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永遠の一秒  〜佐久間警部の帰郷〜(2024年編集)  作者: 佐久間 元三
差し迫る脅威
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秘密裏会議(2024年編集)

~ 十月十六日、深夜 警察庁 ~


 警察庁が、全国から、主要メンバーを緊急招集した。対象となったのは、以下のメンバーだ。


 警視総監 青山、警視庁捜査一課長 安藤、熊本県警察本部長 小峰、岡山県警察本部長 長田、大阪府警察本部長 菅沢、愛知県警察本部長 芝﨑である。


 組織を総括する警察庁内でも、箝口令を敷いているので、会議自体が秘密裏に開かれる。


 その中に、佐久間も、同席を許された。


「全都道府県の幹部だけには、通達が回っているが、熊本県と岡山県で、サリンによる殺人事件が発生。九州地方から山陰地方へと被害が拡大し、そのまま近畿地方、中部地方、そして首都圏へ移行する可能性も出てきた。警察庁公安部としては、異例であるが、全国展開するべく、主要メンバーによる、テロ対策特別チームを編成し、被害を最小限に食い止めたいと思う。本日招集した中から、優先的に精鋭を組んで、チームに参加させて頂きたい。無論、各自、思うところは忌憚なく、申し出てくれ」


 警視総監の青山が、口火を切った。


「予防観点から、早期の特別チームは賛成ですが、まだテロと()()するには、早いのではありませんか?サリンが使用されたとはいえ、事実上の被害者は、二名です。毒物対策本部として、中規模展開で様子見するのも、ありかと思うのですが?そもそも、特定の主義・主張も不明で、国家に対して、要求や受け入れの声明すら出ていません」


「青山くん、これはもう決定事項だ。ただの毒物ではなく、サリンなのだよ。サリン自体が、社会に恐怖を与え、日本国民の誰もが、過去の事件が脳裏に浮かび、テロである認識するだろう。松本サリン事件しかり、我々の判断が遅れる程、サリンの情報が漏れた時、マスコミは、世論を味方につけて、騒ぐだろう」


(………)


「そこまで腹を括っておられるなら、断る理由はありません。警視庁としては、佐久間を投入します。そして、彼をチームの指揮者に推薦します」


(当然、そうくるだろうとは思っていたよ)


「君も、人が悪いな」


「公私混同はしていませんし、化かし合いは、お互い様ですよ」


(秘蔵の弟子に全てを託すか)


「…各本部長は、それで良いか?」


「佐久間くんなら、統制も取れるでしょう。他の者も、協力しやすいし、何より切れ者だ」


「愛知県としても異議なし。彼には、ミステリー小説の事件で、協力してもらったからな」


「熊本県としても、異議ありません。相談したいと思っていたところです」


「佐久間警部、そういうことだ。この大局、乗り切れるか?」


(………)


「鋭意努力します、としか言えません。テロ対策特別チームとして、捜査を開始しますが、どの程度のテロに該当するかで、捜査方針を変えるかもしれませんので、検証してみます。念の為、サリンの治療薬は、主要の都道府県に配備させてください。それと、各消防本部や関係機関と、不測の事態について、水面下の非公式協議を、早急に済ませる必要があります」


「関係機関は、どこを軸で行うのかね?」


「国家レベルの非常時対応と評して、時間を掛けるべきではありません。都道府県知事に、警察庁から依頼をして頂き、トップダウン方式で進めるのが得策でしょう。協議といっても、名ばかりで、相手を立てるに過ぎません。警察庁が示す提案を、都道府県が、異議を唱えたり、論議に発展することがないよう、多少強引でも、協力を取り付けて頂ければ、助かります」


「了解した、すぐ対処しよう」


「安藤、東京都は、どのくらい治療薬が必要だ?」


「佐久間くん、説明を」


「警視庁は、科捜研経由で、現在、二千名分を確保しました。新宿区、港区、多摩地域の主要駅中心に配備します」


「大阪府はどうだ?」


「大阪府は、これからの手配となります。梅田や神戸に、五百名分を配備します」


「愛知県は?」


「栄区、豊田市、岡崎市に、五百名分は欲しいかと。これから手配しますので、集まるか不安ですが」


(なるほど。青山くんが、自信を持って推薦する訳だ)


 青山と目が合い、青山は、ニヤッとするだけだ。


「関係機関との調整は、警察庁が一手に引き受けよう。君には、捜査に集中して欲しい。初動が肝心なのだが、どう指揮を執る?」


 皆が、佐久間の発言を、静かに待った。


「明日にでも、二件の現場を、この目で見てこようと思います。飛行機なら、熊本市内と岡山市内の両方回れるはずです。共通点は、大学に隣接する地で、犯行が行われたこと。そして、大学関係者が、殺害されたという点。サリンは、ごく小規模で使用され、被害者(ガイシャ)以外は、影響を受けていない。皆さん、ご承知だと思いますが、サリンは、気化したものを吸うだけで、意識障害を引き起こしますが、気化したものが発生していない。つまり、意図的に、使用されている。本当に、そんな芸当が可能なのか、私自身の目で、確かめてみたい。指揮は、それからです」


 芝﨑が、尋ねる。


「佐久間警部。犯人(ホシ)は、テロが目的ではないと?」


 佐久間は、首を横に振った。


「目的を断定するには、判断材料が、余りにも足りません。しかしながら、サリンが世に出ること自体、あってはなりません。長野県警察本部(長野県警)はかつて、松本サリン事件で、相当、世論に叩かれました。大事なのは、テロやサリンの思想に囚われず、犯行の目的を早く絞り込み、防ぐことにあります」


「次は、どこで行なわれると思うかね?」


(………)


「関東地方の可能性があります」


(------!)

(------!)

(------!)


「佐久間、それは一体?」


「まあまあ、青山さん。聞こうじゃありませんか?」


「熊本市内で起きた日から、関東に飛び火するかもしれないと、ある仮説を立てました。犯人が、関東で事を起こすとしたら、いきなり本番は危険なので、どこか、中間地点あたりで、また、人目につきにくい、山間部辺りで、実証試験するだろうと予想し、思考が一致したんです。何故、そのように思考したかと申せば、被害者は、先程、申し上げたとおり、二件とも大学関係者です。この二人は、実は、サリン関連に携わっていたのではないかと、推察してみました。岡山理科大で、二人目の犠牲者が出た報を聞き、身元を洗ってみましたが、遺伝子研究の第一人者でした。サリンと遺伝子研究は、密接な関係をもっていると聞いたことがあり、そういった機関は、東京都に集中しています。大阪府や愛知県には、独立した機関は少ない。そのため、関東と申したまでです」


「東北や北海道は、どうかね?仙台や札幌も、怪しいが?」


「十分にあり得ます。もし、犯人が組織的に、本格的なテロを起こすなら、影響力が一番大きい、首都圏を狙うのが効果的でしょう。首都圏でなくても、仙台や札幌でテロを起こせば、自分たちの存在を、十分すぎる程、アピール出来るでしょう。次の犯行場所を、特定するには、難儀するでしょうが、何とか犯人の癖を掴み、プロファイルしてみようかと思います」


「では、君の意見を、ここにいる『全員の総意』としよう。可能な限り、善処したまえ」


 佐久間は、全員に敬礼して応える。


「承知しました。では、只今より捜査に移行します。各本部長から、連絡をお願いします。熊本県警察本部、岡山県警察本部は、明日までに、二名を選出してください。大阪府警察本部と愛知県警察本部は、明後日までに、一名選出してください。局面に応じて、合同捜査会議を開催することとし、柔軟に対応したいと思います。現場を確認する際には、現場検証に立ち会った者を、必ず招集してください。当時の状況を改めて確認し、見落としがないかをチェックします」


「了解した。第一発見者と、一番最初に駆けつけた警察官を、臨場させよう」


「安藤課長、警視庁(我々)は、氏原に、同行を求めようかと思いますが?」


 安藤は、快く承知した。


「サリン対応には、適材だな。科捜研には、私から連絡しよう。ところで、山川は、連れて行かないのか?奴は、粗暴だが、必要な局面もあるだろう?」


「山さんには、府中市の捜査を進めて欲しいと思います。あれはあれで、気になっています」


(………)


「そうか。まずは、少数精鋭でのみ、動くということだな?」


「はい。全容が見えない現時点では、これが正しい選択だと思います。結果は、後から付いてきます」


 最後に、佐久間はこう付け加えた。


「この一連の事件は、まだ犯行の思想と、目的が見えません。復讐殺人・快楽殺人なのか、受刑者解放なのか、国家転覆なのか。もし、受刑者の解放や、別の主義・主張を訴えるのならば、間違いなくテロでしょうから、次の舞台では、被害規模を大きくし、国家に対して、重圧を掛けてくると思われます。念の為、全国に収監されている、危険人物リストを抽出しておきたいと思います」


 こうして、佐久間指揮のテロ対策特別チームが、水面下で動きだすのである。


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