誰がなるか 付き人になるか
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「あれ? この夢、前にも見た」ってことない?
しかも小さい頃からずっと。妙に記憶に残る夢。
小さい頃は予知夢なんて信じてたけど、まったくこの世界と違う場所だって気づいたのは小学生の頃。
ちょうど、テレビで世界遺産の番組を見た時かな。
あ、夢で見る景色に似てるって、そう思ったの。
でもね、やっぱり夢だなって思ったの。
だってね、その夢の中で私は男なの。
騎士って名前を覚えたのはもう少し成長してから。その前までは夢の中の自分のこと戦士って呼んでた。
テレビでヒーロー番組とか見たり、女の子なのにヒーローショーに夢中になったり。
だけど、夢の中の自分を「ヒーロー」とは思わなかった。
だって、ヒーローの中の人みたいな若い人じゃなかったし、外国人だよね。
青い目で、金髪。長身で大きな槍を持ってるの。
ヒーローは素手で戦ったり、今時のハイテクな武器で変身したり、専用の乗り物に乗って合体したりするじゃん。
そういうのもなかったから、ヒーローだとは思わなかった。
社会の資料集をペラペラとめくってる時にね、「あ、これだ」と思ったのが騎士の甲冑だった。
ちょうど昔の海外ファンタジー作品がたくさん映画化されてる時期で、親に頼んでレンタルショップで借りて見たのは夢の影響だと思う。
夢だってわかってるんだよ。
だけど、なんとなくただの夢じゃないって思ったの。
だって、そういうファンタジー映画を見る前から私はそういう世界を夢で見てたんだもの。
ってことはね、そんな世界を私はずっと前から知ってたってことじゃない?
夢のことなんて詳しくないから、はっきりとは言えないけどね。
何度も見る夢でね、たくさん仲間がいて、王様がいて、王妃様がいて。
なんとなく「アーサー王伝説」に似てるなって思ったの。
私って気になったらとことんなんだよね。
元々本を読むのも好きだったから、そういう中世の話をたくさん読んでた。今もね、本屋さんに行くと思わず手に取る。
その夢を見るきっかけがなんなのかはわからない。
二日連続で見ることもあれば、忘れた頃に見ることもある。
もしかしたら、前世の記憶なのかなって思って、前世占いに行ったんだけどね。ショッピングセンターの中の片隅にひっそりあるやつ。
「あなたの前世は豊臣家にゆかりのある人物です」とかって、それって関ヶ原で負けるほうじゃんって。
ああいうのってやっぱりインチキなのかなあ?
とにかくね、夢の中で私はずっと探し続けてるの。
「エトネパス」って、何語かもわからない本。
その本は万能の書で、なんでも願いを叶えてくれる。それはわかってるの。
夢の中の私は、王のためにその本を探し続ける騎士なんだ。
――そう思ってた。始めはね。