レベル16 信頼 《フィドゥーティア》
さらに奥へ進んでいくパーティー一行。
「ここが最奥地みたいだな。何か人影っぽいの見つけたか?」
「こっちはいないよ~」
「そうか。アリナはどうだ?」
「まだこちらも見つけられていません。」
「そうか・・・もしかしたら魔物におびえてどっか隠れてるかもな・・・」
(そういえばどこら辺で迷子になったか聞いとけばよかった・・・まぁあまり関係ないと思うけど)
――― 助けて・・・助けて・・・!! ―――
下から子供の叫び声がふと聞こえた。
「おい、今のって・・・!」
「はい・・・下から聞こえました・・・!」
するとミオンが何か見つけたようだ。
「二人ともみて!この石の隙間に変なレバーがあるよッ!?」
「なッ・・・ホントだ、なんだこれ・・・?」
「これを引くと、下に行けるかもですよ?」
「確かにあの声は下から聞こえたからね、そうかもしれない。」
「みお姉、引いてみてくれるか?」
「うん。」
ミオンはレイたちに石をどけるのを手伝ってもらい、隠れていたレバーを手前に引いた。
すると・・・
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!!!!!!!
「な、なんだッ!?」
「きゃッ!」
「アリナちゃん捕まってッ!!」
岩壁が大きく揺れ出し、地響きは激しい。
そして揺れがおさまり、3人はレバーがある方を見ると・・・
「・・・隠し階段かッ!!なるほどッ!」
「これで下に行くって訳だね。」
二人は足早に下へ降りようとする。
「ちょっとレイさんにお姉さまッ!?このまま下に行ってもいいのですか!?もしかしたら下にたくさんの魔物が・・・!」
「あ?何言ってんだお前・・・俺が負けるわけないだろ。」
「え?」
「しかもお前がいる。全体攻撃は任せたぞ。」
「ッ・・・!!」
レイの言葉の瞬間、アリナはその場で黙ってしまう。
「・・・ん?」
「アリナちゃん・・・?」
「・・・」
「・・・どうしたアリナ。」
「・・・ごめんなさい、私、そんなに役に立ちません。レイさんが持つ期待に、私は答えられません。」
「・・・」
「アリナちゃん・・・」
「私は以前所属していたパーティーで全く役に立ちませんでした。最初は期待してくれてたのに、その期待を裏切ってしまいました。だからもう裏切ることはしたくないんです。ですのでここはお二人で ――――
「うるせぇぇ!!!!!!!」
「ッ!?」ビクッ!!
「そんなの知るかッ!!行くぞッ!!!!」
「で、でも私はッ ―――
「この俺が行けるっつってんだッ!!!」
「ッ!?ど、どうして・・・!?」
「あぁ、大丈夫だよ。ナルシストモードのレイくんは気持ち悪いけど間違ってはいないから。」
「なッ、気持ち悪いって・・・!!!」ガーン
「それにね、アリナちゃん・・・」
「・・・?」グスッ
「不可能だって分かってるなら、レイくんでも絶対に行かないよ。でもアリナちゃんがいてもレイくんは行こうとしている。これって意味わかる?」
「えぇっと・・・」
「アリナちゃんは出来るってことだよ。」
「・・・?」
「それも期待じゃない、期待なんて無責任なものじゃない、確固たる信頼だよ。」
「・・・」
「まだレイくんはアリナちゃんと出会ってまだ2日。信頼っていうには少し浅いかもね。でも・・・」
「・・・」
「レイくんはちゃんとアリナちゃんを見てるんだよ。それも職業とかレベルとかそんなんじゃない、仲間じゃないと分からないその人の実力、でね。」
「・・・それって・・・」
「あぁ、お前は幼女だが強い。だから行く、それだけだ。」
「・・・」
「以前のパーティーでのことは聞いた。だがな、俺がお前は強いって言ってるんだ。間違いない。」
「ッ・・・!!」
「自信持て。手助けはいくらでもしてやる。」
「!!!・・・」グスッ
「ね?だから行こう!早く助けないと、ね?」
「ッ・・・」フキフキッ
「ッはいッ!!」
隠し階段を下りていくと、その先にはやはり少女の姿が、頑丈な格子檻の中に閉じ込められていた。
「助けて!!!冒険者さまぁ~!!!」
「あれが迷子の子供かッ・・・ヤバいことになってんなマジで・・・!!」
『おいおいおい!!上がうるせぇと思った今度は3人かよぉ~おい!』
そして3人の横から声がする。ペーディオと同じ、邪気を纏った禍々しい声だ。
「あれは・・・!」
「・・・『ベヒーモス』、防御力が異常に高い高位悪魔の一種だよ。」
高位悪魔とは、対象自身でモノを考え、そして他の魔物を従えられる悪魔のことである。ちなみに以前のペーディオもその一つと考えられている。
『よぉ~くわかってんじゃねぇかよ嬢ちゃん。昨日のやつらはそんなのも分からずに俺に処刑されちまったしなぁ~おい!』
(確かこいつの弱点は魔法攻撃だったはず・・・でも俺の魔法じゃ通じないだろう・・・)
「・・・アリナ、このデカ物はお前に任せる。」
「ッ!!」
「フォローは俺達がしてやる、特にみお姉を頼ると良い。回復魔法が得意だしな、みお姉は。」
「・・・はい。」
「いけるな?」
「はいッ!!」
3人は戦闘態勢に、ベヒーモスへ武器を構える。
『おいおいおい待てよぉ~楽しい血祭りには数が足らねぇんじゃねぇか~おい!』
するとベヒーモスは邪悪な雄叫びを洞窟内に響かせた。
『!!!!!!!!!』
「う、うるせッ・・・!」
「くッ・・!」
「ひいぃ・・!」
『・・・ふゥ、よぉし、これでいいんじゃね~の~おい!』
あの雄叫びで、レイたちの周りは500を優に超えるヨトゥンエビルに囲まれてしまった。
「・・・ひるむなアリナ、問題ない。お前の後ろは俺達がいる。」
「・・・はい」
「みお姉!アリナのサポートと、ついでに俺のサポートも頼む!俺はこのザコ兵をやる!頼んだぞッ!」
「任せて!しかもついでじゃなくて本気でサポートするよ!」
「・・・アリナ、頑張れ。」
「はいッ!」
そしてアリナは、首領のベヒーモスと対峙する。
『?おいおいおい~なんだよおちびちゃんが相手かよぉ~おい!』
「・・・」グッ!
『まぁ後で全員血祭りに上げてやるからよぉ~おい!』
「・・・」
「・・・」フウ
アリナは心を落ち着かせ、精神統一を始める ―――
――― 私はだれ ―――
(うん、私はアリナ=メルド・・・)
――― 私の仲間は、だれ ―――
(レイさんにお姉さま、私を手助けしてくれる、大切な仲間・・・)
――― 私は戦えるの? ―――
(うん、大丈夫なんだ あの二人がいるから・・・)
――― そう、じゃあ問題ないね ―――
(うん、そうだよ 問題ない・・・)
――― じゃあ、始めようか ―――
(・・・うんッ!!)
『スキル;「フィドゥーティア」が発動しました。』
「行きますッ!!」
アリナは杖先に意識を集中させた ――――――――
次回投稿日;4月12日