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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第4章 幻影の向こうに映る世界 《キャンバス・フェード》
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レベル39 攻略法 《オベロン》


――― お前さんらは、明日死ぬというのに ―――




一瞬4人全員が凍り付く、老婆が放ったたったの一声。


「!?・・・どうして俺らが明日死ぬんだ?」


4人の体力は消耗はしているが、それはただの消耗である。少し休めば全回復するような状態なのだが・・・

すると老婆は、再び口を開く。


「・・・お前さんら、あの『呪い』に掛かっているの。」


「え、呪い・・・?」


「そうじゃよ、『呪い』じゃ。あの森の、な。」


あの森・・・とは、おそらくバンダルスの塔の森を指しているのだろう。確かにあそこでは世にも奇妙な出来事が連続で起こっていた。


すると、アリナが何かを思い出したようで、


「ッ!?それってまさか・・・!!」


「?どうしたアリナ?」



「聞いたことありますッ!!これは『幻撃(ゲンゲキ)』ですッ!!」



――― 幻撃(ゲンゲキ)

幻が対象者に対して引き起こす経過性ダメージである。

幻撃を喰らった対象者は、その幻魔に段々と体力を削られていく。そして一日後には確実に死に至るという、とても恐ろしい呪いだ。

経過性というのは、体力をじわじわと削られていく類のものであることを指している。


「幻撃の呪いを解くにはなにしたらいい?このままじゃ明日には死んじまう。」


「それには『金化の聖水』が必要です。あまり出回っていないので入手は難しいですが・・・」


まるで光って見える程の色をした聖水・『金化の聖水』。あまり出回っていない代物で、さらに一本10000ゴールドと、聖水の割に破格の値を張っている。


「あ、私その在り処多分分かるよ?」


そういったのはミオンだ。


「分かるのか?どこにある?それは一度言ったトコか?」


「うん。一度どころか結構泊まってる場所だよ。」





そしてしばらくして、ミオンとアリナが移動呪文で帰ってきた。


「よし、これが金化の聖水だよ。まぁ40000ゴールドは痛い出費だね。」


「それってどこにあった?」


「大聖堂だよ。」


二人が行ってきたのは、ペルカトレ大聖堂がある神官の街・レントヴィン。聖堂にはほぼ全ての呪縛解放の道具がそろっている。以前ミオンはこの聖堂に訪れた際、ちらっと見えたのがこの金化の聖水だ。


「この聖水を身体にかけるの。全身にね。」


「そうですよ。ですからレイさんは早くあっち行ってください!」


「は?何でおれが行かなきゃなんだよ?」


「当たり前ですよ!身体全体に掛けるんですから!!」


・・・!

レイはこれから起こることを察知したようだ。

レイはこの前より強く放っても、まだ精神DTであることには変わりはない。


「な、なるほどッ・・・じゃああっち行ってるわ///」


「え、レイさん・・・?」


(・・・なんでそこまで顔赤くしてるんですかッ!?全く似合わないんですけどッ!!)


レイは恥ずかしくて3人を見ることが出来ない。心の中のアリナは必死に羞恥と笑いをこらえる。

だが勘違いしないで欲しいのは、決して全裸になるわけではないということだ。詳しく言うと、上半身、下半身の順に服を脱ぎ、それぞれ聖水を掛けていくというスタンス。

普通の人なら耐性である程度耐えられるほどのはずが、精神DTレイ=ベルディアには耐えられない。


そんなレイに、とある人物は全く容赦しない。


「え~?レイくんも一緒にやろうよ~?」フリフリ


デフォルト天然娘・ミオンの、天然台詞発動ッ!!YU・DE・DA・KO再び!!


「ちょ、ちょちょちょちょちょ!!!????////////」

「お姉さまッ!?」

「レイもいっしょにやろーよー?」


シェリーもミオンに便乗・・・


「ちょ、お姉さまッ!それはいくらなんでも・・・!!」


「えッ?なんで?」


さすが天然、分かっていない。

アリナはミオンの耳に事の全てを小声で伝える。


「それってレイさんにお姉さまの裸!見られちゃうんですよ!?」コソコソ


「え・・・えぇッ!?/////」


ミオンはことを理解したようで


「そ、それはちょっとはずかしいかも・・・////」カアア


しだいに顔を赤らめ、最終的には顔をうずめてこちらも『ゆでだこ』。


「れ、レイくんやっぱあっち行ってて・・・///」


「お、おう・・・///」


眼をそらしながら返事するレイ。


「レイさん変なことしたら許しませんよッ!?」

「大丈夫だお前には興味ない」キリッ

「ッ!?それはそれで腹が立ちます・・・!!!」




そして4人とも浄化完了。村の外に誰もいなかったお陰で、難なく聖水を掛けられた。

ちなみにあの老婆は、時間が経つうちに見失ってしまった。


「・・・よし、全員大丈夫みたいだな。」


(さて、宿行くか・・・)


レイは先程老婆が言っていた地下階段へと向かう。が・・・


「・・・あれ、地下階段は?」


レイたちの目の前にあったのは宿屋の地下階段・・・ではなく、ただの不気味な墓地だった。そして先程まで見えなかった建物たちが、今は奥の方にくっきり見えている。宿屋の看板も見えた。

これがバンダルスサイトの本当の姿、だろうか。幻撃呪縛解除で、あの幻もかき消されたというのだろうか。


どちらにせよ、幻撃ですり減った体力を、一刻も早く回復させたい。


「・・・まぁ取りあえずあの宿行くか。」




そして一夜が明け、村は朝を迎えた。

一応だが全員幻撃による呪いで死んでいないかを確認し合い、今はこの村で一日自由行動といったところだ。


(あの森についてもう少し情報が欲しい・・・)


レイは村の道具屋へと向かっている。

この世界で、地域の事情について一番知っているのは村長・町長・国王などではなく、教会や道具屋なのだ。

教会はその地域の特産品なども販売している場所で、道具屋とはその地域で役立つと思われるアイテムを売っているケースがほとんどだ。


この村には教会がないので、もう一方の道具屋へと向かっているのだ。



カランカラン・・・


「いらっしゃい!・・・おや、この村に旅人とは何か月ぶりだろうねぇ・・・」


店主は冒険者姿のレイを見るなり、少し驚いた表情を見せた。そういえば宿屋のおばちゃんもこんな顔してたな。


おそらく数か月の間、ここを訪れた冒険者は幻撃呪縛を解けなかったのだろう。

幻のバンダルスサイトを見て、真の姿を見ぬまま呪いで死んでしまったのだ。しかし呪い解除自体はそこまで難しくはない。死んだ冒険者全員は、これが幻撃によるものだという所まで行きつくことが出来なかった者たちだ。


「あぁ、一つ聞きたいことがあるんだが・・・」


「お、どうした?」


「バンダルスのあの森を進むにはどうしたらいい?それが知りたい。」


あの森さえ突破出来れば塔にたどり着ける。森が想像以上に厄介だったのだ。


「う~ん、その情報は少しばかりこれがかかっちまうんだよなぁ・・・」


店主はそう言って、人差し指と親指をくっつけた手を小さく振っている。やはり金か・・・


「・・・いくらだ。言い値次第で払ってやる。」


「そうだなぁ・・・」


店主はレイの姿をじっと見る。そしてふとある箇所で動く眼が止まった。


「・・・珍しいモノ持ってるねぇ。それはおそらく『竜王の剣』、進化した三聖器の一つだな。」


「これは無理だ、やらん。」


「いやや、そんなのいらないぜ。本人に以外はまったく使えない代物だしな。」


「・・・じゃあ他で頼む。」


店主は少し考えこむと、


「・・・いや、モノじゃなくていい。俺が出すクエストを受けてほしいんだ。」


「クエスト?でもここにギルドはないぞ。」


「違うよ、そういう意味じゃない。単なる俺の依頼だ。その報酬として、情報とアイテム一部を前払いってわけ。」


「・・・内容は?」


「バンダルスの塔・・・いや、バンダルスの祠に眠るっていわれている『神格の砥石』を持ってきてほしい。」


『神格の砥石』とは、この世に存在する全ての武器の刃を研いで能力をアップさせるアイテムだ。対象武器は全部で、レイが持つ竜王の剣も例外ではない。

『神の力』で研いだ刃は輝きと鋭さ、秘めるパワーを増し、武器としてさらなるレベルアップが望める。


「もし成功したらお前さんのその剣をタダで、しかもお前さんの目の前で研いでやろう。どうだ?」


「・・・それは店主に何の利益があるんだ?」


「バカいっちゃいかんよ。あの砥石が研げる武器は『刃を持つもの全て』だ。それで研いだ武器は高く売れるんだよ。」


「なるほど、ビジネスってことか・・・」


「どうだい?」


本来予定していたバンダルスの塔散策にがっちり当てはまり、さらに手持ちの武器もレベルアップが出来る。レイたちにとってこの話は一石二鳥だ。なんなら今からでもバンダルスの塔に・・・


あれ?店主さっき何て言った・・・?


「・・・バンダルスの祠って言ってたけど、それって?」


バンダルスの『塔』ではないのか。ここから森の方向に見えるものは、高くそびえたつあの塔なのだが。


「あぁそれか。まぁ行ってこれを使ったら分かるよ。」


店主はとある魔道具を机上に出した。ステッキの形をした、薄い青色の魔道具だ。


「これは『オベロンステッキ』だ。これを前に掲げると呪文『オベロン』が発動して、あの幻覚を解くんだ。」


全異常解放呪文『オベロン』とは、目の前に掛かる全ての異常をかき消し、元の通常の姿に戻す最上級呪文の一つ。

しかしこの呪文が効くのは魔物ではなく、あくまでフィールド全域だ。

ちなみにこのオベロンステッキ、お値段はなんとッ!!145000ゴールドッ!!


「これをやろう。これで森は行けるはずだ。ちなみに面白いモンも見えるぜ?」


レイはステッキをカバンにしまい、




「その依頼、俺達が受けよう。」





これでバンダルス攻略は、かなり捗りそうだ。


次回投稿日;5月9日

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