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SNSは怖い

セパス>「たまたまです。あなたの名前の由来(ゆらい)はなんですか?」


アヌトロフ>「プロフィールを見る限り、ワイン好きな高校生というわけではないですよね?」


セパス>「こちらの質問に答えてください」


アヌトロフ>「すみません、こちらも特に深い意味はありません。でもあなたはこの名前に身に覚えがあるようですね」


セパス>「そちらこそ、見覚えがあるからこのアカウントにメッセージを送って来たんじゃないんですか?」


アヌトロフ>「そうです。みつけたのはたまたまです。『セパス』の名前の意味は検索しましたか?」


セパス>「あなたからメッセージがきて初めて検索しました。あなたは?」


アヌトロフ>「私はずいぶん前に一度だけ。スペルがわかればもっとヒット数が増えると思うんですが、そのスペルがわかりません」


セパス>「こちらも同じく」


アヌトロフ>「メッセージだけだと限度があるので、会って話をしませんか? 私たち、案外近いところに住んでるみたいなので」




 アヌトロフが僕のアカウントのプロフィールや、さりげないヴォイス――ヴォイシンク上の誰でも閲覧(えつらん)可能な書き込みことだ――をどれだけさかのぼったのか、少しだけゾッとした。


 決して僕は有名人ではない。


 有名人になりたいとも思っていないので、ヴォイシンクでのつながりもリアルで付き合いがある人だけ。


 ワンウェイフレンズ――フォロー登録されても、知っている相手でない限り、その相手とミューチュアルフレンド――相互(そうご)フレンズになることはない。


 高校に入学してすぐに行われた、新入生オリエンテーション。

 暗幕(あんまく)が引かれ、体育館のステージ上のスクリーンに映し出されたのは、ソーシャルネットワーキングサービス、ニュースでも簡単に「SNS」と(りゃく)してしまう言葉に(ひそ)む危険性、それとモバイルゲームの課金問題や架空(かくう)請求(せいきゅう)への対処法など。


 最後は、ヴォイシンクなどの有名SNSサイト掲示板を使ったいじめに関するショートムービーの上映。


 怖いなとは思ったけど、だからといって、それでセキュリティモードを上げようとは思わなかった。

 課金してまでゲームする気はなかったし、スマホに送られてくる知らないアドレスからのメッセージは徹底的に無視。

 ショートムービーでは「学校裏サイト」なんて言われていたけど、自分が今通っている高校にそんなものが存在しているとして、今のところ僕がそこで騒がれているような気配はない。


 それは周りの反応を見ればすぐにわかる。


 でも、一度騒がれたらただではすまない。消火したとしても燃え(あと)が残る。なぜ燃えたのかと現場検証に来る人だっている。


 だから、目立たないことをモットーとし、ヴォイシンクでは身内だけのつながりとはいえ、住んでいる場所がばれるような屋外での撮影写真は控えてきたはずなのに――と、自分のヴォイスや所属コミュニティなどを見ていて、「あー」と思わず間抜けな声が漏れた。


 ――都立S南高校写真部の会


「これだ」


 そのまんまじゃないか。


 コミューンの様々な掲示板の中に、「最近の一枚」と言って、参加者が写真を貼る場所がある。

 コミューン内のやり取りは、それぞれのコミューンのセキュリティ設定にもよるが、基本的に、一般的な検索エンジンに引っかからない設定になっている。

 SNSのどれもがそうなっているらしい。


 なので、ヴォイスのほうには載せなくとも、参加コミューンに写真を載せていた。


 写真部に桜の撮影を頼まれた時、引きの一枚、校舎と桜を写した写真を載せた。

 「セパス」という名前を使って。


 アヌトロフはよくここまで潜り込んできたというか……、学校の名前付きコミューンなんて個人情報を持って行ってくださいと言わんばかりではないか。


 アヌトロフからのメッセージを知らせるベルを無視し、参加コミューンを未公開設定に切り替えた。



 今日学んだこと、SNSは怖い。



 小学生の頃なら先生から花丸か、桜をかたどった金色のシールがもらえたことだろう。


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