レベル21 帝国 《クルスオード》
「えッ、招待状・・・!?」
レイの手に手渡されたのは、なんと隣国のクルスオード帝国の招待状であった。
さらにその宛名はエフィラ=マルクティルス・ヴェルデ妃、なんと帝国の王妃からのものだった。
「おぅあんちゃん!この前のクエストで娘を助けてくれたお礼がしたいそうだってよ!確か今日来るとか言ってたなぁ・・・」
「えッ!?今日来るんですかッ!?」
「あぁ、丁度お迎えを用意するべきだと言っててな、それも昨日だがな。」
「ま、まじか・・・」
(確かに今から帝国には行こうとしていたが・・・案外早くあっちにつけそうだわこれ。)
「れ、レイくんどうする・・・?」
「えッ、行くよ?逆に行かないの?」
「そうじゃなくて!あっちについたら色々あるんでしょ・・・?」
「そうですよ!感謝な宴会やらなんちゃらで・・・レイさんがしたいレベル上げ出来なくないですか?」ジュルッ・・・
「・・・お前、よだれ垂らしながら言うなよ。お前ただあっちで飯いっぱい食いたいだけだろ。」
「ち、違いますよッ!?決して満腹食べたいだとかそんなんじゃないですよッ!?」
「うるさいロリガキ。まぁでもあっちにはギルドがあるはずだ。マシなクエストがここよりあるかもしれないしな。」
「だッ誰がロリガキですかッ!?」
「まぁ、確かにそうだね~。ここってクエストはあれど大半がプリースト向けだしね。」
レイたちの進路がクルスオード帝国に固まった所で、外からレイたちを呼ぶ声が聞こえた。
「レイ=ベルディア殿およびその一味の方々、ただいまお迎えに参りましたッ!!」
「えッ?お迎えって・・・」
その声を見ようと外に出ると、そこには見たことが無いほどとても大きく立派な馬車が。
「おいおいおい・・・!お迎えってあれかよ・・・?」
「す、すごいお出迎えだね・・・」
すると衛兵の一人が三人を見つけたようで、こちらの方へと駆け寄ってきた。
「あぁ、あなたたちは王妃様がおっしゃっていた冒険者様方ですね!ささッ、こちらへどうぞ!」
「え?あ、おう。」
「お、おじゃましま~す・・・」
「私こんな凄い馬車乗ったことないです・・・!」
中へ入ってみるとやはり内装も一級品。やはり凄い。
さらに馬車の中には、神々しいローブと煌々としたティアラを身に纏った一人の女性の姿があった。
「ようこそレイ=ベルディア様およびその一味のみなさま。私はクルスオード帝国の第23代目王妃・エフィラ=マルクティルス・ヴェルデと申します。先日はわが娘をお救いいただき、誠に有難うございました。」
「お、王妃・・・!?」
「何でここに王妃様が・・!?」
「えッ、23代・・・!?」
「お前だけ驚くとこ間違ってるぞ」
その人物、至る箇所に宝石を施し、着るローブはまさに王妃としての威厳をそのまま可視化したかのような『神盤のローブ』を纏った、なんと帝国王妃であった。
ただ手持ちの扇で口元を隠し、そしてただ馬車の中の座席に座っているだけなのに、その佇まいだけで自分が王妃であることを知らしめているかのようだ。ちなみにアリナはそのオーラに少し圧倒されている。
「あぁ、別にあれは救出クエストを受けただけdッ ――――
ゴンッ!
「!?いってぇ!!」
「ちょっとレイくん何言ってんのッ!?相手は帝国の王妃様なんだよ!?ちゃんと敬語つかわなきゃ!!」コソコソ
「えッ?でも敬語とかほとんど使ったことないし・・・」コソコソ
すると二人の会話が偶然聞こえた王妃は、
「あぁ、別に砕けた口調でも構いませんことよ?私達があなた達を“恩人”として招待しているのですから。」
「えッ、あ、どうも。」
あのミオンもこの返答は少し予想していなかったらしく、とても淡泊な反応に。
「では、そろそろ出発しましょうか。」
王妃は外の衛兵に出発を命令すると、馬車はゆっくりと動き出した。
「しゅっぱーつ!!」
さて、ここは馬車の中。今はクルスオード帝国への道中である。
「わぁ~!!凄いですね!!」キラキラ
アリナは馬車からの景色にいちいち興奮していて、その姿はまるで・・・
「ガキだな。」ボソッ
「レイさん聞こえてますよ?」
「別に何も言ってねーよ」
「ところで王妃様、なぜ娘様が暗黒洞で行方不明に?」
「我が国クルスオード帝国は、この頃周辺のダンジョンを調査しています。幼い娘がそれに過度な期待をしてしまい、養護のメイドの目を盗んで調査団に紛れてしまったのが原因でして・・・」
「へぇ、それはなんで?」
「えぇ、この頃周辺の状態が不安定でして・・・」
「状態が不安定?それってどういうことですか?」
「はい、この頃魔物が急発生してしまったのです。そこで魔物がクルスオード帝国に攻め入らないように討伐隊を編成しているのです。」
「へぇ~、その魔物って経験値は高めか?」
「え、経験値ですか?・・・まぁそこそこではあると思いますが・・・」
「え、まさかあっちでもレベル上げするの!?」
「当たり前だ。俺はさっき転職したばっかで魔法戦士レベル1だ。いくら上級職でもこれは弱いだろ?」
実をいうと馬車に乗る前、レイはこっそりギルドの職員さんに行って転職作業をしていたのだ。
しかし転職は秒で終わるので、かかった時間はなんと26秒だが。
「ま、魔法戦士ですか・・・。でしたらこの付近の魔物は大丈夫かと・・・」
「お、まじか。じゃあついたら早速クエストを受けなきゃだな。」
「ちょ、ちょっとレイくん!!私達、王国に招待されてる身なんだから!まずは国王様に挨拶とかでしょ!?」
「え~まじか~」
しばらくすると、馬車はとある集落の中を通過していた。
「あれ、ここがクルスオード帝国か?そろそろつく頃か?」
「えッ、ここですか?イメージと少し違う・・・」
「ここはクルスオードではなく、帝国傘下のメルディン村です。クルスオードにはもうすぐで到着しますよ。」
どうやらクルスオードではないようだ。
しかし馬車の窓から外を見ていたアリナが、村の異様な雰囲気を感じ取ったみたいで
「あ、あの~・・・王妃様?」
「はい?どうしましたか?」
「あ~、何か村人たちににらまれてるような気がするんですけど・・・」
「あぁ、そのことですか。彼らはグラド大陸でも少数派の妖精族なのです。」
「え、ようせい?」
「はい、私達の国では彼ら妖精族をカーストの下に置いているのです。ですので・・・」
王妃はそういうと窓の外を見る。三人もつられて窓の外を見ると
「コラッ!!王妃様たちに向かってなんと失礼な行動をしているッ!!身を慎め!!」バシッ
村人たちにそう言い放つ衛兵の姿があった。
そしてその村人たちを手持ちの鞭で叩いている所も見えた。
「おいおいこれって・・・」
「レイくん」
「ん?どうした?」
「あまりこの事には触れないでおこうよ。昔からのしきたりかもしれない。どっちにしろ私達が首を突っ込む所じゃないと思うよ?」コソコソ
「あぁ。そう、か・・・」
「・・・懸命なご判断です。感謝します。」
「あ、あぁ・・・」
「・・・もうすぐ帝国につくようですので、皆様はご支度の程をお願いします。」
ここはクルスオード帝国。
2000年程の歴史を持つ、大陸で2番目に長く続く大帝国である。ちなみに1番長いのはイーストデルト王国である。
他文化が多く存在し調和するイーストデルトとは反転、こちらは一文化構成の国である。しかしその分多民族との交流が無いわけでも無く、時々交流展を設けたりなどしているようだ。
しかし、この帝国には他の国にはないとある制度が存在する。
それは階級制度である。
それぞれの階級に応じて、得られる収入や地位、そして生活が与えられる。現在の国家が無理やり定めた方法である。
そして三人は今、帝国城内の王室の間にいる。
「この度は我が王女、メイリア=マルクティルス・ヴェルデ第2王女の救出を感謝する。どうかこの帝国でゆっくりしていって欲しい。またそなたたちにはこちらから改めて報酬を与えよう。」
そしてなんと持ち込まれたのは30万ゴールド!ギルドでの報酬と合わせると、総額は何と45万ゴールドだ!
「えッ、こんな大金・・・!!」
「ほ、本当によろしいのですか!?」
「あぁ、これはお礼のつもりだ。どうか受け取ってくれ。」
「いや~驚いたね~。まさか30万ももらえるなんて・・・!!」
「あぁ、だがとりあえずここのギルドに行きたい。あの王は話がなげぇ・・・」
「そうでしたね・・・あの後1時間ずっと自分の自慢話でしたもんね・・・」
「あぁ、よく1時間も自分のことが言える。中々いないぞあんな逸材は。」
そしてレントヴィン出発からおよそ4時間が経過したところで、三人はクルスオードのギルドに到着した。
「お、ここがクエストの掲示板か。どれどれ・・・」
クエストは、どれも周辺地域の魔物討伐のクエストばかりだ。しかしどれも最適ランクは15、6と高めに設定されている。確かに経験値稼ぎは出来そうだ。
レイはふとある依頼が目に留まった。
「・・・ん?どうしたのレイくん?」
「・・・何でもない。それよりこのクエストにしよう。都合がよさそうだ。」
「え?都合が良いのってなに・・・?」
「これだ。」
レイはその依頼用紙を取って二人に見せる。
「「『イーストオード及びメルディン地方の魔物討伐』?」」
次回投稿日;4月19日