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「誰が僕を殺した?」

 友達の中に、寝ている時に金縛りにあうという人がいる。


 いまだに自分の前世は信じきれてないけれど、霊現象は少し信じている。


 だけど、金縛りは、あった本人が寝ぼけていたとか、身体が疲れている時に起こる現象だとか、必ずしもオカルト的な要因だけで起きるものではないと、何かで読んだ気がした。


 その友達は、金縛りにあう晩は、決まって予感がすると言っていた。


 ――今日は金縛りにあいそうだ。


 聞いてたみんなで冗談だと笑い飛ばしたけれど、僕は心の隅で共感していた。

 僕の場合も、あの夢を見そうな日は、寝る前になんとなく予感があるのだ。


 ――あの夢を見そうだ。


 それは高校生になった今でも続いている。


 雲雀と出会い、仲間探しを始めて約二か月。その間、あの夢は見ていなかった。


 だけど、雲雀とノイセテスで別れたそのタイミングで、結局なんのメッセージも送れず、布団にもぐりこんだ時、「夢を見そうだ」という予感がきた。


 今夜の夢の内容を雲雀に話そう。

 それで、気まずい雰囲気を帳消しにしよう。


 そう思っていた。


 なのに――



 恐怖で目が覚めたのは初めてのことだった。

 いままでそんな恐怖にさらされたことがなかったからだ。


 目を開いた瞬間、酸素を求めて喉が喘鳴(ぜいめい)した。

 寝汗も酷い。

 起き上がり、荒い呼吸を繰り返す。

 心臓が激しく鼓動する。


 まだ外は暗い。


 呼吸が、鼓動が落ち着いてきても恐怖は消えない。

 何度も夢で見た映像が蘇ってくる。


 凍えた王の部屋。

 テーブルには酒の瓶と、銀の(さかずき)

 その横に、セパスがいつもくつろぐ椅子があった。

 木で出来た、肘掛けつきの椅子。

 座面は広くて、隙間にクッションを置いていた。


 そこで、死んでいた。


 セパスが――僕が死んでいた。


 目を閉じて、顔は真っ白で。


 「死んでいる」という事実が僕の意識を眠りから強引に引きはがした。


 死んだ。

 僕は夢で死んだ。

 自分が死んでしまったかのように恐怖した。

 その恐怖がこびりついて離れない。


「なん、で?」


 思わず口を突いて出る言葉。


「なんで僕が死んでるんだ?」


 セパスは老人ではない。


 まだ三十代、見た目以上に歳をとっていたとしても、五十には達していないはずだ。

 だから老衰(ろうすい)のはずはない。


 何かしらの病気を抱えていたなんて、そんなこと、夢で見た記憶もない。

 ただ、軽い熱や傷などはゾヴが魔法や薬草を用いて治療してくれたことは覚えている。


 セパスが何かしらの病気に身体を(むしば)まれていたというのならば、薬をゾヴが調合したはずだ。

 それもなかった。


 だったら自然死?


 魂の抜けた人の顔。


 思い出して、また怖くなって子供のように膝を抱えて顔を埋める。


 僕は死んだ。

 夢の中で僕は死んだ。


 どうして?

 なぜ?


 恐怖を押しのけようと必死に頭を動かす。

 そして思考は「そこ」に着地する。



 ――誰が僕を殺したんだ?


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