07 DPを導入しよう
「ウィザー様、我らがリルガミンの迷宮でも、“DP”を導入しようと思うのですが、如何でしょうか」
「おおっ、ついに我がダンジョンにもDPの波がやってきたか!」
「おや、さすがウィザー様です。既にDPをご存知でしたか」
「仮にもダンジョン運営に携わる身、勿論知ってるとも。許可する、存分にやるがよい」
「はっ、ありがとうございます」
「で、何ポイント貯めたら、ダンジョンを拡張したりできるようになるんだ?」
「ダンジョンを拡張? いえ、そんなことは出来ませんが……」
「何、出来ないのか? では、モンスターを召喚するにはどの程度のポイントが必要なのだ」
「申し訳ありませんが、モンスターの召喚なども出来ません……」
「なんと!? では、DPを貯めることで、いったい何が出来るというのだ!」
「DP10ポイントで、タゴサクさんちの新鮮野菜と交換できます」
「タゴサクさんちの新鮮野菜っ!?」
「はい、既にタゴサクさんには話を通して――」
「――いや待て! 色々とツッコミどころが多いが、とりあえずそのタゴサクとやらは誰なのだ!?」
「ウィザー様、もう忘れたのですか? この間、クチカ村に生贄を要求しに行った際、最初に出会ったお爺ちゃんですよ」
「あいつタゴサクっていうの!?」
「はい、人間は食べ物だけに関してだけは上等なものを作りますからね。あれ以来ちょくちょく購入させてもらっているのです」
「どうりで、最近やたら食卓に野菜やら芋料理が並ぶと思ったら、あいつらが供給元だったのか!」
「冒険者たちはDPを貯めて新鮮野菜をゲット。私たちはダンジョンに挑む冒険者が増える。そしてタゴサクさんたちは野菜が売れる――と、まさにWin-Win-Winの関係を構築するわけです」
「……待て、何故冒険者がDPを貯めるのだ? DPを貯めるのは我らの方だろう」
「はて、ウィザー様。先ほどからどうも会話が噛み合っていないように感じるのですが、ウィザー様はいったいなんの話をしているのです?」
「何って、DP――“ダンジョンポイント”の話だろう?」
「なるほど、得心しました。どうりで会話が噛み合わないわけです。私の言うDPとは“ダンジョンポイント”のことではありません」
「なんだと? “ダンジョンポイント”でないなら、いったいなんだというのだ?」
「私の言うDPとは――“ドリィポイント”のことです」
「……そっかー、DPとはダンジョンポイントじゃなくて、ドリィポイントのことだったかー! 俺としたことが早とちりをしてしまったようだ!」
「フフ、嫌ですわ、ウィザー様ったら」
こうして、全宇宙でも初の試みとなる、ドリィポイント制がリルガミンの迷宮にて導入される運びとなった。
その結果がどうなったのかというと――
「――なぁ、ドリィよ。たまには芋料理ではなく、他のものも食べたいのだが……」
「ダメです! まだまだお芋は沢山あるんですから、ちゃんと食べてください!」
当然ながら、宣伝もなしにそんな制度を導入したところで冒険者がやってくるはずもなく、ウィザーたちの食卓には暫く野菜、特に芋が大量に並ぶことになった。
そして――
「はー、ドリィの嬢ちゃんに貰ったこの“おりはるこんのクワ”っつーのは凄いだべなー、土がサクサク掘れるべ」
「タゴサクどん、こっちの“ごーれむ”っつーカカシも便利だべよ。勝手に動いてカラスやらなんやらを追い払ってくれるだぁ」
「いやー、オラたちの体を治してくれるし、こんな便利なものまでくれるなんてなぁ。あの人らはほんに仏様のようなお方だぁ」
「タゴサクどん、仏様じゃなくて、まおー様だべ」
「あー、そうだったなぁ」
クチカ村で使用される農具のレベルが一気に跳ね上がり、より高品質な農作物が作られるようになったとさ。