レベル2 転生者 《ニホンジン》
「ここが外の世界・・・空が広く見える・・・」
レイは今、村の外にいる。
本来外出を認められていないレイにとって、この事がバレると、村の掟に逆らった罪として20歳まで外出そのものを禁止されてしまうのだ。もしその20歳以内にランク1になったとしても成人証はその年齢まで所得不可能になるので、いち早く冒険に出たいレイにとって大きな遅れになってしまうのだ。
しかしレイ本人は、この掟を理解していない。
「木刀オッケーで、皮製の鎧のオッケーで、一応飯もオッケーっと・・・。」
この付近の夜は、比較的魔物のレベルが高めのエリアである。本来この地域の探索において、最適ランクは最低でも7以上の地帯だ。レイは無論だが、ランク1のソリューでもレベル不足になる。ソリューが出るときは必ずランク7以上の冒険者が同伴する形をとっているようだ。
聖域付近に住むというのは、多くの強敵に囲まれて過ごすことと同意なのだ。
「お、この道って・・・ ―――
レイは右に抜ける一本の細道を見つける。
「いってみよ~・・・」
レイは細道に向かって歩き出す。
すると
ピカァッッッ!!!!!
突然レイの後ろからまばゆい光が放たれた!
「えッ!?うわッ・・・!」
光と共に荒れ狂う一瞬の突風は、レイを一瞬で奥の池へと吹き飛ばした!
「まじかッ!・・・え」ヒュウウ
バチャァンッ!!!
レイは池にドボン!!
「ウェッ!ちょッ・・ハァ、ハァ・・・ま、じで・・・!」バチャバチャ!
非常事態発生!!レイはかなづちなのだ!!
―― 大丈夫ですかッ!? ―――
風が吹いた方向から、声が聞こえた!
「えッ!?まずいッ・・・!」
脱走がバレてしまったのか、それとも村に帰る途中の村人が来たのか
どちらにしよ、レイの冒険はここで終わり
(ハァ、せっかくソリューを見返そうと・・・)
「大丈夫ですかッ!?」
ついに声の主が現れた。
が・・・
「今助けますねッ!ほら、この手につかまって!!」
(あれ・・・)
「いやァ、突然ここに飛ばされたと思ったら人が飛ばされてて・・・」
(飛ばされた・・・?)
「あ、この『飛ばされた』と前の『飛ばされた』って違う『飛ばされた』よ!?」
(ごめんそれは普通に分かんないわ)
(でも・・・)
「怪我とかだいじょうぶ・・・ってええッ!!??ドラゴンの羽ッ!?」
(この人って・・・!)
「あ、あの~、どちら様ですか・・・?」
―――― 誰だッ!?
~~~~~~~~
「・・・なるほど。ここは異世界ってことね。」
今の状況になぜか数秒で納得した感じの彼女は、村人が着るような服を着ているわけでもなく、村人のようにドラゴンの翼が生えてるわけでもなく
その姿は、まさしく『人間』だった。
グラド大陸に、『人間』という種族は存在しない。
『飛ばされた』という単語の意味を、納得はしてないが理解はしたようだ。
「あの~、それで~、あの~・・・」
「はい?というかあのあのうるさいんだけど・・・」
「あ、すみませんッ。あの~、人間さんのお名前って・・・」
「私?私は松嶋 芽衣っていうの、宜しくね。君は?」
「お、俺ですか・・・俺はレイ=ベルディアって言いま ―――
「えええ~!!!異世界みたいな名前ッ!!」
「・・・」
「・・・?」
(・・・なんで名前だけでこんなに?)
(でも『まつしま めい』って言ってたなこの人。やっぱりここの人じゃないのか・・・)
「ねッ、ベルディアくんって呼んでもいい?」
「へッ?あ、まぁ・・・好きに呼んでくれたら・・・(一応名前は“レイ”のほうだけど・・・)」
「じゃあ宜しくねベルディアくん!」ニコッ
『ベルディアくん』と呼んで微笑む姿は、ほんの一瞬だけレイを赤らめさせた。
赤い長髪のストレートロングに、凛とした顔立ちからは思いつかないほど綺麗な笑顔は、たとえ美人の定義が分からない人でも容易に分からせてあげられるほどの威力を持っていた。
「あ、じゃあ俺はあなたを何て呼べば・・・」
「私?私学校では普通に『めい』って呼ばれてたよ?」
「え、学校って何ですか?」
「あ、あぁ~そうだったね、ここは日本じゃないよね・・・。」
「え、にほん?」
「あ~気にしないでベルディアくん。学校っていうのはね、いわゆる訓練所みたいなものなの。」
「あ、なるほど。」
「でもこの世界の訓練所みたいに、体術や剣術を習う所じゃないのよ?学校は、『勉強する』場所なの。」
「へぇ~そうなんですね~」
(・・・勉強ってなにっていいたいけどめんどいからやめよ)
「・・・まぁ、じゃあ『めいさん』って呼びますね。」
「うん、わかった。」
レイがドボンした池の畔にて
「ところで、めいさんこれからどうするんですか?」
「ん~そだね、ていうか転生された直後なんて何したらいいか分からないよ。」
突然レイの前に召喚された松嶋芽衣は、日本から『転生』という形でレイの目の前に立っている。当然だが、芽衣はこの世界で戦うための武器を持っていない。
「・・・でしたら、この先行ってみませんか?」
「先って?」
「あぁ、この森を抜けてみようってことです。」
「ん~、他にすることないし・・・。うん、じゃあ行こっか。」
芽衣はその場を立ち、お尻についた土を払うと
「さぁベルディアくん、行こっか。」
「は、はい!」
レイと芽衣は態勢を整えると森を抜けるために、さらに先へと進んでいった。