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穏やかな灯 サティソルク

 次に雲雀からメッセージが届いたのは、その日の夜だった。


 風呂から上がって、スマホを確認すると、メッセージ受信の知らせがモニタに表示されていた。


――ドクターパズルこと、ゾヴさんから返信が来たよ。


 そのメッセージを見ながらモニタの画面を確認する。

 午後九時半を過ぎたところだ。

 髪を頭ごとタオルでこすりながら、続きの画面を読む。


――ゾヴさんは埼玉に住んて、そこでカウンセリングしてるんだって。偶然、同じ夢を見てる人と出会ったって。


 なるほど、カウンセラーか。


 カウンセラーが一体患者とどんな話をするのか具体的には知らない。


 高校にもカウンセラー室はあるけれど、将来の進路相談なの、学校生活においての不安を相談する場所って、一年生の時のオリエンテーションの時に説明されたけれど、保健室よろしく、僕には無縁の場所だ。


 スクールカウンセラーはまだ若い女の先生で、保健室の先生と並んで、女子に人気があるイメージが強い。


 どんな理由で、ドクターパズル――ゾヴのカウンセリングにかかっているのかはわからないが、ゾヴが僕らとの接触に慎重になっていた理由はよくわかった。


――その人、サティソルクの生まれ変わりみたい。


 サティソルク、頭の中で何度か名前を反芻(はんすう)して思い出す。


 青みがかった黒髪をオールバックで一本に結った、柔らかい雰囲気の男性だったと思う。

 歳は若いように見えたけど、思慮(しりょ)深いところから、早熟とか、見た目よりも実のところ老けているというのではないかと思っていた。


 あの、いかにも《十二の燭台》のカウンセラーみたいな男が、カウンセリングに通ってるって、前世の性格とか、夢は現実世界においてあまり作用しないということだろうか?


 実際、僕自身、セパス王っぽくないと思っている。


 どちらかといえば、今のところ雲雀のほうがセパスっぽい。


――そのサティソルクのほうから、コミューンの参加申し込みがあるだろうから、その時はよろしくって、ゾヴさんが言ってた。


 雲雀からのメッセージはそこで終わっていた。

 僕は頭をベッドに腰掛け、頭を拭く手をいったん止めて、雲雀に返信する。


――サティソルクに関する情報とかは?


 返事は五分ほど経ってから届いた。


――ゾヴさんは、コミュニケーションも兼ねて、あえてこちらからサティソルクの情報を提示しないって。それで、さっきコミューンに申込み申請があったから許可出しておいたよ。ディスカッションルームも作っておいたから。


 ディスカッションルームというのは、ヴォイシンクのコミューン上の名称で、要はグループチャットルームだ。


 早速、個人のメッセージページから≪十二の燭台≫のページに移動する。

 メンバーのところに、ドクターパズルことゾヴと、たぶんサティソルクであろう「ツグミ籠」という名前が並んでいた。


 一気にメンバーが二倍になった。

 といっても四人だけど。

 ディスカッションルームで、アヌトロフがツグミ籠に「こんばんは」と挨拶をしていた。



アヌトロフ>「ツグミ籠さん、こんばんは。そして初めまして。コミューン参加ありがとうございます」

アヌトロフ>「ツグミ籠さんは、サティソルクの生まれ変わりと聞きましたが、本当ですか?」

ツグミ籠>「生まれ変わり? なにそれ」

アヌトロフ>「あなたもあの、二つの月が浮かぶ世界の夢を見ていて、十二の燭台のメンバーの一人としての記憶があるんですよね? 私は、これを現世への転生だと思っています」

ツグミ籠>「他の人もそうなの? 僕はカウンセラーが勝手に話を合わせてるんだと思ってた。君だって、何か裏があるんじゃないの? 雇われているとかさ」

アヌトロフ>「そんなことはありません。現に、あの夢を見ている人でしか知りえない情報を持っている。私の名前だってそうです。そして、あなたは『穏やかな灯』と呼ばれていた。そうじゃありませんか?」

ツグミ籠>「そういう情報も、先生が僕から聞いた情報をまとめて君に渡した。そして、君はその情報に従って、こんな茶番を演じてる。はっきり言ったらどう?」


 雲雀とツグミ籠のやり取りに自然と指が動いていた。


セパス>「初めまして、ツグミ籠さん。アヌトロフに対してそんな言い方はないんじゃないんですか?」

ツグミ籠>「アヌトロフの複垢? とにかく、僕はあの夢を前世だなんて思ってないよ。なにかカラクリがあるんだと思ってる。先生から僕のことなんて聞いてるかわからないけど、薬を飲まなきゃいけないから、今日はもう抜けるから」


=ツグミ籠さんが退出しました=


 この場に雲雀がいたら、たぶん顔を見合わせていただろう。

 ツグミ籠ことサティソルクは僕らが夢で見る彼とは全く異なっていた。


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