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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第7章 残り香は、ただ漂うままに 《エンブレム・ヘラウィザード》
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レベル92 英雄 《ブレイブ》


「待ってたよ、レイくん・・・!!!」




身に纏うのは紅に輝く竜輝の鎧、右手に持つのは業火を放つ竜王の剣

放つ眼光は、あの時のとは比べ物にならないほどの覇気を感じる



紅騎士(エルドラド) レイ=ベルディアが、焔王妃の前に立ち憚った。



「すまんみお姉、ちょっと遅くなっちまった。」



騎士覚醒を果たしたレイが差し出す手は、あの時よりもチカラを感じる。そしてその手を借りて再び起き上がるミオン、


「遅すぎだよ・・・でも、信じてよかった!来てくれてありがとう・・・!!!」


不意に涙がこぼれてしまう。力強く血の通ったその左手に安心感を得たのだろうか、心なしか身体も軽くなっていくような・・・

精神状態は身体まで影響するものなのかと、少し驚いてしまうことも。

・・・いや、これって本当に回復してる・・・?



『スキル5;「ブレイブ」が発動しました。』



ステータスパネルを開いてみると、自分のだけでなくパーティー内全員の体力がみるみる回復していく。

さらにパーティーメンバーでないリオナまで回復しているようだ、倒れていたリオナも今はゆっくりだが立ちあがっている。

突然発動したこのスキル、発動者は


――― レイ=ベルディア 



『スキル5;「ブレイブ」

 発動条件;特殊条件下

 発動内容;あふれる勇気の志が強く共鳴し、味方全員の体力が限界まで回復する。また、この効果は一定時間持続する。』



気付けば翠騎士(クーフーリン) フィルまで参上し、ついに獣騎士全員がここに集結した。

先程まで虫の息状態だったシェリーが、今はスキルたちの効果でみるみる体力が回復していく。


段々と息を吹き返すレイたちを前に、シル・ガイアはただ黙って様子を見る・・・



はずがなかった。



『ッ!・・・出てきなさい!!』



次の瞬間、シル・ガイアの周りに無数のペーディオゾンビが召喚された。文字通り、あの時のペーディオをゾンビ化した魔物だ。

しかしその強さは、かつて神代の祠で戦った時以上だ。さらに数は限りなく多い。



『獣騎士が来たから何?だったら圧倒的な数で倒すまでよ・・・!!!!!』



「・・・ふぅ」


『スキル2;「ルート」が発動します。』



敵は覚醒したシル・ガイアと無数のペーディオゾンビ、対するこちらは体力が回復した7人。しかしうち一人はスキル効果で戦闘復帰には難しい。



「・・・賢者二人とフィルはそのザコモンを一掃してくれ!どうやら物理攻撃はほとんど効かないらしい。みお姉はその子が復帰するまで守ってやってくれ!」


「・・んでシェリー、お前は俺と一緒にラスボス戦だ。いいな?」

「うん!行けるよ!」





最終決戦が、幕を上げる。





♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


とはいえ、今のシル・ガイアには一切の魔法攻撃がまだ効かない状態。レイは状態異常魔法を使った攻撃がしたいようだ。

よって最初の攻撃は、ケミックステルの効果を消す所が始まる。



「エヴィウス頼んだ!」

――― !!! ―――



エヴィウスの放った灼熱の波動により、シル・ガイアに掛かっていた全ての相乗効果がたった今かき消された。

ケミックステル効果は消え、シル・ガイアに魔法が届くようになった。



『・・・あら、この厄介な効果を消してくれたのね。感謝するわ。』


「しかしこれでお前はあらゆる呪文が効くようになったわけだ。」


『でも私ってかなりの魔法に耐性があるのだけど、ご存知かしら?』


「あぁ、スキルでは確かにそう見えた。」


『じゃあ魔法が使えるようになったって意味ないじゃない。ただ私の回復手段が使えるようになっただけよ?』


「・・・だが、お前はただ一つの魔法攻撃に対して、耐性が著しく欠けているようだな。」


『・・・?』


「ハハッ、どうやら分かんねぇみたいだな。じゃあ見せてやる。」



レイは剣を腰にしまい、シル・ガイアへスペルを撃ち出した。

レイは、呪文を唱えた。



「『バゴルディ』!」



青いスペルがシル・ガイアへ放たれると、たちまちシル・ガイアに吸い込まれる形で溶け込んでいき、シル・ガイアにとある効果を与えた。

シル・ガイアは、この魔法の正体がわかっていない。



『・・・結局何したかったのかしら?今私に何の効果も出ていないけれど。』


「分かんねぇならもうけモンだぜ。けどまぁ、すぐに分かるはずだ。」


『へぇ・・・それは楽しみね。』


「・・・おいどうした?かかって来いよ。」


『あら、ではそうさせてもらうわ。』



シル・ガイアは両腕の拳を強く握り、同時に発動した暗黒のスペルを両腕に纏い、

高速でレイに迫りかかる。



魔神撃(デスブレイク)ッ!!砕け散れッ!!』



!!!!!



が、



「・・・おいどうした?どうやら覚醒したようだが、チカラは全然大したことねぇな。」



振り下ろされた両腕を、レイは何と片手で受け止めているのだ。


『・・・?!』


シル・ガイアはさらにチカラを入れようとするが、なぜかチカラが全然入らない。

さらにもっと言えば、さっきまではシェリーを岩壁に軽く投げ飛ばすほどのチカラを持っていたはずだ。

それが今では片手で両腕の攻撃を受け止められている。


『まさか・・・さっきのヤツは・・・!!』



「・・気付くの遅すぎだろ。今お前の攻撃力はさっきの半分以下だ。」



一時的に相手の攻撃力を下げる攻撃力減少魔法こそこの『バゴルディ』である。しかしこれは状態異常魔法ではなく能力向上魔法に含まれるため、ほどんどの対象はこれに対する耐性を持ち合わせていない。それはシル・ガイアも例外ではない。

だがその圧倒的無敵度を誇るために、ヒットする確率は結構低いのだが。


今のシル・ガイアの攻撃力は、レベル35くらいのソルジャーくらいの数値だ。



「・・・じゃあシェリー、そろそろお前も出番だ。いいか?お前は狙撃専門だから、この前覚えたあの呪文を使っていけ。」


「・・・あれって効くの?」


「まぁヒットする確率はお察し状態だが、その呪文以外にお前は魔力を消費する宛がない。だから使わないのは勿体ないだろ?」


「たしかに・・・じゃあやってみる!」



『何をさっきからごちゃごちゃ言ってるのかしら・・・あと別に物理攻撃が出来なくたって、攻撃手段なんていくらでもあるわ。』


「じゃあ早くかかって来いよっつってんの。」


『そうさせてもらうわッ』





♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「んっ・・・うぅ・・・」


ミオンの膝の上で、カイは目を覚ましたようだ。レイのスキル効果もあり、今のカイの体力は満タンに近い。


「・・・お、起きたみたいだね。」


「・・・ッ!シル・ガイアは?!ヤツはどうしたんだ!?」


「あぁ、それならあそこで頑張って戦ってるよ。」


二人の視界の先では無数のペーディオゾンビと戦う3人の姿や、覚醒した焔王妃と戦う2人の姿。

しかし先程自分が見てきた仲間たちは、ここまでチカラを持ってはいなかったはずだ。

アリナが放つ魔法攻撃は、あそこまでの威力を持っていただろうか?

シェリーの動きはあそこまで素早く、そしてあんなにも活力の満ちたものだっただろうか?

そしてその理由も、カイは一発で分かった。



目の前で紅く輝き、強者のオーラを放ち続ける。




「誰だ・・・あれ・・・」



「・・・あれはレイくん。紅騎士レイ=ベルディア、私達のリーダー。」



「・・・」



「あそこまで強くなるのに数えきれないくらい負けて、突き落とされて、つらい思いをして。」



「それでも立ち上がってきた。何度も何度も立ち上がって、そしてその度に強くなって。」



「例え相手に倒されても、何度でも立ち上がる。例え焔王妃でもかなわない!」



「・・・それがレイくん。私達を護るヒーローで、あなたの未来のお父さんだよ。」




数々の苦難に立ち向かい、その度にチカラを得て強くなる。

最初の旅立ちでは想像も出来なかった所まで。

相手は上級悪魔、霊体魔、幻魔王に魔王獣。例え圧倒的に不利な状況でも、強さを見つけて乗り越えてきた。

業火を纏う、烈火の紅騎士 ―――




「すげぇ・・・・・」







戦闘はしだいに終盤に差し掛かる。



『ハァハァ・・・クソッ!早くひれ伏しなさい・・・・!!!』



2人の高速連撃の数々に、対応しきれなくなってきたようだ。息を荒げる姿は、先程よりも激しい。

しかしそれは二人にも言えることだ。二人は高速連撃を繰り返している上に、シル・ガイアの攻撃も数々と受けている。

双方ともに、体力は大きくすり減っていた。他の3人も、無数の敵なだけにその消耗度も大きい。


早く倒さないと、自分が倒される。



竜王殺(デスドラゴ)ッ!!」



レイが繰り出す烈火の斬撃を、シル・ガイアは正面から受け止める。




『ウウウゥゥゥ・・・・・!!!!!ウゥァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!』



斬撃を受け止めるシル・ガイア、しかし先程と雰囲気が違う。

斬撃を食い止めるその姿から、段々と暗黒のオーラがにじみ出る。

そんなッ・・・ウソだろ・・・?




「(まだチカラを持ってんのかよ・・・??!!)」





『アアアアアアアアア!!!!!!!!!!!』






シル・ガイアは、烈火の斬撃を打ち消した。

そしてその瞬間に、シル・ガイアから暗黒の波動が四方へ放たれる。



!!!!!!!!!

「クッ・・!!」









波動が収まったのを確認したレイ。瞬時に閉ざした目を開けて、味方の安全を伺う。


「おいシェリー!!だいじょうb ――――


が、




「」




返事がない。



「お、おい!!シェリー!!みんな!!」


今度は周囲を見渡す。



「」

「」

「」

「」

「」

「」




しかし、結果はシェリーと同じ。




彼らの時間が、止められてしまった。


このフィールドで動く者は、紅騎士(エルドラド)と焔王妃の二人だけ。

あの守護獣でさえも、今はまったく動かない。


そして、






『殺ス・・・殺ス・・・レイベルディア・・・ゼッタイニ殺シテヤル・・・!!!!』







狂気を極限まで解放した、史上最恐の大悪魔。







『“焔王の化身” シル・ガイアが現れた。』






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