表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第8章 混沌が漂うこの国で 《ラスト・サーヴァント》
106/110

レベル96 解決策 《クルスオード》


再びイーストデルトに戻ってきた一味は、そのままアリナ宅へ。


「・・・そう、やはり手強い敵だったのね。」


「お母さんもグレンデルと戦ったことあるの?」


「勿論よ。グレンデルはあの湿原にしか出現しないレアな魔物なの。興味本位で行ってみたことがあるわ。」


グレンデルはその能力以上に、その戦術が厄介だ。おそらく戦い慣れをしているのだろう。そして他の魔物に指示を出し、ゲームメイクの資質もある。

あの湿原の道中でそう何体も来られると、ペンダントがいくらあっても厳しい。まず第一に、ペンダントはかなり値が張る代物だ。


「・・・やはり蘇生魔法を覚えてもらうしかねぇな。」


「え?それって誰が覚えるの?」


芽衣はともかく、一味の中で蘇生魔法の素質があるのはただ一人。


「みお姉しかいねーよ。他は職業的に素質がないからな。」


蘇生魔法の素質がある職業は神官と司祭の二つのみ。この中でその職業についているのはミオンだけである、司祭と終い的な位置づけにある賢者は、確かに魔法専門ではあるが系統が異なる。

アークレンジャーの芽衣が覚えているのは、まぁ例外中の例外だ。


「でもなぁ・・・どこまでレベルアップすれば覚えられるものなの?」


「そうですね・・・蘇生魔法は二種類ありますが、覚えやすい『ブレッシュライブ』が直近で覚えられる魔法です。」

「司祭職ですと、覚えられるレベルは・・・


アリナは棚から魔導書を取り出し、司祭職のページをめくってみると・・・


「うわッ・・・これは中々厳しいですね・・・」

「え?そんなに?」


「はい、なんとレベル25だそうです。」

「「「25ッ??!!」」」


現在のミオンは司祭レベル9、今から16レベル上げねば習得出来ない。


「さ、さすがに16はきついな・・・」


補正スキルが掛かっているレイやシェリーならもしかしたら・・・しかし、ミオンは補正スキルはかかっていない。


「・・・そんな早くに蘇生手段が欲しいなら、別の方法も無いわけではないわ。」


と言ったのは、途方に暮れる一味を一歩後ろで見ていたリオナ。


「そ、そうなのお母さん?」


「えぇ、まぁ・・・でも、これはそのレベル上げより高い壁かもしれないわよ?」


「・・・というと?」






~~~~~



「何かちょっと緊張しますね・・・」



現在一味がいるのは、クルスオード帝国の帝国城。

リオナが差し出したもう一つの蘇生手段、それを求めてやってきたのが今の状況。しかしその蘇生手段がこの帝国城にあるわけではない。



「あら、ようこそいらしてくれました。」


王室の間で迎えてくれたのは、あの一件から女王になった帝国24代目国王のフィオナ妃。といっても彼女はまだ17歳なので、前王妃だったエフィラ皇后と女王の妹であるメイリア王女の二人が補佐としてついている。

前国王はというと現在政界を引退して、ただのお父さんとして生活しているようだ。


「また再びこの国にお越しくださいまして、誠に有難うございます。是非ゆっくりしていってくださいね。」


「あぁ、ありがとう。」


「・・・シェリーさんも逞しくなられたようで、我々も嬉しいです。あなたは帝国の希望、これからも励んでいってくださいね。」


「・・・ありがとう、王妃さん!」



「そして、ここに来たのはもう一つ理由があるんだ。・・いや、むしろこれがここに来た本当の理由なんだが・・・」


「はい、どのようなご用件でしょうか?」


「あぁ、実はな・・・『神木の聖域』に入る事を許可して欲しいんだ。」



『神木の聖域』とはその名の通り、神のチカラが宿る神木がそびえたつ神聖な空間である。

ここから北のベルディークの塔よりまたさらに北方の地にある聖域で、その場への侵入は領土として納める帝国の許可が絶対に必要なのだ。これは各国の国際会議で昔から定められていることだ。


レイたちがここに行かせてくれと頼むのには理由があり、この場で得られる『神木の源』が目当てなのだ。

『神木の源』とは不思議なチカラが宿った水で、使うと瀕死状態の味方一人を完全に回復させる効果を持つ。芽衣が覚えている上位蘇生魔法『ブリッシュヴェール』と同じ効果だ。


「どうだろう・・・俺達が行くのは大丈夫か?」



問いかける先では3人ともがそのまま黙ってしまう。やはりさすがに簡単には決められないことなのだろう、その表情がそれを語っている。


「あ、いや・・・もしダメなら別にいいんだが・・・」



それから長い沈黙の後、口を開いたのはエフィラ皇后。



「・・・ついに恩を返す時が来たようですね。」


「え?」


皇后は続けて、


「承知しました。あなたたちが聖域に踏み入れる事を許可いたします。」


「ホントか・・・?!」


「はい・・・あなたたちにはこの国を救っていただきました。そのようなお方の頼み、聞き入れぬわけにはいきません。」


「で、でもさっき結構な時間考えてなかったか・・・?」


すると今度は横にいたフィオナ女王が、


「はい、あの場へ無断に立ち入ることを禁じているのは第一に『神木の源』の乱獲阻止のため。」


「しかしあなたたちなら、そのような事をしないと信じました。どうぞ、自分たちの修行にお役立てください。」


「あ、あぁ・・・ありがとう。」


どうやら帝国のレイたちへの信用は予想より大きかったようだ。リオナがレイたちに言った高い壁を、その大きな信用で乗り切ることが出来た。


「あの時の恩を少しずつ返しているだけです。むしろまたこの地に来てくださったことにも、我々は感謝致します。では準備が整いましたら、メイリアの方までお願いします。」


「あぁそうだな。シェリー、久々にお墓参り言ってきたらどうだ?大分日を置いたから掃除もしなきゃだろ?」


「確かにそうだね!汚くなってたらどうしよう・・・」


「それなら、マイアさんの供養墓は代わりに私達が清掃と供養を行っています。・・・もし不快に感じられましたら、今後あの場に立ち入ることは致しません。」


「ううん、ありがとう!よろしくお願いします!」


「そうですか・・・!では今後も務めさせていただきます。」




~~~~~




シェリーのお墓参りも終わり、一味はメイリア王女と共に北方の神木の聖域へ。しかし王女と言っても実はシェリーとほぼ同い年。なので口調も先程のようなお堅い感じではなく、


「久しぶりに外出たわ!空気美味しいわね~!!」


このように、非常にフレンドリーな感じである。

メイリアは以前、暗黒洞(ダークサイト)でベヒーモスから助けてもらった縁もあり、レイたちをあの二人よりも知っている。


「でもレイさんたち、あの焔王妃まで倒しちゃうなんてすごいなぁ!こっちまで噂が届いてきたんだよ!」


「ま、俺の活躍が知れ渡るのは悪くない、うん」ドヤッ

「そのドヤ顔も変わらないね!」


「でもメイリアさん、またあの時みたいにどこか抜け出していそうな感じなんですけどね・・・」


「大丈夫だよアリナさん、今はちゃんと衛兵さんたちも付き添いしてもらってるから!」


お転婆な性格も変わっていないようだ、確かあの時もそんな理由で迷子になったんだっけ・・・


「・・・でもわざわざ聖域行くのにメイリアを連れて行くのって、なんか理由でもあんのか?」


「うん、あの聖域の門を開けられるのは王族の一部の人だけなんだって。だから私が来たの。」


神木の聖域に立ち入るには、その入口にある門を開けない限り入れないらしい。またその門は特殊な魔法を掛けており、開くにはその魔法による一時的な解除が必要になる。

帝国側に侵入の許可をもらわないと立ち入ることが出来ないこの聖域だが、もう一つの理由にこのようなものがある。



それからまた少しの時間が経ち、一味と王女はその門の前へ。


「これがその門か・・・でけぇな」


「それに・・・微かではありますが魔力も感じます。」


「え?そんなの感じるのか?」


「はい、魔法陣の魔力は普通の詠唱魔法と比べて、持つ魔力の力量が少ないと言われています。つまり察知するには弱すぎる魔力なのです。」


「じゃあそんな魔法陣はすぐに破られるんじゃないか?」


「いいえ、そういうわけでもありません。確かに感じる魔力は弱いですが、それは陣自体の補強に充てているからです。」


魔法陣に込められた魔力は、普段使っている魔法とは異なる系統の魔法術だ。そして魔法陣にとって他方に自分の存在を察知されることは、あまり好ましくない。

よって詠唱の際に術者はその魔力をより魔法陣のチカラに傾け、『気づかれなくて強い陣』を形成することが多いのだ。どれくらい魔力を傾けるかは、その術者の力量次第であるのだが。


「じゃあ門開けるよ。みんなちょっと下がって待ってて。」


メイリアは5人が自分から下がったのを確認すると、その大きな門に自分の右手を当てて魔力を注ぎ込む。

下がってと言ったのは、この時に唱える詠唱を聞かれないようにするためだ。実際今のメイリアは注意しないと聞こえないくらいの声で唱えている。


「~~~・・・・、えいッ!」



詠唱が終わると、メイリアは右手で強く門を前へ押した。するとあの重々しい門がゆっくりと開いていき、中にある聖域の姿をレイたちに現した。


「・・・はい、これで行けるよ。ちなみにここを閉める時も魔法掛けないとだから一緒についていくよ。」


「なぁメイリア、ここって魔物出るのか?」


「ここは不思議なチカラがあるから、魔物がここに来ることは滅多に無いよ。しかも入口は魔法陣で封じてるからね、可能性はゼロじゃないかなぁ。」


「じゃあこの聖域内はただの探索になりますね・・・良かった。」


「いや良くねぇだろ、レベル上げ出来ないのは最悪だ。」


「でもさ、たまにはこういった探索型クエストみたいなのもいいかもね、気分転換にもなるし。」


「はぁ・・・ま、いいか。みんなよく探していけよ、目当ては神木の源だ。でも取り過ぎるなよ、一人一本くらいでいいぞ。」

「「「「は~い」」」」




神木の聖域はかなり大きな規模の聖域である。中央にそびえ立つ大神木を中心にして、そこから波紋状に広がる形でその空間を成している。

さらにこの域内の空気中には、無数の光の粒が辺りを漂っている。神聖な場所にありがちな光景がここにもあるようだ。

これらはそれぞれの木に宿る精霊の化身のようなものであり、この聖域を護るためのいわば衛兵のような役割を担っているのだそう。

そのため、悪の意識を持つ者は光の粒たちによって追い出されるのだが、レイたちはまだこの聖域で探索を続けている。

どうやら精霊たちは一味の存在を認めたようだ。


5人はしばらくの時間が経ったら再び入口付近に集合する形を取り、今はそれぞれ散らばって探索中。メイリアはミオンと一緒に行動している。

さて・・・今はシェリーにスポットを当ててみよう、どうやら面白いものを見つけたようだ。



「おっきい・・・!」



シェリーは今、入口以上に大きい門の前にたどり着いた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ