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始まり ~謎の女神と導きの園~

さぁ、起きなさい────

さぁサキ、目覚めるのです────


優しい声が私の頭にこだまする。私はその声に従うように体を起こした。

辺りを見渡す。草原だ。見渡す限り延々と草原が続いている。

「なんだ、夢か」

そう言うと、私はまた体を横にした。


あなたは、死にました────


え?何を言い出すんだ、急に。まったく迷惑な夢だ。起こしてきたと思ったら次は『死にました』って。冗談にしたって趣味が悪すぎる。


思い出せませんか?──

なら、あなたの記憶を(さかのぼ)りましょう────


人の睡眠邪魔しといて、勝手に話を進めた。

頭が急に痛くなる。


あなたはここに来る1時間前、就職面接を受けるため家を出ました────


目の前が急に暗くなって今朝の自分が映し出された。そういえば今日も面接だった。どうせ落ちると分かっていても行かなくてはいけないのを憂鬱(ゆううつ)に感じていた。そのあと確か────


思い出しましたか?────


ああ、思い出した。交差点の真ん中に女の子が転んでたんだ。信号は赤。トラックが走ってきて女の子をはねそうになった。私は不意に飛び出した。どうしてだろう?面倒事は嫌いなのに。


思い出した。ゴムの焦げた臭い。排ガスの臭い。血の臭いもしてたっけ。

薄れていく視界の端にさっきの女の子が大人たちに囲まれて立っていた。あぁ、助けられたんだ。よかった────


目の前が明るくなると、そこには絵画から出てきたかのような美しい女性が立っていた。純白のドレスに身を包み、絹のような美しい髪を携えた彼女は私に尋ねた。


「私は、導きの女神レイ。衣笠サキ、あなたには2つの選択

肢があります」

「ちょっと待ってね。話が急過ぎて追い付けてないよ。まず、私は死んだんだよね」

「はい。あなたは今朝の事故でお亡くなりになりました」

「それじゃあ、ここは天国なの?」

「いえ。ここは“導きの園”です。ここではあなたの次の行き先を決めるのです。」

「なるほどねぇ。それで、2つの選択肢ってことだ。」

「そのとおりでございます。」

「それで、2つの選択肢って何なの?」

「説明いたしましょう。1つ目はこのまま成仏され、無になるという選択です」

「おお。これは分かりやすい選択肢だね・・・・」

「もうひとつは“転生”です」

「転生?」

「はい。地球ではアニメやラノベ?と言われるものでお馴染みだと伺ったのですが・・・・」


誰だ、女神様におかしな事教えたのは。とはいえ、私以外にもここに来た人がいるってことか。


「転生ね。分かるよ。ってことは異世界にでもいけるの?」

「平たく言えばそのとおりでございます。」


異世界転生と言えば、こっちの世界じゃ魔王討伐って設定が定番だけど。ここの異世界転生は何させられるんだろ?


「ですが、ただ転生してもらうだけではなくあちらの世界でやってもらいたい事がございまして、、、」


おお、やっぱりタダでって訳じゃないんだね。なにさせられるんだろ。少し興奮しているのが分かる。こんなのは創作の世界の話だと思ってた。だけど、今は自分が体験してる。興奮しない筈がない。


「やってもらいたいこと。それは、“魔王討伐”です」


彼女は笑顔でそう言った。

ここから、物語が始まる。そんな気がした。


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