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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第0章 駆け出しに眠るなにか《プレ=ヴィローゼ・オブ・ナイト》
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レベル1 弱者 《レイ=ベルディア》

グラド大陸 ―――


亜人が多数を占める、多民族地域である。

グラド大陸人口の大半を占める獣人(ビスタ)、鳥の翼を持つ鳥人(バーダ)、植物に生が宿った緑人(グリーダ)

この3種族は特別何処に集中するわけではなく、大陸全土にわたって生息している。

島自体は、多民族国家のために生じると思われる弊害やその他諸々が一切なく、平和な雰囲気を漂わせる。

見た目の違いによる差別や迫害なども一切なく、それぞれがお互い平等な関係で接している。島の魅力の一つだ。



しかし、多数を占める3種族とは裏腹に、聖域近くのみに住むとある種族が存在する。

それは ――――





~~~~~~~~~


「俺は冒険に出たいんだッ!!!」


小さい小屋の中から、突然の荒声が響き渡る。どこか幼さを感じる青い声。


「はぁ・・・何度言ったら分かるんだ。お前にはまだ早いと言っているんだ。そのレベルではすぐに死んでしまう。」


「何言ってんだ!!もう俺だってもうドラゴンに変身できる!!もう一人立ちできるくらいにはなったはずだ!!」


そう言いながら、その青年は鋭い鉤爪を生やした竜の手を前に出す。

その手は血管がむき出し、黒光りする竜のうろこを外に纏っている。


「・・・だめだ、こんなものでは弱すぎる。」


「何でだよ!?ちゃんとドラゴンの力だって ――――

「いい加減にしろッ!!」


小屋から村全体まで、誰もが驚くような鋭い怒声が響き渡る。

怒声を浴びた青年は、先程まであった勢いを折られたようだ。


「・・・すまん、だがお前はまだ早いんだ。」


「ッ・・・」



「聖地に住む自覚を持つのは・・・な。」






青年の名はレイ=ベルディア、竜人族の15歳である。

竜人族とはその名の通り、竜と人のハーフ種である。

ドラゴンの力を持つゆえに、保有する力はトップクラスを誇り、ドラゴンに変身すればさらに大きな力を発揮する。

しかしそれが青年期になると話は別だ。

ドラゴンに変身できるとしても、その強大な力を操ることなど到底無理なため、自爆してしまうのがオチだ。

さらにレイの場合、魔法も何も覚えていない。そんなのが外に出たところで、最初のザコボスでゲームオーバーが簡単に想像できてしまう。


要するに、今のレイは『未熟者』なのだ。




「くそッ!くそッ!なんでだよッ!なんで俺は弱いんだ!!」


今日の一人、レイは剣を振るう。

しかし熟練者ならば鋭い音が鳴る素振りは、レイの場合ただ空を切るだけの軟弱なもののようで。

目の前の丸太も斬れやしない。ついには丸太なのに刃こぼれまで。


「よくそんなんで冒険に出たいって言えんなおまえ。」


ふと後ろから声がする。


「・・・チッ、なんだまたお前かよ。」


レイがお前という相手とは、レイと同年齢でグランよりアビリティが高いソリューだ。

ソリューはある程度の呪文なら容易く使える、今は一人前の冒険者だ。


「もうそれ何回目だよ、いい加減諦めろ。お前に冒険は無理だ。この俺と違ってな。」


「また冷やかし&賢者モードか?もう聞き飽きたっつってんだろ。」


「・・・フンッ、口だけは動くみたいだな。ザコの典型的なパターンまで備わってるなんて、なおさらやめた方がいいんじゃないか?」


ソリューはレイと絡む時は、毎回あざ笑うかのような口ぶりをしてくる。


「・・・今日はそれで終わりか?なら俺は訓練の続きするから。だから帰れ天狗野郎。」


「なッ・・・!このヒョロザコがッ!早く諦めちまえ!!」


罵倒を吐き出し終わると、ソリューは自分の家へと戻っていった。



「・・・ふざけんな、ザコじゃねぇよ。」





~~~~~~~


レイが住むこのベルトディア村は、三聖山の一つのバル・グラデ山の麓にある小さな集落だ。なのでここの住民は、聖域付近の魔物と戦えるような力がある者しか外出を許されない。

また外出の際は、外出しても大丈夫な程の力を保有していると証明する『成人証』という証を見せなければいけない。

成人証を持たないレイは、その証の所得を目指して訓練を続けているのだ。


この世界には『冒険者ランク』というものが存在する。

このランクが高いほど強い冒険者ということの証になる。このランクはMax99であり、無論レイは0、ソリューは1である。

ちなみにランク1とは駆け出しの冒険者の中で最弱な類を指す。


聖山自体に入るのは、ランクは10以上と定められている。しかしランク10以上など、この世界には中々いないものだ。




レイは今日も訓練を続けていく。内容はまたも同じ、素振りだ。


「フンッ!!フンッ!!フンッ!!」


レイの素振りからは、掛け声とは比例しない弱々しい音だけが寂しく鳴るだけだ。


「ハァハァ・・・くそ、全然うまういかねぇ!」


するとまたもソリューがやってきた。


「おうおうまだやってんのかよザコ野郎!いい加減諦めろって!」


「・・・ハァ、たかがランク1になったくらいで天狗になってるやつに言われたくねーよ。」


「はぁ?それをランク0、圏外のやつが言うのかよ!ホント口だけは達者だなお前!」



―― ランク0 ―――



いつも聞き流していたレイは、この言葉だけは聞き流せなかったようだ。


「ッ!!・・・・」


「ザコの代名詞だよなぁ、『ランク0』ってよぉ――――

「うるせぇッ!!」


レイの心に、火がついた。


「だったら強くなってやるよ・・・お前なんか及ばないくらいによぉ!!」


「なッ・・!!」


「ランク1なんかで自慢してるやつなんてすぐ抜いてやるわボケェ!!」


「んだとこのザコ!!調子乗ってんじゃねぇ!!」


「うるせぇ!!強くなるっつってんだよ・・・!!覚悟しとけよクソ天狗!!」


「・・・フンッ、やってみろザコが。」




その夜。


「今やってやるよ・・・!!」


レイはこっそり家を抜け出すと、村の出口まで足早に移動し、村の大門までたどり着く。


「よし・・・門番は・・?」


影からこっそり覗き見るように大門を伺うと、



「ガがガガガァァァァァァグウウウゥゥゥゥゥ・・・・・・・!!!!!!」



大きないびきを出して眠っているようだ。


「うるせぇいびきで逆にすげぇ・・。まぁあいつの戯言よりかはマシだけど。」


レイは下にかがんで、門番にとって死角になる場所を慎重に進み、外の衛兵がいないことを確認すると、外へとダッシュで潜り抜けた。

レイは門番の目を盗んで、村の外へと飛び出した。




「よっしゃ一狩やるかッ!」





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