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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第3章 亡き母を求めて 《クラシア=ヴェルデ》
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レベル35 支え 《マイア=クラシア》


レイは持てる魔力全てを解き放ち、今はオーバーリリース状態。

剣を振るうどころか立つことも出来ない。


「ハァハァ・・・やったか・・・!?」


地面にうつぶせになりながら前方を確認する。





『コノ・・・!!!!!』




突然の振動、(おぞ)ましく響く声

まさか・・・


「ウソだろ・・・!!??」



「まだ立てるのかッ!?」




シル・ガイアの身体はあらゆる箇所が損傷でボロボロ、しかしあの極大呪文をもろに喰らったはずなのに、シル・ガイアはまだ立っている。


「ば、バケモンだ・・・!!!」



シル・ガイアは損傷したはずの左手を前方に掲げ、魔力をそこに召喚し始める・・・



『キサマラ全員消シテヤル・・・!!!何モカモ全テ!!!』



シル・ガイアの姿は、もうほとんど魔神のそれだ。怒りが中で爆ぜてしまったのだろうか、その焔王妃の中から完全に『松嶋芽衣』が消えている。

怒りでシル・ガイアが松嶋芽衣を完全に掌握してしまったのだ。



「まずいッ!!みんな逃げろッ!!」


レイはみんなに避難の指示、しかし間に合わない。



『消エロッ!!!!!!』



魔力を解放しようとした、


その時。





――― 待って、シル・ガイア ―――





どこからとなく、突然不思議な声が室内全域に響き渡る・・・・

優しくて、そしてどこか悍ましい声 ――――



――― まだその力は、君には早いよ ―――



『コ、コノ声ッ・・・!!??』



次の瞬間、突然天から闇の波動がシル・ガイアに放たれる ―――




「何だッ!?」

「「「「!?」」」」


闇の波動はシル・ガイアが纏う焔王妃のローブをはがし、姿を『焔王妃』から『人間』・松嶋芽衣に、あっという間に戻してしまう。


『・・・この声、まさか!?』



――― もう一度こっちに戻っておいで ―――



主が不明な声は、戻った芽衣に帰還を促す。




『・・・はい、了解しました。プフ様 ―――



そして芽衣は自身の身をゆだね、闇の中に姿を消した。






――― ・・・また会おうね ―――




――― 神殿、で 





何者かの突然のささやきで、シル・ガイアはこの場から姿を消した。

声だけのその者は、声だけでも強大な闇のオーラを感じるほどの存在で、あのシル・ガイアを一瞬で元に戻す力まで持っていた。

あの存在は、一体何だったのだろうか。




「ねぇ、これでおわり・・・?」


うつ伏せのレイに、シェリーが横から訊いてきた。


「・・・あぁ、そうだな・・・・


先程のシル・ガイア妃はこの場からいなくなり、今まで国王に取りついていたディモーネももういない。

立ちあがって周りを見ると、国王は立てるまで回復し、王妃や王女達も無事のようだ。

まぁ城は戦闘でボロボロになっちまったけど、守るものは守れたはずだ・・・

だから・・・



「・・・これで終わりだ、シェリー。」


「・・・そっか、じゃあ早くしないと・・・!!」


シェリーはよろよろの態勢で立ちあがり、国王達がいる方向へ歩き出した。

シェリーはこの時のために戦ったんだ。ただ一つの望みのために、


母に会うために ―――



「王妃さん、魂の光はありますか・・・?」


「はい、光の方はこちらに・・・ですが・・・」


王妃は言葉を濁す。そしてシェリーの前に、粉々に砕け散った帝国国宝を差し出した。


「・・・え」


シェリーは、言葉を失う、当然だ。

シェリーはその壊れた物が何なのかは分かっている。

壊れたことが、どんな意味を成すのかも・・・


「おそらくこの鏡であなたの亡き母を映すはずだったのでしょう。しかし鏡は先程の戦闘で効力を失い、ついには壊れてしまったのです。」


「そんなッ・・・」


「・・・申し訳ありません。あなたの母を奪ってしまった罪を報いるために何とかご用意をと・・・。あなたの母が我が国の失態で亡くなってしまったことは聞いていました。」


「」


「あなたにとって我が国は憎い存在であることは承知しています。しかしそんな国を救うために尽力してくださったあなたに、私達は何も返せませんでしたッ・・・・!!!」


「申し訳ありませんッ・・・!!!!」





王妃は、シェリーの前に頭を下げて謝罪した。

しかしシェリーには、そんな王妃の姿が見えていない。


『母と会う』、それだけの理由でここまでボロボロになってまで、国を救ってまで・・・

命を懸けてまでしてきた

しかし、最後の最後で



その願いは砕けてしまった





シェリーが、崩れる ―――





虚無の表情の眼から、ただ涙だけが零れ落ちる

涙だけが、流れる


ゲリュオンはシェリーの傍によると、


悲しみのシェリーを、優しくそっと包み込む ―――




――― ・・・スマナイ ―――




ゲリュオンの青い目から、透明な雫がこぼれ出る



守護獣が流した、神の涙


2つの涙は、ただ無情に瓦礫に下にこぼれていく



そして



――― シェリー・・・!!! ―――





2つの涙が魂の光に触れた



その瞬間





!!!!!!!!!





「ッ!?」

――― ッ!? ―――





二人の思いが強く共鳴して、




目の前に、幻影を映し出す ――――






~~~~~~


ここはシェリーだけの空間

まわりには何もない、誰もいない

一人の空間



「?ここは・・・?」




シェリー・・・  シェリー・・・!!





どこからとなく不思議な声が聞こえる


その声は、確かに聞き覚えのあるもので

今までずっと聞いてきた唯一の声で



「・・・!!」



今は失ってしまった、



母の声 ―――




「ママッ!?どこッ!?どこにいるの!?いるならこっち来てよッ!?」


シェリーは黒の空間の中で、必死に四方を見て母を探す



そして



――― シェリー、ここだよ ―――



シェリーの前に、姿を現した


シェリーの亡き母、マイア=クラシア




「ママ・・・ママッ!!」



やっと、見えた

やっと、聞けた


やっと、会えた ―――



――― 強くなったね、えらいえらい ―――



マイアは涙を流すシェリーを、そっと抱きしめる


久しぶりに感じた、母の温もり

久しぶりに触れた、母の手・腕


親子で交わす、最後の会話




――― ごめんね、急にいなくなったりして ―――



――― またママの意地っ張りだね、えへへ ―――



――― でも、シェリーがママのために戦ってくれたこと ―――




――― とっても嬉しかったよ ―――




シェリーは母の腕の中で、

あの日から、ずっと会いたかった母だから


離したくない・・・

もっと一緒にいたい、話したい・・・・



しかし、その時間は訪れる ―――




――― ・・・ママ、そろそろ行かないと ―――



マイアは、抱きしめていた腕を緩めて

シェリーをゆっくりと離す


「ママッ・・・行っちゃいやッ・・・!!!」



――― ごめんね、ママももっといたいけど・・・ ―――



「じゃあいればいいじゃん!!もっとここにいてよ!!私を一人にしないでッ!!」


シェリーはマイアを離さない、泣きながら強く抱きしめる



――― ありがとう、でもシェリーはもう一人じゃないでしょ? ―――



「・・・え」



――― 今のシェリーにはお仲間さんがいるじゃない ―――



「でも・・・でもッ・・・!!!」




――― ママはいないけど、ずっとシェリーを見守っているよ ―――




――― ママ思うんだ あの人たちと冒険って色々面白そうだなぁって ―――



――― そんな人たちと冒険できるなんて、ママはシェリーが羨ましいな ―――



「・・・」


マイアはシェリーの頬を手で添えると



――― ママは見守ってるよ だからシェリーには外の世界を見てほしいな ―――



そう言ってシェリーの頬の涙を拭ってあげた


「・・・ホント?」



――― うん ママはシェリーのママだからね、絶対に見守ってるよ ―――



「・・・分かったよ。ありがとうママ!」




――― うん!頑張ってね ―――






――― シェリー







~~~~~~


その時間、一粒が光って消えるほどのわずかな時間

誰もに流れる、とある一瞬の時間


しかしその時間で流れた涙は



一瞬では止まらない



シェリーはその場で泣いて、しかしその表情はなんだか明るくて

だってママが見守ってくれるから


ちゃんとお別れした もうママはいないけど



仲間が、いるから ――― 





「シェリー・・・大丈夫、か・・・?」


レイが心配げな表情でシェリーを見やる

もう、私は大丈夫だよ


シェリーはこぼれる涙を拭って




「・・・これからも宜しくねッ、みんな!!」










第3章 完


次回投稿日;5月5日

次は第4章です、ちなみにこの後の一話はお決まり番外編です。

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