レベル30 蒼騎士 《フェンリル》
『スキル;「プレ=ヴォルガン」が発動しました。』
シェリーの中に眠っていたスキルが今、発動する。
「青獣騎士・・・!・あの少女が・・・!?」
シェリーは身に蒼白を纏い、守護獣の動きと共鳴する ―――
『ッ・・・!?獣騎士だ、と・・・!?』
ディモーネの身体が、突如硬直し始める。
ディモーネは獣騎士となったシェリーの姿におびえだし、さらにゲリュオンの青い眼光から一歩も動くことが出来ない。
ゲリュオンの潜在能力 『ゴッドゾーンプレス』 ―――
「・・・行くよ、ゲリュオン。」
シェリーの言葉で、ゲリュオンはディモーネの元へと駆け出した。
シェリーは持つ矢を上空へ放り投げる。ゲリュオンはその矢に青のスペルを撃ち込んだ。
『ッ!!??来るッ・・・!!!!』
シェリーはゲリュオンの背中から上空へ飛び出す。
ゲリュオンはディモーネに蒼天の波動を放った。
!!!!!!!
『なッ・・!!??』
ディモーネの霊体が波動で凍り付いていく。ディモーネ、身動きが取れない。
「れ、霊体の魔物をいとも簡単に追い詰めるなんて・・・見たことがありませんッ・・・!!!」
本来実体のない敵は物理攻撃などでとらえることが出来ないため、倒すのが困難とされている敵なのだ。さらにディモーネのような寄生型霊体魔に関しては、ダメージを与えられるのは寄生時のみなのだ。
ディモーネを倒すには寄生時に攻撃するか通常時に浄化するかのどちらかなのだが、浄化魔法はほとんどの冒険者が覚えていない最上級魔法だ。浄化魔法を覚えている王妃でも、その消費MPの大きさ故に今は打つことが出来ないのだ。
しかしゲリュオンのそれは、それをあざ笑うかのように覆す。
『う、うごけねぇ・・・!!???』
「シェリー!!」
上空のシェリーは空高く舞い上がり、蒼白の矢を弓に収めた。
「やあああああ!!!!」
シェリーはディモーネに矢を放った。
「神蒼閃!!!!」
青い閃光、瞬きするよりも速く
ディモーネの核を貫いた。
『ッ!!!!????』
シェリーとゲリュオンはすぐさまディモーネの眼前から姿を消す。
シェリーたちはディモーネの上空に光速で飛び上がる。
『ッ!!?いねぇッ!?』
シェリーは上空から矢を放った。
「神蒼閃!!!!」
ッ!!!!!
矢はディモーネの真上を貫通。守護獣の覇気を纏った聖矢は実体のない敵をも貫くのだ。
「このままいけばッ・・・!!」
「倒せるかもしれねぇ・・・!?」
シェリーはもがくディモーネの正面に場所を移し、そっと弓を引いていく・・・
――― 行ケ シェリー!! ―――
シェリーの矢は光を発して輝きだす。
シェリーは矢を放った。
「輝空閃ッ!!!」
輝く一閃の矢が放たれる。
『くッ・・・!?』
光の矢は輝きとうなりをあげて迫りくる。
「「「行け~~!!!!」」」
『~~~!!!!』
そして矢がディモーネの核に来た、
その時 ――――
――― 何をしている ディモーネ ―――
突如ディモーネの前に暗黒の結界が。
うなりを上げた光の矢はその結界に入るなり、すぐに光を失って失速した。
今はディモーネの目の前に、ただ矢が落ちているだけである。
「ッ!?」
「だ、誰ッ!!??」
予想外の事態に、現場は少し混乱状態。
そして次の瞬間、誰もがその禍々しいオーラを察知して、皆が一斉に上を向いた。
そこには、
「・・・ッ!?」
今までの敵とは格別のオーラを放つ、初見の姿があった。
ただしそれの『顔』を覗いては ―――
その正体は上を向いたレイを見つけると、あの時の笑顔を見せた。
――― 久しぶりだね、ベルディアくん ―――
その声
音は同じなのに、あの時の声とは思えないほど狂気に満ちたもので
その姿
あの時のものとは想像できないほど禍々しく、恐ろしく
レイのイメージとはあまりにもかけ離れていた。
その者、名を
松嶋芽衣 ――――
「めいさん・・・!?」
血相を変えて驚くレイの顔を見ると、芽衣は冷徹の声を投げかける。
『松嶋芽衣、か・・・直にその名はなくなるよ、ベルディアくん。』
「え・・・?」
『私の名前はもうすぐこんな名前になるの。』
次の瞬間、芽衣の漆黒のオーラが一斉に溢れ出す。
ディモーネのそれとは、桁をはるかに超えたオーラ
常人では耐えきれない、死のオーラ
芽衣は不適な笑いを浮かべて、自分の名を告げる
松嶋芽衣の新しい名前
『 “焔王妃” シル・ガイア ――― ってね
次回投稿日;4月28日