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とある青年のレベル上げ   作者: あいうえおさん
第4章 幻影の向こうに映る世界 《キャンバス・フェード》
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レベル37 幻撃 《ミオン&シェリー》


「バンダルスの塔・・・?」


シェリーはあの道具屋での冒険者話を皆に伝えた。


「うん、何か凄いお宝が眠ってるみたいだよ。でも何だか不思議な塔だよねー。」


「私もその塔については聞いたことがあります。しかし色々と噂があるようで・・・」


「例えば?」


「はい、或る人は『塔なのになぜか下へ延びる階段しかなかった』と言い、また或る人は『塔の扉を開けたら中は酒場だった』と言い、まったく真相がつかめないダンジョンです。」


先ほどの道具屋2人も、同じようなことを言っていた。


「見事に食い違ってるなそれ・・・」


「はい、そしてその誰もが、『塔の中で段々と眠気が襲って、起きた時には知らない野原にいた。』と言っていたらしいです。」

「わお」

「どこかで聞いた御伽噺みたい。」


まるで狐に化かされたような話だ。

外からははっきり見える塔の形なのに、中の本当の光景を見た者は、話を聞く限りいないだろう。

塔の外観もしくは内装どちらか、幻影でも映し出しているのだろうか。


「・・・アリナ、幻影を見せる類の魔法ってあるか?」


「え、魔法ですか?・・・まぁ『幻影魔法』という類自体は存在します。しかし、相手に幻影を見せるという意味ではなく、あくまで明暗を使った攻撃魔法という位置付けです。一つに私が使う『光魔法』があります。」


幻影魔法は明暗を利用した攻撃魔法、主に二つに分けられる。一つは『光魔法』、もう一つは『闇魔法』だ。ディモーネやシル・ガイアが使ったあの『デスヴェルム』という魔法は、闇魔法の一種だ。


「しかし『幻影魔法』は、幻を見せる類の魔法ではないです。あくまで光と闇に魔力を込めて発せられる魔法です。幻を見せる手段は、おそらく魔法以外の手段なのかなと・・・」


(おそらく塔にいる何者かが幻影を見せていると思うが・・・そういう類の呪文はないのか・・・)


「・・・どうするレイ?そこに行く?」


そういうシェリーの身体は、顔以外はバンダルスの塔へと向いている。


「あぁ、少し興味が湧いたしな。明日はそこへ行こう。」


「シェリーはその塔の場所とか分かりますか?」


「ううん、あんまり分かんない。西にあることしか聞いてないし。」


道具屋2人の会話では詳細な情報をつかめなかったようだ。

すると台所からミオンが出てきて、


「場所ならわかるよ。この前街で地図買ったから。」


「みお姉聞いてたのか。明日はそこに行く予定だけど、大丈夫か?」


「うん。私はリーダーのレイくんに従うって言ったからね、問題ないよ。」


奥からシチューの匂いが漂ってくる・・・と思ったらもう出来たようだ。


「・・・じゃあ予定も決まったし、そろそろ晩飯にするか。」


「そうですね。お腹すきましたし。」

「やったー!」


晩御飯を台所から持ってきたミオン、シェリーが我先にとお皿を持ってミオンのすぐそばへ。

当パーティーの食事は、学校でよく見る給食方式。


「ねー早くちょーだい!」


シェリーから差し出された空のお皿を前に、ふとミオンの動きが止まった。

・・・その瞬間、どことなく食卓の空気が重くなったような。


「シェリーちゃん、ところで一つ聞きたい事があるんだけど。」


「へ?」


するとミオンは急にジト目になり、



「何で今日のニンジンはあんなに小さかったの?」


「えッ、えええ!!??」


「「(あー終わったな)」」


シェリーは先程の買い出しで、一番小さいサイズのニンジンを一本だけ買った。

しかし昨日はミオンが買い出し当番で、普通サイズのニンジンがあるのを知っている。

一応渡したメモには『にんじん3本』と書いてある。


「まさか『嫌いなものだから小さいのを買った』、とかじゃないよね?」


怖すぎる、みお姉の笑顔の尋問。あんなに笑顔なのになんであんな雰囲気出せるんだよ。

普段笑顔な人ほど、怒らせると怖いものはない。


「ううう売り切れだったんだよッ!!だから小さいのを仕方なく買って ―――

「そうなの。ならいいけど。」


ミオンの表情がスッと戻る。あぁ怖かったわ~

するとミオンは台所へ戻ってしまい、そして台所にある食糧庫から何かを取り出してきた。


「ん、どうしたみお姉・・・?」


「いや、今日のシチューはニンジンたっぷり入れたんだよってこと。」


そういうミオンの両手には、なんと大量のニンジン。

おそらく昨日のうちに買いだめしていたもののようだ。

こうなることを見越していたのだろうか。いずれにせよ普通に怖い。

シェリーの顔が段々青ざめていく・・・瞳に映るニンジン。じゃなくてミオンの顔。


「あわわわ・・・!!??」


「心配いらないよシェリーちゃん。たぁ~っぷりとニンジン入れておいたから。」


「えええええ!!!???」


そして4人の前に運ばれる今日の夕飯。やっぱりニンジンがそれなりに入ってる。

給食方式なので、もちろん残り2人も大量のニンジン。


(しかもシェリーの分だけやたらとニンジン多いな・・・)


(シチューのルウの中にもニンジン隠して入れてありますね・・・というか具の殆どがニンジン・・・)


シェリーはほぼ涙目。


「さぁ食べようか!あ、一つでも残したら明日の朝ご飯はナシだよ、気をつけてね。」


「「(お、鬼だ・・・)」」




結局全員綺麗に食べた。

そしてシェリーのニンジン嫌いはさらに加速していったとさ。はいおしまい。







~~~~~

そして翌日の朝。


「みお姉、道とかルートとか行き方とか色々任せた。」


「はーい、道とかルートとか行き方とか色々任されたよ~。」


「それ全部同じ意味ですけど。」

「うるさいロリガキ」

「誰がロリガキですかッ!?」


(・・・もうこのやり取りもデフォルトだね~)



塔周辺の魔物は全てのステータスがここより高めなので、今まで以上の用心が必要だ。さらに塔周辺の森に潜む魔物の中には『即死呪文』を使う魔物まで出てくるらしい(アリナ調べ)。

『即死呪文』とは、相手に呪いの言葉を暗示し、確率で相手の息の根を止めるという恐ろしい呪文。

ちなみに即死呪文的中確率を低くするには聖水を持っておくといいらしい。ごくまれに、その聖水が身代わりになってくれる時があるらしい。

聖水が身代わりになった瞬間を、アリナは一度も見たことがないらしい。


「よし、行くか。」



そして4人は、謎に包まれるバンダルスの塔へと旅立った。






さて、ここは塔までの道中。

4人は塔を囲う森の入口まで来ていた。


「何か雰囲気あるな・・・」


「雰囲気ですか?どんな雰囲気ですか?」


「ん?あぁ、何か不思議な魔力を感じるっつーか・・・」


「確かに・・・魔力は分かんないけど、あの木とか形が不気味だね。まるで私達を飲み込もうとしてる感じ。」


バンダルスの塔を囲うこの森は、つい100年前までは平野だった場所。もっと言えば帝国西方のマールクレイティア平野の一部だった場所。

目の前に佇む巨大な森からは、たった100年前は平野だったことなんて想像すらできそうもない。

塔周辺の歴史自体にも、不可解な点が多く存在するということだ。


「まぁここからは用心していけよ。何があるか分かんないから。」



こうして4人は森の中へと入っていった。

いや




()()()()()()()





いざ森の中に入ってみると木々の異常な生い茂りで、昼近くというのに光がほとんど届いていない。よってもちろんだが、あの塔の場所も中に入ると分からない。レイは入る前に見た塔の場所を思い出しながら進んでいく。

中は結構ヒンヤリしていて、雰囲気と風景に混じって不気味さは軽く基準越え。俺だったら心霊スポットここ紹介しちゃうね。


「あ、さむ。」


「レイくん大丈夫?」


今の4人の陣形は、レイとアリナが前方を向いて前からの強襲に備え、その後ろにシェリーとミオンが後ろからに備えて後ろ向きというものだ。かなり用心している。

進むスピードもこの陣形のせいか、普段の歩くスピードよりぜんぜん遅い。


「アリナは左方向頼む。シェリーとみお姉はどんな感じだ?」


「こっちはまだ何ともないよ~。」

「レイくん私の方も特にはないかな。」


「そうか。何かあったらすぐいってくれ。」


「うん。」

「了解。」


4人はさらに森の中を進んでいく。




この森を進んで30分が経つ頃、未だに魔物らしきものとは出くわしていない。あまり音が響かない作りのおかげか、それともそのせいか。動物の痕跡がどこにも見当たらない。

こちらからの物音が聞こえにくいのは助かるのだが、この先にある何かを恐れて魔物すら寄り付かない・・・といった理由だったらどうしようか。直ちに撤退したい。

しかし目の前は森とそれを構成する樹木のみ。姿はまだ見えてない。

しかしどちらにせよ、この先に何かいることは確かだ。先程一回だけ、行く先で物音が聞こえた。


・・・しかし本当に異様な森だ。音はあまり響かず、さらに結構フカフカな土の上を歩いているはずなのに、


まったく足跡がついていない。



「なぁ、何か見つけたか?」


「いえ、私は何も。」


応答したのはレイのすぐ後ろにつくアリナ。

ただその返事からどことなく、『でもこの先には何かいる気がします。』と聞こえた気がした。


「そうか。なぁアリナ、ここの森から特殊な魔力とか感じないか?」


「レイさんは感じるんですか?残念ながら私はそこまでの能力はないのでお答えできません。」


「そうか。実は俺もはっきりしたものは感じ取れていないんだ。勘ってやつだしな。」


「勘ですか・・・でもあながちいい線突いた勘かもしれないですね。」


「あぁ、何か来そうだな・・・」




「・・・あれッ」


ふと気づく。


「みお姉とシェリーは?」


足音が自分とアリナ、二人しか聞こえない。


先程からアリナの声しか聞こえない。


「おい、みお姉?シェリー?・・・いるなら返事してくれ。」


・・・しかし返事は聞き取れない。そもそも返事がない。


「・・・おい?どうs ―――


レイは二人を見ようと後ろを振り返ると、


「・・・あれ?いない?」




すぐさまアリナも振り返る。


「あれ・・・ホントですね。途中ではぐれたのでしょうか。」


ミオンとシェリー2人は後ろ向きで進んでいたので、どこかではぐれてしまったのだろうか。

しかしこの森ではぐれることは結構危ない。


「・・・とりあえず進んでいこう。いざとなればこのエスケイプロープを使えばいい。あっちにも持たせてあるしな。」


「そうですね。」


引き返すという選択肢は、もう二人に残っていなかった。

逸れてしまった訳がないと思うと同時に、次第に2人の足取りは重くなっていく。




そしてさらに進んでいくと、道の先にとある何かを発見。


「お、やっと何かあったぞ。」


「ホントですか?早速向かってみましょう。」


二人は足早にその場所へと向かっていく。というのも、ここ4時間で初めて見つけたキーポイントなのだ。

段々近づいて行くと、そのものが何なのかが分かってくる。


「・・・あれは亜人の姿だな。誰かいるらしいぞ。」


この森に入って初の生命体。流石に少しほっとしたようだ。


「確かに座っている姿が確認できますね。ちょっと話しかけてみましょう。」


・・・さらに進んでいくと、その人物も段々と分かってくる。


「なぁ、あれってシェリーとみお姉じゃないか?」


「・・・確かにですね。あの弓はシェリー、あの杖はお姉さまのものですね。」


「なんで後ろにいるはずの二人が俺達の前にいるんだ?」


「まぁとりあえず合流しましょう。」


束の間に得た安心感が、重くなっていた足取りを徐々に軽くしていく。

しかし、安心感はそのまま恐怖に変わる。



「おい、ここでなにしt ――――



二人の目の前にいた者は・・・



「ッ!?なんでッ!!??」

「お姉さま!?シェリー!?どうしたのですかッ!?」







血を吐いたまま静止する、二人の死骸であった ―――


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