レベル25 下剋上 《アンチ・ウォー》
そして翌日の朝。
シェリー含めた4人は戦のため、準備をしている。
「なぁシェリー、今から城に乗り込む前に訊きたいんだが、戦えたりするのか?」
「えッ、私?私はあまり・・・」
「・・・そうだよな。」
(これも駆け出しの俺みたいなパターンか・・・)
「危なかったら私達に言ってね。すぐに助けるから。」
「そうですよ。私達、こう見えて意外に強いんです!!」
「えッ、アリナさんこの中で一番小さいのに?」
「なッ・・・!!」
この中で一番背が高いのはレイ、その次はミオンだ。しかし、一番背が小さいのはシェリーではなくアリナなのだ。ちなみにシェリーは11歳である。
「シェリー!よくも私が一番気にしてること言いましたねッ!?」
「えッ・・ダメ、だった?」
「いやまったく。全く問題ない。」ババーン
「お・お・あ・り・ですッ!!」ギロッ!
「ん~、でもさすがにシェリーちゃんその装備じゃあ少し危ないかもね。」
「え、そうなの?」
シェリーの装備を順にあげていこう。
まず肝心の武器!・・・それはなんと木の棒で作った自作の剣!
(ヒノキの棒かよ・・・)
そして鎧!・・・はなんとそのままの私服である。おそらく何も防御してくれないだろう。
(こ、これはさすがに・・・)
そして盾!・・・は、おなじみの『おなべのふた』である。
(ど、ド〇クエ・・・?)
「さすがにこれは戦場なめてるやつの格好だ・・・」ヤレヤレ
「えぇッ!?ダメなの!?」
「当たり前だバカ。まぁいい、装備を買うか・・・」
「あ、待ってレイ!私ゲリュオンから貰ったものあるんだ~!!」
シェリーはそういうと、部屋の奥から何かを持ってきた。
「じゃーん!!はいこれ!」
「?それは・・・」
「これはね、え~っと何だっけな・・・あッ、分かった!これはk―――
「光絶の弓じゃないですかッ!!」
「な、なんだそれ?」
「し、知らないんですかレイさんッ!?同じ代物持ってるっていうのに!!」
「えッ、そうなの?」
説明しよう。
『光絶の弓』とは、レイが持つ竜絶の剣・どこかにある天颯の鉾に並ぶ、『三聖器』の一つである。
その所有者は、守護獣ゲリュオンが服従を誓う者とされ、『青の獣騎士』の資格を持つ者とされる。
またこの武器装備による付与効果は、他の三聖器と変わらないらしい。
(三聖器の一つ・・・!?じゃあまさかシェリーもあのスキルを・・・!!)
「な、なぁシェリー。ちょっとスキル表示開いてくれないか?」
「え?うん、いいけど。」
シェリーはステータスパネルを開いて、スキル表示の画面へとスライドさせる。
「・・・はい、これ。でも詳しいこと分かんないんだ~。」
シェリーのスキルボートに表示されていたモノは、
(や、やっぱり・・・)
『スキル;「プレ=ヴォルガン」』
見覚えあるモノにかなり似たような感じのフレーズだった。
(もしかして呪文の方も・・・?)
レイは呪文表示の箇所にスライドさせる。
(お、これもそうだ・・・やっぱりこれって三聖器なのか・・・)
『呪文;レ・シャイン 消費魔力100』
「れ、レイどうしたの?さっきから私のパネルばっか見てるけど・・・?」
「いや、俺のステータスと結構似てると思ってな。ちなみに職業って何なんだ?」
「私?私はね~、これ!」
シェリーがスライドさせた画面に表示されていたのは
「『アークレンジャー レベル3』?」
「アークレンジャーと言えば魔導士と狩人双方をレベル10まで上げると解放される上級職ですよ?凄いですね!」
「へへ~ん、そうでしょ!」
「ッ!・・・やっぱり俺と同じじゃなかったわ。」
4人は態勢を整え、いざ帝国城へと向かう。
シェリーの装備も、あの弓以外は一通りそろえておいた。魔法もある程度は使えるようだ。
「よし、行くぞッ!!」
帝国まで、何時間かかっただろうか。
4人は戦闘前からかなり消耗していて、レベルは上がったものの、疲労が激しい。
「ちょっと休むか・・・。これで行くのはきつい、だろ?」
「はい、確かにこれではきついです・・・」
4人は結局クルスオードの宿屋に一晩泊まり、再び態勢を整える。
そして翌日。
4人はいざ帝国城へ参上する。
「ハッ、あなたたちは・・・!どうぞお入りください!」
「あ、あぁ。ありがとう。」
4人はささっと城内に潜入していく。
「・・・ふう、シェリーの耳とか隠しておいて良かったな。見つかってたら潜入できなかったぞ。」
「そうだね~。確かに警備は凄そうだもんね。」
「さて、先日の王室の間に行かないとですね。私達はまだこの国で『招待』されている身ですので。」
「あぁ、早くしないと。シェリーのことがバレるかもしれないからな。」
4人は足早に城内を進み、潜入から5分ほどで王室の間の前に到着。
「よし、じゃあ開けるぞ。武器は持つな。最初は話し合いからだ。」
ガタンッ・・・
レイは大きなその扉を開ける。
「・・・レイ=ベルディア、ここに参上した。今日は要件を申し出たくてな。」
部屋の中では、王が4人をお出迎え。王の座に座り、上段からまるで4人を見下すかのような姿勢で様子を伺う。
「・・・おや、そろそろ来る頃かと思ってましたよ、レイ=ベルディアさん?」
「・・・何が言いたいんだ?それじゃまるで俺達を待ってたみたいじゃあねぇか?」
「・・・そうですよ。あなたを待っていましたよ。あなた方が“あの村”に入ってから、ね。」
「ほう・・・じゃあ俺が言いたいことも分かるってか。すげぇな国王っつーのは。」
「はい。・・・まぁもう一つの判断材料としては、そこにいる妖精族の亜人がいること、でしょうか。」
「なら話が早い。俺達の要求は一つ、階級制度の廃止だ。」
「ほう、それはどうしてですか?」
「その急に施行された制度で、少なくとも一つの命が無くなってるからな。」
「・・・それは妖精族、ですか。」
「あぁ、そうだ。」
部屋の空気は、より一層重くなる。さらにレイの眼の色と、国王の顔の色が、共に少しづつ変わっていく。
「・・・そろそろ何か答えてくれないか?これじゃ埒が明かない。」
「・・・ではお答えしましょう。答えはノーです。」
「ッ・・・どうしてだ?」
「この階級制度は国民同意のもとで行われたモノです。国民の意見を反映するのが国家でしょう?」
ッ・・・!!!
ふとシェリーが痺れを切らす。
「ふざけないでッ!!!一体誰が合意したのッ!!!???」
「あぁ、確かにそうだな。一体誰がそんなことしたんだ。」
「・・・いえ、『国民が合意した』というのは本当よ。ただし・・・」
「獣人のみの意見しか反映していない、でしょ?」
「はい、あなたの言う通り、行ったのは獣人間のみです。しかしこれでも『国民の意見を反映した』ことに変わりありません。」
「そんなわけッ・・・!!」
「それに」
「・・・?」
国王の形相が、一気に赤に変化する。
「どこの最低カースト族がそんな口利いてんだッッッ!!!!!」
突然国王の身体が小刻みに震えだす。
国王の両手は段々と肥大化し、その腕は亜人のそれから魔人のそれへと変貌。
亜人の顔から角を生やし、牙をむき出し、赤い眼光を放つ。
黒いオーラを纏ったその姿はまさに・・・・
「な、なんだこれ・・・!!??」
「「「・・・!!!」」」
見た者皆絶句する、魔神 ―――
次回投稿日;4月23日