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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第8章 混沌が漂うこの国で 《ラスト・サーヴァント》
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レベル97 迷宮 《ダンジョン》


シェリーは聖域内を探索しているうちに、大きな門の前まで行きついた。

しかしこの門も入口のものと同様に、そのまま手押しでは開かない。これも魔法陣による封鎖を受けている門なのか。

どちらにせよ、シェリーには魔法陣に掛かる魔法まで探知することは出来ない。


「う~ん・・入りたいなぁ・・・」



シェリーはそれからしばらくその門の前で色々考察を重ねたが、最終的には諦めてしまう。


「レイにこの門について伝えとこ!」




それからまた時間は過ぎ、今はメンバー全員が先程指定した集合場所に集まっている。


「みんな見つかったか?」


レイの問いかけに、誰も返答をしない。どうやら誰も見つけられていないようだ。

勿論、レイも見つけられていない。


「結構探したんだがな・・・そんなに希少なものってことか?」


「希少であることは勿論そうでしょ。だってあんな大きな門に魔法陣まで付けるんだもの。」


「アリナは何か見つけられたか?勿論芽衣さんも。」


「見られる所は隈なく探したのですが・・・」

「中々見つけられなくてね・・・」


「そうか・・・シェリーはどうだ?」


「私も見つけられなかったよ・・・でも変な門は見つけた!」


「門?」

「そう!大きかったよ!」


といってシェリーはあの大門がある場所を指差していく。


「大きな門・・・それってその門みたいな感じのか?」


「まぁ大きさはそんな感じ、だけどなんか違ったんだよね~」


今のシェリーに、魔法陣に掛かる魔力を探知することは出来ない。シェリーは門に描かれている模様や大きさから判断している。

先程の門と入口の門は、物理的にも視覚的にも全く異なる。


「・・・この場にもう一つの門ってあるモンなのか?」


レイの問いかけにメイリアが答える。あ、これダジャレじゃないよ?


「う~ん、私も聖域の中にはそこまで入ったことなかったからなぁ・・・そこまで分からないや。」


「そうか・・・シェリー、その門から何か聞こえたとか無いか?あとはその付近で何かが動いたとか・・・」


「ん~・・・無かったかなぁ・・・」


確かにあの門の周りで何か動くものあったかと言えばない、さらには門からは何も聞こえてきていない。

何か音があれば、もう少し考えが浮かんだのだが。


「ちょっと気になるな・・・他のみんなも何か気になったもの見なかったか?シェリーみたいに目に見えるものじゃなくてもいい。」



・・・



「よしシェリー、そこに案内してくれ。」




シェリーは先程の道を思い出しながら、あの門へ皆を案内する。

5人はその後ろをついていく形で進んでいくのだが、少し疑問に思うことも。


「・・・な、なぁ。何か光多くないか?」


『光が多い』というのは、聖域の空気中に漂っていた光の粒の数のこと。5人がその大門へ進んでいくにつれて、確かにだんだんと数を増やしているような・・・

魔物だろうか?しかし聖域に潜む魔物などいないはず。魔物のうめき声も一切聞こえない、足跡も今居る者以外のものは見当たらない。


・・・いや、あった。



「でっけぇ足跡だな・・・」


レイが真横の地面で見つけたその足跡は、亜人のそれをはるかに超える大きさである。

その形も考えると、どうやらこれは獣の足跡のように見えなくもない。


「しかも結構最近に出来たものみたいだね・・・ほらここ。」


ミオンが指差す先では、その足跡から水がにじみ出ている。踏まれた土の状態を見ると、まだ乾燥し切っていない新鮮な地層が微かに見える。


「おかしいなぁ・・・この聖域には光の粒ちゃんしかいないと思ってたんだけど。」


「・・・もしかして神獣の類か?」


可能性はある。彼らは魔物ではない、よってこの場にも何不自由なく進入出来る。


「しかしそれだと姿を透明にしていたことになります。というのもこの足跡はまだ新鮮な状態です、私達が入る前に出来たものだとは思えません。」


「なるほど、確かにあの時足音とか聞こえなかったな。」


「三聖山の守護獣たちは姿を透明にすることって出来ましたか?」


「・・・」


答えは否である。



「これはちょっとヤバいかもな・・・」



ふと先の方で、シェリーがこちらを呼んでいる。5人は急いでシェリーの元へ。



「これか・・・確かにさっきとなんか違うな。」


「まるで怪物の住処みたいな大きさだね。」


「みんな、一応すぐ準備できるようにしとけよ。みお姉はメイリアのこと頼んだぞ。」


「うん。」



しかし改めて見ると、その大きさに少し驚いてしまう。大きさは、三階建ての一軒家と言えば想像しやすいだろう。

とにかく今まで見た扉や門の中で、これは一番の大きさかもしれない。

こんな大きな門、誰が使っているのだろうか。


「・・・」


レイはその門に近づき、そしてしばしの間凝視し続ける。


「・・・」


「(魔力は感じられない・・・)」


次にレイ、メイリアにも魔力が働いているか見てもらうことに。

しかし、


「・・・どうやら魔法陣の魔力はないみたい。断言出来るけど、この門には何の魔力もかかってないよ。」


ということは、この門には何か物理的なチカラが加わっているようだ。ただシェリーが非力であの時開けられなかった、という仮説もない。なぜなら今レイも手押しで開けることが出来ない。


・・・ふとアリナが何かを見つける。


「・・・あそこ、鍵穴ですかね?」


アリナが指差すのは門の左下の端、さりげなくあるとても小さな穴が。

レイはその穴を凝視してみると、


「・・・確かにこれは鍵穴だ。そこらへんに鍵とかあったか?・・って言っても多分ないんだよな。」

「うん、無いよ。」


「うん、分かってた。・・・しゃーない、スキルで見てみるかぁ。一日五回までだし、あんま使いたくねぇんだけどな・・・」



『スキル2;「ルート」を発動します。』



門の先に見えたのは、



「下へ伸びる階段・・・?」





♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


「どうやらこの先は下へもぐるダンジョンみたいなヤツだ。そして鍵は・・・メイリア!」


「へ?わたし持ってないよ?」


「いいや違う、俺が言ってんのはお前の下だ。ちょっと土どけてみろ。」


メイリアはレイに言われた通りに、自分の真下の地面を少し掘り起こしてみる。

言われてみると、確かにそこは少し土で盛られた形跡が微かに見える。


「・・・あ、なんかボタンがある!なんで分かったの?!」


「そういうスキルを使ったんだ。そのボタン押してみろ。」


「うん」



ポチッ



すると、メイリアが土を掘った場所のそこ横の地面から、なんと小さな鍵が出てきたではないか。

少しの力で簡単に壊れてしまうそうな、何とも小さい鍵だ。この門の大きさには全然似合わない。


レイはメイリアから鍵を受け取り、その鍵を先程の鍵穴に差してみる。




ゴゴゴ・・・!!!




「おぉ・・・開きましたね・・・!!」


いざ開いてみると、その先は下へ伸びる階段が奥深くまで。

明かりはあるが、聖域内のと比べるとかなり暗い。

しかし魔物の気配は、今のところ感じられない。何とも不思議なダンジョンだ。


「よし、行ってみよう。もしかしたらこの先に『神木の源』があるかもしれない。」


「うん・・・注意していかないとね。」





先程のアイテム探しから一転、今はまるでダンジョン攻略のような緊張感がパーティー内を包んでいく。

しかし『神木の源』とはよく言ったものだ。もしこの先にそれがあるのだとしたら、『神木』の要素など皆無に等しい。

ダンジョン内に神木がある可能性は低い、そもそもこの先にあるのだろうか?それすらも怪しいところだ。


しかし、レイは気に留めることがもう一つあった。むしろこちらの方が気になっていたまである。



「(昨日誰かがこの中に入っている・・・)」



レイのスキル『ルート』について。今更ながら説明すると、このスキルは対象物の詳細や関係物、またはその付近に起こった最近の出来事を把握することが出来るものだ。

この事を踏まえて先程を説明すると、レイが鍵の在り処を見つけることが出来たのは最近何者かがその鍵に触れたからだ。

その鍵に近い時期で触れていなければ、おそらくレイたちは一向にあの先へ進めなかったはずだ。あのカラクリは例え奇跡が起こったとしても、おそらく門を開くところまでは至れない。


『では先程の神獣のような存在が開けたのでは?』

――― 確かに考えられるが、獣レベルの存在があんな繊細な鍵穴に鍵を通すことなど出来ようか。




神木の聖域は神聖な場所だ。しかし、今のレイたちはここを神聖な場所だと認識するのには結構な抵抗がある。

理由は簡単、このダンジョンの存在である。


聖域なのにこんなに警戒して、さらに聖域とは似ても似合わないこの薄暗さと来た。

一味の不安は募るばかり。





この先に何があるのだろうか?

5人はさらに深く潜っていくのだった。






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