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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第8章 混沌が漂うこの国で 《ラスト・サーヴァント》
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レベル100 延長戦 《ダンジョンマップ》


翠騎士不在の状況で勇者発見、ヴェルディナートの口ぶりではどうやらその勇者が翠騎士の可能性が高い・・・みたいな感じで捉えた一味。

シル・ガイアが討伐されたその後に出てくる勇者で翠騎士素質ありなど、もはや後の祭り状態なはずなのだが。


しかしここでふと思い出す。

そういえば最後のシル・ガイア戦、フィルは特に戦闘などはしていなかった。・・・いや、もしかしたら群がるペーディオゾンビを対処していたかもしれないが。

そして何より、獣騎士3人が集まることで発動していたあのスキル達、しかしあの時は発動していなかった。


確かあの場でフィルは、鉾の武器を持っていたはずだ。ヴェルディナートがいうならば、武器が揃えば発動するメカニズムのはずだが、あの時は発動していない。

あの時フィルが持っていた鉾は、三聖器とは別の鉾だろうか。


まあそんな考察をしていても仕方がない。フィルたちはヴェルディナートが探すと言っていたのだから、こちはこっちでラドウィンまで行く口実と攻略法が出来たというものだ。

一味は聖域の出口の方へ向かおうとすると、



「おいおい、どこ行くんだみんな?」



5人の背中に尋ねる青年、どことなく「まだ行くなよ」が聞こえてきそうだ・・・

1番最初に振り向いたアリナが、


「え?出口ですよ?だってこのダンジョンの目的は果たしたじゃないですか。神木の源に、後は伝説の兜でしたっけ。後者は偶然の産物ですけどね。」


と、アリナが淡々と述べる理由を聞くと否や、


「かーッ!ロマンがないやつだな・・・」


と、唐突にディスられてしまったアリナ。

探索し終えたダンジョンで知らないロマンを語られても困る・・・そんな表情のアリナにレイは、


「おいおい、あと1つ謎要素が残ってるだろ??さっきのデカい足跡はどうするんだよ?」


「え、それはあのヴェルディナートさんのもの・・・で結論つけませんでしたっけ?」


「んなもんいつ付けたんだよ。しかもヴェルディナートと全然合ってないだろ。獣の足跡だったんだぜ?」


先ほどまでいたヴェルディナートは、レイたちと同じくらいの大きさの足跡をつけるだろう。外見で判断した。

道中見つけたあの足跡は、ヴェルディナートの足跡とは一致し難い。


「じゃあレイくんどうする?探索を続けるって言っても、一通りここは探索したよ。」


「そこでだ・・・確かみお姉、探索するときに地図をつけてたろ?それを見せて欲しい。」


「え?あ、うん。殴り書きレベルだから結構見えにくいよ?」



ミオンがその場合で地図を広げると、一味はミオンがいる場所に集まり出した。

この聖域は3階層からなるダンジョンで、1階層つまり地上エリアはただの森だ。しかし外界からこの森に入ることはおそらく出来ないだろう。何せ周囲が険しい岩壁で囲まれている。

空から降ってくる・・・というパターンも考えられそうだが、上空には鳥らしき生物が1匹も見当たらない。おそらく相当な乱気流が発生しているのだろう・・・ということで上からもおそらく入れない。


2階層3階層は地下エリアだ。目の前にあるそれなりに大きい扉から入ることができる。

中はいたってダンジョン風の洞窟、聖域特有の空気はあまり感じない。

神木の源は、おそらく1階層の森を構成する樹木から獲れるものなのだろう。レイが手に取って見ると、神木の源とは葉っぱの朝露を取ったもののようだ。

とは言っても、気になるのはあの大きな門。あの門をくぐるほどの大きさということは、あの足跡の持ち主が出入りしている可能性もまだ消えていない。


ということで、



「地上組と地下組で、このダンジョンを探索しよう。隠しルートを見つけたらそのまま行かずに、一回ここに戻ってくることな。これ約束。」


このまま1班で探索していたら時間が勿体無い・・・ということで、現在一味はレイ・アリナ・メイリア3人の地上組、ミオン・シェリー・芽衣の地下組の2編成に。


「あのレイさん、私お姉さまと一緒の班がいいんですけど・・・」


「駄々こねるな。この編成にしたのもちゃんと理由がある。」


「ほう、というと?」


「まずどんなパーティーにも、タンク・アタッカー・ヒーラーの3人は欠かせない。メイリアは回復魔法が多少使えると言っていたから、このパーティーのタンクは俺と芽衣さん、アタッカーはお前とシェリー、ヒーラーはみお姉とメイリア。ここまではいいな?」


「まあ・・・はい。」


「そしてパーティーに欠かせないもう一つの要素は、メンバーを統率するリーダーポジだ。みお姉はそういうスキルを最近でに入れたから、リーダーポジは俺とみお姉ってわけだ。」


「なるほど。」


「知識が豊富なやつもいないといけない。このパーティーでは、知識役はお前と芽衣さんだ。」


「ふむふむ。」


「それを踏まえて、あとは俺のフィーリングで選んだ。」


「その理由を聞いてますけど。」


「まあいいじゃないアリナちゃん。私とアリナちゃんは呪文メインだし、道中で魔法封じをもらっちゃったら、私たち攻撃できなくなっちゃうかもだし。3分の1しか機能しないパーティーこそ、探索では危ない状況だと思うからね。」


「そうだぞ、全く・・・シェリーですら駄々こねないのにお前ときたら・・・どこまで幼女なんだ。」

「幼女関係なくないですか??!!」



ということで、地上組と地下組はそれぞれ探索へ向かった。





♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


さて、地上組の3人はというと、聖域の中の森を探索中だ。

と言ってもこの中に畦道っぽい道はなく、ただ森の中の平たい場所を選んで足を進めてる感じだ。

足を置ける場所に足を置く・・・そんな感じで歩みを進めているため、聖域内のどこに向かっているかは当の本人にもわからない。

いざとなったらこのエスケイプロープで脱出すればいい、無論地下組にも持たせてある。



「と言っても、1階層はただの森って感じだな。何もねーぞ・・・」


あるのはそれなりに神聖な雰囲気を感じ取れる樹木くらい。他といえば・・・聳え立つ岩壁と青い空の2つか。


「はあ・・・私、神木の源を取ったらすぐにラドウィンへ向かうと思ってました。しかも特に何もなさそうな地上組にさせられるなんて、、、」


と、アリナは文句が止まらない。


「あのなあ、お前の戦闘スタイルは洞窟には向いてないんだよ。1番最初のクエストでの出来事はまだ鮮明に覚えてるぞ?洞窟内で爆発魔法なんか発動させやがって・・・逃げるのどれだけ大変だったか。。なあメイリア?」


1番最初のクエストとは、ベヒーモス戦を交えた暗黒洞(ダークサイト)のことだ。

あの時はアリナは爆発魔法をダンジョンの奥地で発動させ、その衝撃でダンジョンの壁やら天井が一斉に崩れ出し・・・崩れる前に出口へと必死に走って行った過去があるのだ。

現在あの場所では、入り口が倒壊して入ることもできない。裏口ルートはまだ残っているので、もし用があるなら裏口から入ることになる。


「・・・いや、そういえばあの時、お前とメイリアを担いで必死に走ったのは俺だったな。とんだ苦労だったぜ。」


「うっ・・・それを出されると何も言えないじゃないですか。。。」




しばらく1階層を探索してみたが、めぼしい箇所は特になしだ。

どこまで進んだかもわからないが、とりあえず3人は適当な場所で休憩中と言ったところだ。


「お、お腹空きました・・・何か食べるものありませんかあ、、、??」


そういうアリナの視線は、おそらく食料を持っているであろうメイリアへと向けられていた。


「えっ?わたし?うーん、確かお菓子なら入れてきたような・・・」


メイリアは持参したポーチの中に手を入れると、その次には小さなクッキーを取り出した。


「あ!クッキーじゃないですか!!ひとくちだけ!ひとくちだけ欲しいです!!」


「・・・お前空腹のせいで、自分が背負っているバックの中に今朝お弁当を入れていたことすら忘れちまったようだな。空腹ってのは怖いぜ。」


「え?あ、そうだった!!」


「そんなことも忘れちまって人様のクッキー食べちゃったのか・・・あとで弁償しろよな。」


「んなっ?!レイさんが先に言ってくれれば被害者なしだったんですよ?!これはレイさんのせいです。」


「このロリガキ!・・・だめだ、腹減って怒る気力もない。満腹になったらお前覚えとけよ・・・!」



と先ほど言っていたレイだが、お弁当を食べている途中ですっかり忘れてしまったようだ。食欲というのは怖いものだ。


「あちらのチームは今頃どうなんでしょう?」


「地下組のことか?うーん、まあ何も成果なしなんじゃねーかと思うぜ。シェリーが隠し扉なるものを見つけてくれれば別だが、特に迷路のような感じでもない2階層や3階層で、隠し扉を見つけるのは至難の技だ。」


「そういうのは、レイさんの『ルート』スキルでは見れないのですか?」


「流石にダンジョン全域で発動しても、特定は難しいだろうな。範囲が広すぎる。」


「そうですか・・・メイリアさんは、この1階層でなにか知っていることはありますか?隠しルートとか、隠れてなくてもいいので他階層へ続く道を知っていたりとかは・・・」


「うーん、あまりここに来ないんだよね・・・むしろ、今回ここまできたのは初めてだよ。」


そういうと、再びお弁当へと視線を戻したメイリア。

どうやらアリナ分のお弁当を半分分けてもらったみたいだ。クッキー分の等価交換、というやつだ。


「私もこの聖域は初めてなので、ここらの情報は初心者レベルの知識量です。レイさん、もうエスケイプロープで元に戻りますか?」


「まあそうだな、食べ終わったら一旦戻るか。これは地下組の成果を期待するしかねーな・・・」



レイのお弁当は、まだ半分くらい残っている。

そのお弁当に、まるで欲しいアピールをしているかのように、どこか熱い視線を向ける者が一人。


「・・・食うかアリナ?」


「え?いいんですか!!」


メイリアの半分わけてあげたことで、自分の分を食べ終えてもまだ満腹ではなかったようだ。

人の食いかけにも喜ぶところを見ると、まだだいぶ空腹状態のようだ。


「ほれ、お前って本当燃費悪いよな・・・そんなに食べても太らないんだったら、もう少し身長伸ばしてもいいんだけどな。」


「うるさいですね!ただ食べたら身長が伸びるんだったら、今よりもっと食べてますよ!・・あ、メイリアさんお水入りますか?お弁当だけ分けたのに、お水とかはまだでしたね。」


「あ、うん。欲しい!」


「ちょっと待っててくださいね。メイリアさんの分も注ぎますので。」


アリナはバッグの中からはメイリア分のシェリアスウォーターを取り出すと、ピンを開けてそのままメイリアへ差し出した。

シェリアスウォーターは回復道具でもあるがもとは水なので、疲労回復に役立つ飲み物としても利用できる。薬草はそのまま飲むことができないので、そういうところは水系の方が使い勝手が良い。


「はいどうぞ。」


アリナはピンを抜いたシェリアスウォーターを渡すと、しかし受け取ったメイリアはそのまま手を滑らせ、


「あっ」


と漏れた声の次には、地面にシェリアスウォーターがこぼれてしまった。


「お前ら何やってんだよ・・・」

「ああごめんなさい!・・って私もですか?!メイリアさんに渡すところは問題なかったと思うのですが!」

「ごめんなさいアリナさん、、」


「ちょっと待っててくださいね。今もう1本開けるので・・・」


シェリアスウォーターは手に入れやすい回復道具なので、幸いそれなりの本数を持ち合わせている。

ふとこぼれたところに目をやると、土の下から岩版の表面らしきものが見ててきていた。水のおかげで、上に被さっていた土を退けてくれたのだろう。


「・・・おいアリナ、水こぼしたところに岩の表面っぽいのが見えてるだろ?それ、ちょっと土払って見てみてくれないか?」


「え?・・ああ、これですか?先にメイリアさんに水だけ渡しちゃいますね。」


メイリアにシェリアスウォーターを今度こそ渡して土を払うと、隠れていた岩版は徐々にその姿を現した。



「これは・・・このエリアの地図っぽいものでしょうか?」


表面が綺麗なった岩版には、どうやらこのエリアの地図が書かれているようだ。

どことなく、ミオンが記していた手書き地図と似たところが多くみられる。


「お、これはいい収穫だな。メイリアよくやった。いいところに水こぼしたな!」


「え?あ、ありがとう?」


「どうだアリナ、みお姉が見せていた地図とこれをみて、何か違いとか見つけられそうか?」


ミオン作の地図を手書きでメモしていたアリナは、そのメモがきを岩版の隣に置き、間違い探しをし始めた。

双方を比較すると、ミオンの地図には書かれていない2階層のエリアが、岩版には1つ描かれているようだ。

そして、



「・・2階層のここの部分、地図には描かれていない通路と空間がありますね。」




昼ご飯を食べ終えると、3人は地下組のいる2階層へと歩み出した。



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