札の技が欲しい!)



――― 強欲だね、こんな未知の敵の前なのに ―――



(そんなのは分かってる・・・でもこのままじゃみんながヤベぇんだよッ・・・!!!)



――― ・・・ ―――



(頼む・・・!!チカラを貸してくれ・・・!!!)



――― ・・・しょうがないね、じゃあ貸してあげる ―――



――― これで戦いの先が見えるよ ―――



――― この先どうしたらいいのか、どうしたら相手を倒せるのか ―――






――― ・・・さぁ、行ってきな!! ―――









『スキル2:「ルート」が発動しました。』






~~~~~


「ッ・・・」


アリナはあと一回でMP0状態、シェリーは動けなくなるのも時間の問題というこの状況。以前ピンチであることに変わりなどない。


「どッ、どうしますかレイさん・・・!!この調子だと私限界です・・・!!」

「ハァハァ!!・・・どうするのッ!?このままじゃッ、・・やられちゃうよッ!?ハァハァ・・・!」


「・・・」



レイは意識を落ち着かせ、フェージョ=サタナをじっくりと観察する。



(・・・フェージョ=サタナ、種族不明の幻魔で再生能力持ち。そして弱点は・・・)



『スキル2;「ルート」を発動します。』




!! ―――




「・・・なんだ、そんなトコかよ。ハハッ・・・」



レイは竜王の剣を腰から抜くと、素早く炎のスペルを撃ち込み『竜閃炎(イグナイトソウル)』の攻撃態勢。


「!?レイさん相手は再生能力持ちの幻魔ですよ!?物理攻撃は通じないと思いますが・・・!?」

「分かってる。」



――― ・・・まぁいいわ、来なさい。すぐに戻すから ―――



「・・・戻せるのか?」



――― へぇ・・・何が言いたいのかしら? ―――



「なに、簡単なことだ。知らねぇのかお前。」



――― ・・・ ―――






「一度壊れたら、モノは二度と元に戻らないんだぜ?」



そしてレイは、斬撃を放つ。




「・・!?レイさんどこに撃ってるんですか!?」

「あれれ!?なんか変なトコに行っちゃってるよ!?」


「いいや、これでいいんだ。」


レイが放った斬撃はフェージョ=サタナ本体ではなく、なんと大きく曲がりバンダルスの祠内部の方へ猛進していく。



――― ・・・ッ!!??まさかッ・・!! ―――



「・・そうだよ、狙ってんのは ―――




――― 神格の砥石(おまえの心臓)だぜ?」




次の瞬間、何かが大きく砕け散る。



――― ウグッ!!???ウッ・・!! ―――



幻魔王フェージョ=サタナ、祠の秘宝『神格の砥石』粉砕と同時にもがき出す。さらにもがきながら、フェージョ=サタナの身体は段々と薄くなっていく・・・

幻魔の類が死ぬ ――― 

これはすなわち『幻想が覚める』と同義。消える時は、跡形もなく綺麗に消え去る。



――― ウグゥ・・・!!おのれぇ・・・!!!レイベルディアぁぁ・・・!!!! ―――



消えかかるフェージョ=サタナが振るったその大腕。本来なら大きな衝撃音と衝撃が響くはずのレイの右脇腹は、ただ何も無かったかのように。

フェージョ=サタナの腕がただ、いとも簡単にすり抜けただけであった。


フェージョ=サタナは、完全な『影』と化した。



――― クソォォォォオオオオオ!!!!!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!! ―――





――― そして、影は消えた







『幻魔王フェージョ=サタナを討伐。それぞれ経験値13500、0ゴールドを獲得。

 スキル発動;レイ=ベルディア、シェリー=クラシアは経験値54000を獲得。』




次回投稿日;5月15日

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