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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第4章 幻影の向こうに映る世界 《キャンバス・フェード》
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レベル44 幻想世界《マニフレイア》


辺りの空気は両目を封じたからだろうか、少し緊迫感が解けたような感じだ。しかしフェージョ=サタナが優勢であることに変わりはない。このフィールドの主はフェージョ=サタナだからだ。

この形勢を逆転する唯一の方法、


「この幻想世界を破壊し、現実世界にフィールドを移す。」


「それはどうやってやるんだ?」


「不明。しかしお前にはそれを見つけてほしい。その間フェージョ=サタナは私が抑えておく。」


「いや、食い止めるっつったって手掛かりもなければなぁ・・・」ハア


「手がかりはある。この世界の破壊条件となる対象物は発生源付近に存在する。」


「は、発生源?それって ―――



ッ!!!!!!



突然の衝撃、二人は両サイドに転げ落ちる。



――― それもう答えみたいなモンじゃない 何が“不明”よ・・・ ―――


どうやら方法はフィルの言う通りだったようだ。しかしその発生源であるあの祠の前に、たった今フェージョ=サタナが立ち塞がった。



――― ここは私の世界 私の意のままに動く私の庭よ ―――



「・・・思うようにはさせないって言いたいのか?」



――― あら、結構頭良いのね ―――



(バケモノに褒められてもなんだよな・・・)


「おそらく幻想世界を壊さない限り、フェージョ=サタナにはダメージさえも与えることが出来ない。」


フェージョ=サタナは幻想世界の中では、自分に与えられるダメージ量をも自身でコントロールできる。こちら

から対抗できる手段など、世界の破壊しかない。


「破壊はお前に頼む。短く済ませてほしい。」


フィルはレイにそれを伝えると、魔力を召喚しているフェージョ=サタナへ鉾を構える。



――― あら、あなた一人で持つかしら ―――



「私の最も得意な戦法は耐久だ、問題ない。」



――― 強情なのももうすぐね ―――



フェージョ=サタナは、召喚した魔力を解き放つ。



――― 『デスヴェルム』 ―――



フェージョ=サタナは、呪文を唱えた。凄まじい暗黒のチカラが、フィルを瞬時に包み込んだ。

そしてフィルの体力を段々と奪っていく。


「効かない。」


フィルは暗黒の霧を駆け抜け、それと同時に大鉾の先端に再び魔力を召喚させる。

鉾先に現れた白い光は段々と風を纏い出し、背後に巨大な暴風を発生させた。


フィルは、二度目の反撃をする。



七現嵐(コマンドブレス)



放たれた暴風はしだいに炎を纏い出し、爆炎風となってフェージョ=サタナに達した。

ランダムで異属性付与効果が発生する、天閃の鉾の特有スキル ―――

それがこの技、『七現嵐(コマンドブレス)』である。



――― フフフ・・・無駄 ―――



フェージョ=サタナは、迫りくる爆炎風を前に微動だにしない。



――― 見せてあげる、私が“効かない”(ワケ)を ―――



爆炎風が数ミリまで押し寄せたこの瞬間、フェージョ=サタナは動き出す。



――― 操作(マニフレイア) ―――



そういった次の瞬間、つい前まで荒れ狂っていたあの爆炎風が突如ただの霧に変わった。


「ッ・・・」


そしてすぐさま薄くなって、ついには何もなかったかのように綺麗に消えていった。



――― どう? ―――



「・・・予想はしていた、感想などない。」ババッ


――― 目の前で無効化されたのにそんな反応なのね・・・だからつまらないのよ ―――


「面白さなどどうでもいい。」シュッ


――― あら、戦いでも面白い方が燃えるじゃない ―――


「相手がお前の時点でその感情は消える。」ササッ


――― でもあの子は面白い反応してくれたわよ ―――


「・・・紅騎士は私よりも低能、感覚が幼いだけ。」ギィンッ


――― あらら、随分と辛口評価なのね ―――



この会話の間でも双方は何度も鍔迫り合いを重ねている。しかしダメージがコントロールされる以上、致命傷どころか一瞬の隙も難しい。

フィルの場合、相手からの状態異常攻撃に耐性はあるものの、自分の攻撃で相手に掛かっている効果を無効化できるほどのスキルは有していない。フィルのスキル『オベロンプレート』は相手に掛かっている効果まで関与することは出来ない、管轄外なのだ。よってフィルは今のところレイ頼みである。

対するレイは ―――



「・・・」


影から手掛かりを模索中である。・・・いやだって道が塞がれちゃってるんだもん。


「クソ・・・あいつがどうにかバケモノの居場所をずらしてくれれば・・・」


祠に通ずる唯一の道をフェージョ=サタナがまたがって憚る以上、むやみに突っ込むことはできない。スキル発動中のフィルとは違い、レイは『オベロンプレート』効果なしだ。フェージョ=サタナのあの操作(マニフレイア)で身体を操られたら正直勝ち目がない。


「くッ・・・」


フェージョ=サタナの操作(マニフレイア)は、おそらく対峙する一対象にしか効果を発揮しないはず。レイを操作(マニフレイア)効果に掛けたままフィルと戦うと、フェージョ=サタナ側の消耗も大きいだろう。

つまり今の場合、『フィルが食い止めていてやっとレイが動ける』という状況だ。



「・・・あれ、」


ふとレイは何かを見つける。レイの眼の先には、あの例の祠とその内部でうごめく空気のゆがみが。


「なんだあれ・・・」


よく見ると、確かにゆがみの部分から何か白い気体がにじみ出ているようなそうでもないような・・・


(よし行ってみるか・・・)


レイはその場所から戦闘状況を確認する。

見るとフィルが誘導して祠への道を開けようとしている感じが、何となく伝わってきた。祠まで行く好きをじっくりと伺う。



――― (・・・) ―――



「よそ見している場合ではない。」


フィルは攻撃の手をやめることはない。次は両目を焦がした先程の技、“滅魔光(アストレア)”。

天閃の鉾の先に、溢れるエネルギーを集約する。


「ッ!!」


両腕に向かって放たれた滅魔の一閃は、



――― 操作(マニフレイア) ―――



フェージョ=サタナのこの言葉で、やはりただの霧へと変えられてしまう。しかし段々と祠への道からずれてきているのも事実だ。

フィルがレイに“今だ”のサインを送る。


(よしッ・・・)


そしてレイは祠へ向かって飛び出した。



「うおおおおおおおお!!!!!!!!」


「(そんな大きい声だすなッ・・・)」


レイはただ全力で祠へ駆けていく。


(あのゆがみをこの剣でたたき斬ればッ・・・!!!)



――― ・・・ッ ――― サッ



「気をつけろ!追ってきてるぞ!」


「ッ!」


フィルの掛け声で後ろをちらりと振り向くと、やはり来たかとフェージョ=サタナが自分を追いかける。しかし双方のスピードを比べると、若干の差でレイが速い。


「おおおお!!!!」


そしてついに祠の内部へ。

レイは腰の剣を抜いて、目の前のゆがみに思いっきり振り下ろした。




ッ!!・・・・ ―――



「よしッ、やったz・・・ ――――


しかし、




――― ・・・フフフ ―――



世界の景色は、まだ変わらない。



「な、なんでだ!?今叩き斬ったはずだぞ・・・!?」


確かに今レイが斬ったあのゆがみは、まるでガラスの破片が散らばったかのような有り様だ。幻想世界の効果が薄れててもおかしくないはずだが・・・


「!?・・・ッ、まさか・・・!!」



――― そうよ、その祠も幻なの ―――



やられた。

この空間はフェージョ=サタナが主の空間であり、何を作るも何を壊すのもフェージョ=サタナの意のまま。その力を利用して、なんと現実世界への入口である発生源まで偽造したのだ。

つまり今レイがいる祠は、全てフェイクである。




しかし、次の瞬間 ―――






ピキッ・・・



――― ・・・えッ ―――



ピキピキッ・・・




頭上の暗天の空に、いくつもの亀裂が走る。



――― な、なんでッ・・・!? ―――


亀裂は、さらに空を走る



ピキピキピキピキ・・・!!!!!



――― そんなッ・・・!! ―――



ピキピキピキピキピキピキピキピキ!!!!



――― 私の世界がッ!!?? ―――




そして次の瞬間




ッッッッ!!!!!!!!




暗黒の空が、大きく爆ぜた。




幻想世界が、崩れ去る ―――







――― わ、私の世界がッ・・・世界がァ!!!! ―――



フェージョ=サタナが地面に崩れるそこは、なんとレイ達4人があの時入った“本物”のバンダルスの祠の中である。4人がアンデットナイト達から逃れるために走り行ったあの祠である。

つまり、


「れ、レイくん!?何このイケメンな騎士さんッ!?」

「変なバケモノまで居ますよッ!?」

「わ~!!!」



あの3人がいる、ということだ。


「フィル、お前がやったのか・・・?」


「あぁ、お前がフェイクの祠に行っている時にな。」



――― な、なぜフェイクって分かったのッ・・・!!?? ―――


「私に夢幻攻撃は効かない。だから本物の発生源の場所も把握していた。お前自身に、紅騎士に対する個人的興味

があることも同時に把握していたため、お前が紅騎士の方へ傾くことも計算できた。」


「じゃあその隙に本物の場所まで・・・?」


「その通りだ。お前は良い働きをしてくれた。少しだけ感謝する。」


「おとりにされて少ししか感謝されねーとか少し腹立つなおまえ。」


「・・・まぁいいだろう。結果的には現実世界に戻ることが出来た。このフィールド内ではフェージョ=サタナの能力は通常時に戻り、また能力変換も出来ない。」



――― どうしてくれるのよ・・・!!!! ―――



フェージョ=サタナは、自分の世界が破壊されたことから来たのだろうか、怒り狂った眼でフィルをにらみつける。


「・・・紅騎士、次はお前のターン。私は結構な体力を使っている。続行は厳しい。」


フィルはレイの救出、同時に退避空間の形成、そして幻想世界へと転送など、大幅に消耗する技ばかりを使ってきている。さすがに限界が近い。


「・・・みお姉、まずは何も言わずに回復魔法をこいつに。アリナとシェリーは何も言わずに俺とあのバケモノ退治を。いいか?“何も言わずに”だぞ?ココ重要だから、試験に出るぞ。」


「レイさん何言ってるのか分かんないです・・・」


「『事情は後で説明するから今は黙って言うことを聞いてくれ』ってやつでしょ?任せてよ!」


「あぁ、さすがみお姉は分かるなぁ。対してそこのロリガキは・・・」ヤレヤレ


「なッ、誰がロリガキですかッ!?・・・分かりましたよ!やればいいんでしょッ!?」



なんだかんだ言いながらも、レイ達三人は武器を構えて戦闘態勢に。フィルは端に寝かせており、その横でミオンは回復魔法でフィルを癒す。



「べ、紅騎士・・・」


「ん、なんだよ。」





――― 頼んだぞッ・・・!! ―――





そういうフィルの表情は、少しずつ熱を取り戻している気がした。




対フェージョ=サタナin現実世界ラウンド、開始 ―――


次回投稿日;5月14日

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