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凡人な僕は異世界の冒険者。  作者: えびちゃん
凡人、異世界入りする。
1/1

【目覚め】

 結末から言ってしまおう。



 この物語には救いがない。救いようがない。


 僕はただの人だ。人間だ。何処にでもいる、ただの高校生だ。

 世界を守る事なんて出来ない。剣なんて触った事ない。魔法なんて使えない。お姫様を助けになんて到底ムリだ。むしろ、僕を助けてほしい。


 ぐじゅっ!


 そんな音がする。


「ひぇぁっ」


 自分でも情けない、と思う声が出た。

 怖い・・・と言うよりも、気持ちが悪い。

 ドブ川の水で作ったゼリーの様な物がズリズリ、と擦り寄って来る。いや、じゅりじゅり、と擦り寄って来ている。

 僕の膝以上の大きさのあるゼリーが、だ。


 落ち着け、落ち着け。


 深呼吸してみる。幸い、ゼリーの擦り寄るスピードは早くない。

 状況を整理しよう。


 ―――寝て目を覚ましたら何故か森に居て巨大なゼリーに襲われている。


 以上!

 うん、意味が分からん。


 状況を整理してみたが、状況を把握するには至らずだ。

 次は状況を打破を試みる。

 辺りを見渡し、足元にあった石を拾う。

 やる事はただ一つ。モーションをとって、ゼリーに向かって全力で投げ付ける。

 ゼリーと僕との距離は数メートル程。野球なんて体育の授業位でしかやった事ないが、この距離を外す事は凡人な僕でも有り得ない。


 ぼむっ!


 泥に石を投げたような音と感触。

 見た目通り、ゼリーには水分がたっぷり含まれているらしい。


 どうだろうか、と僕はゼリーを観察する。

 少しゼリーが飛び散った、と思う。

 じゅるじゅると動いていたドブ川ゼリーは動きを止めていた。

 前のめりになっていたと思う。


 耳元を何かが掠って行った。


 音と同時に背後にあった木に拳程の穴が空いた。


 遅れて、熱と、痛みと、血が、僕の頬から―――。


「―――うわぁぁああああぁぁぁ!!!」


 きっと僕は今まさに、目を覚ましたのだろう。

―――僕は走り出した。逃げ出した。

 きっと今まで眠っていたのだ。

―――ゼリー状の謎の生物らしきものから全力で。

 まず、地球上にあんな生物は存在しない、

―――そこは森の中だった。木々の枝や草の葉が体を傷付ける。

 観察?石を投げ付ける?何をやっているんだ僕は…っ!

―――足が縺れたのか。何かに引っ掛けたのか、身体が宙を舞う。


「あっぐ……」


 地面に叩き付けられる。

 ここまで盛大に転んだのはいつぶりだろうか。

 そんなどうでもいい事が頭を過ぎるが、すぐさま、我に返って背後を振り返る。


 そこにゼリーは居なかった。

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