レベル14 神官の町 《レントヴィン》
「す、すげぇ・・・」ポカーン
「へへッ、すごいでしょ!?」
こんなに幼げな少女が唱えた呪文がここまで大スケールなモノになるとは思っていなかったレイは、ただただ目の前の光景に驚くばかりであった。
「ねぇアリナちゃん、知力ってどれくらいあるの?」
「知力ですか?えぇっと~」
アリナは自分のステータスパネルを開いて、知力ステータスの数値を読み上げる。
「ん~っと、知力135ですかね。」
「お~!!」
「よ、幼女のくせに頭良いだと・・・ッ!!」
「そうですよ~頭良いんですよ~、ってまた幼女ッ!」
「・・・でもそれくらいの知力があるならこれほどの威力があって当然だよ~すごいねアリナちゃん!」
「あ、ありがとうございます・・・///」
(素直に褒められると照れるのかよ・・・ならおれも)
「へ~でもやっぱりお前凄いんだな、見直したわマジで。」
「えへーん、そうでしょ!?やっと私の凄さが分かりましたかッ!!」
(う、うぜぇ!!)
「なんで照れねーんだよ!?みお姉の時は照れてただろ!?」
「それはお姉さまだからですッ!!」
(お、おねえさま・・・!?)
「ふ、二人ともいつから師弟関係に・・・!?」
「私達は出会った時からこんな感じです!!」
「えッ、どっかで会ったのかみお姉?」
「うん、レイくんが図書館行ってたあの時かな?」
(あ、あぁ・・・あの時かぁ・・・)
それはついこの前。レイが図書館で自分のスキルについて調べものをしている時、ミオンは装備新調のために商店街に買い物をしていたことを覚えているだろうか。アリナとの出会いはその時のものである。
「だからあなたレイさんの言ったこととお姉さまのお言葉じゃ格が違うのです!!」
(とことんうぜぇ・・・!!)
「まぁまぁレイくん、実際本当に強いんだし、ね?」
「・・・みお姉、そのなだめ方はどうかと思うぞ・・・」
そうしてイーストデルト出発から3時間弱、三人は西の町レントヴィンに到着した。
西の町レントヴィン、通称『神官の町』。
ここには世界有数の『ペルカトレ大聖堂』という教会があり、世界各国の教徒や神官たちがこの場所に集い、祈りを捧げている。
なおレントヴィンでは、『ペルカまん』という名物肉まんがあり、絶品だとかで評判だ。イーストデルトの国王も好きで、レイたちに与えた褒美の中にこれがあったこともその証拠の一つだ。なんでもこの地方で育てているデルト豚という高級素材を使っているのだとか。
「わぁ~!!ここがレントヴィンですね!!」
(はしゃぎ方はすげー幼女なんだけどなぁコイツ)
「何か言いましたか」
「何でもねぇよ。」
「ねぇレイくん、私あそこの『ペルカトレ大聖堂』でお祈りしていきたいの。ちょっとアリナちゃんお願いできる?」
「え?あぁ、確か神官たちの聖地っぽい所だっけ?こっちは大丈夫だ。」
「お姉さまどこに行くのですか?」
「うん?あそこの大聖堂だよ。アリナちゃんも行く?」
「はい!行きます!」
(コイツみお姉には従順なんだな。)
「まぁいいや、じゃあ二人で行ってこい。俺はそこらへんブラブラしてるから。」
「うん。」
「はい。」
二人はそうして大聖堂の方へ向かって行った。
「・・・さて、ここで何するかだが・・・とりあえずギルドに行ってみるか。」
(そういえば確かアリナのやつ、呼び方どうこうとか言ってるとき・・・)
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「えッ前のパーティー?お前どこかのパーティーに入ってたのか?」
「えぇッ!?はい、まぁ・・・」
「・・・何でそんなに驚くんだ?」
「何でもないです何でもないです!!」
「?」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
(なんであんな変な反応なんてしたんだ・・・?)
(何か知られたくない事情でもあったのか・・・?)
(・・・)
「・・・後でみお姉に訊いてみるか。」
レイはしばらくして、レントヴィンのギルドに到着した。
レントヴィンのギルドは、イーストデルトのそれよりは劣るが、それでもこの地域で大きい規模を持つ大ギルドだ。冒険者の人数もそれなりに結構いる。しかしその中でも・・・
「やっぱプリーストの数が異常に多いなここは・・・」
レントヴィンは大聖堂もあった通り、神官の町という異名も持つ。この光景はレントヴィンではデフォルトだ。
レイは早速依頼板のある場所まで移動する。
「さて、どんなクエストがあるんだ・・・?」
掲示板に張られているクエスト依頼はどれも除霊目的のものばかり、討伐クエストは圧倒的に少ない。まぁこれが神官の町レントヴィンである。これもデフォルトだ。
「・・・んッ」
レイはとある一枚の依頼を見つけた。
「『迷子の救出』?」
その髪に書いてあった内容は、レントヴィンから北の方にある暗黒洞で迷子になってしまった子供を見つけ出してほしいという内容のものだった。ちなみにクエストレベルは11、最適ランクでいうとランク8~10程である。
「なぁ、ちょっといいか?」
レイはギルドの窓口で職員さんを呼んだ。
「ほい、どうしたあんちゃん?」
「あぁ、この『迷子の救出』っていうクエストについてなんだが・・・」
レイがそういった時、職員さんの顔が急に青ざめた表情に変わった。
「あんちゃん・・・!?悪いことは言わねぇ、このクエストは忘れるこった。」
「ん、どうしてだ?」
「あぁ、実はなぁ ―――
職員さんの話によると、この暗黒洞ではつい最近に魔物が住み着き始めたのだそうだ。今までそこは魔物は一体もいない場所で、暗黒洞内にあるレイヴィ鍾乳洞という観光スポットで有名な場所だったのだ。
しかし魔物が住み着き始めた今ではレイヴィ鍾乳洞は完全閉鎖。寄り付く者は誰もいないのだという。
その魔物を駆除するにもこの町の冒険者はほとんどが神官のため、このようなクエストは向いていない。
そんな中迷子が発生した、詳しいことはこんな感じだ。
「・・・なるほど。その魔物って多数か、それとも少数か?」
「ん、まさか行くつもりか!?」
「あぁ、興味が湧いた。このクエストを受けようと思う。」
「マジかあんちゃん・・・やめといた方がいいって・・・」
「おれは神官じゃない、ソルジャーだ。こういうクエストは向いていると思うが?」
「そうじゃねぇんだ。つい一昨日にとある冒険者一行がこのクエストを受諾したんだが、その一行の死体が今朝暗黒洞入口で見つかったんだ。たしか兄ちゃんたちのランクは10程だ。最適ランクのはずなんだが・・・」
「なぁ、その最適ランクってどうやって定めてるんだ?」
「あ、あぁ・・・大方はギルドの上部の独断設定だって聞いたことあるな。この件もあるから、あまり宛には出来んだろう。」
「・・・もう一回聞くが、その魔物って多数か、それとも少数か?」
「・・・聞いた話では多数だそうだ。しかもボスがいるらしい。」
(敵は多数で、ランク10を倒すほどの力・・・か。)
「・・・分かった。その依頼、俺達にやらせてくれ。いいだろう?」
「まじかあんちゃんッ・・・いや、分かった。だが形勢が悪かったらすぐに戻って来いよ。この際冒険者のプライドなんて関係ねぇ。最後に戻ってきたやつが勝者なんだからな。」
「あぁ、分かったよ。」
(というわけで勝手にクエスト受けちまったけど・・・)
「いいんじゃない?このパーティーのリーダーは前も言ったけどレイくんだよ?」
「そうですね。そこに関しては同意見です。」
「お、おう。そうか・・・」
(何でアリナまで認めてるんだ?こいつの前では俺は何も・・・)
「大丈夫だよレイくん、アリナちゃんの言葉、決してウソじゃないよ。」
「そうです!疑うなんてひどいですねッ!!」
「アリナちゃんがこのパーティーに入りたかった理由、2割はレイくんの強さに惹かれてなんだよ?」
「へぇ~・・・」
(たったの2割ィ!?)
「はい、神代の祠での戦闘を偶然見かけまして・・・凄いな、と・・・」
「ちなみに聞くが、ってかもうおおよそ分かるが、残りの8割は ―――
「お姉さまですッ!!愚問ですねッ!!」
「・・・だよなぁ。」
「でもそのクエスト、行くとしたら明日でしょ?」
「ん?あぁ、もう夕方だし、暗くなるといけない。行くとしたら明日だ。」
「でも初クエストです!頑張ります!」
「あぁ、敵は大量らしい。アリナの全体攻撃が肝になる。期待してるぞ。」
ピクッ・・・
「えッ・・・」
アリナが急にその場に止まる。
「・・・ん?どした?」
「あ、いえ、何も・・・」
「・・・」
そうして3人は明日のクエストのため、宿を探して夕方のレントヴィンを行くのであった。
次回投稿日;4月10日