ー移動中ー
まだまだ途中ですが投稿しようと思います。
本格的な始動にはまだかかりそうです
では、名前のない英雄、どうぞ( ゜д゜)ノ
とりあえず残りの高校生活楽しもう
自分がここに来た経緯を聞いて、頭では理解できたが体がそれを受け入れようとしなかった。
「被験体……として」
「……。ちゃんとケアもした」
ばつが悪そうに左腕を抱える先生は並んで立つと以外と背が高かった。一七〇センチの僕より少しだけ大きい。女性としては目立つ高身長だ。
「別に、先生さんを責めてる訳じゃないっ、……です」
転けそうになるのを何とか耐えて、喋る。
立ってみて初めて気づいたのだが、下半身の筋肉が少しだけ固まっていたようで、動きにくかった。今も点滴をしながら歩いているのだが、これがまた杖の代わり、ひらたく言えば支え棒になって良かった。
「……歩きにくいのなら車イスもあるわ。いる?」
転けかけた僕を見て、急に焦りだす先生。先ほどからそうだが、この人は存外、僕の心配をしてくれる。ここへ来た経緯を話すときも、ベッドから立ち上がって倒れかけた僕を支えてくれたときも。なんだか以前から知り合いだったような距離感な気がした。
「大丈夫です。歩けます」
だからこそ。ではないが、僕はこの人を信用できなかった。
被験体としての価値があるから精神的負荷をかけたくないのか。
ただ、怪我をされると困るのか。
それとも、別のなにかがあるのか。
全くわからないし、この無表情がさっぱり読めない。
「…………そう」
「……英雄ってなんなんですか?さっきの説明だと理解できなかったんですけど」
必死に歩きながら白い道を歩く。ここまで清潔感溢れる白で埋め尽くされる道は、壁も天井も白いため角がわからない。一人にされると確実に部屋にすら戻ることができない。
「……人間は混ざりすぎた。だからその血に過去の英雄の血が流れている」
と、完全に立ち止まった先生が急に真面目(常に真面目だとは思うが)なトーンで話し始め、僕も立ち止まる。振り返ると先生との間に思いの外距離ができていた。
「……という仮説の元。それを活性化させる研究が秘密裏に行われた。英雄は異世界人に立ち向かえる唯一の存在。ただの人間では絶対に倒せない存在に立ち向かうからこそ、英雄。だけど、それはなぜか今の人からは失われた。だけど──」
先生の手が壁に触れ、なにかを四回押す。
「貴方はこの時代になって初めて確認された目覚めた英雄。だからこそ連れてこられた……………ここ」
壁が長方形型に凹み、スライドする。
「そんなとこにドアがあったなんて全く見えなかった……って、先生さん待って!」
無言で先へ行く先生のあとを全速力で追うがなにぶん、下半身がきちんと動いてくれないため遅い。
ドアをくぐると驚いたのは廊下の白さに対して、ガラス張りで奥が透けて見える道が続いていることだった。そこにはイメージでいうとこの防護服を着ている人たちが忙しなく動いている。左右でしている作業は違うようで、内容はわからないが、大変そうなのはわかる。
「……好きなのね。見ててもいいけど、どうする?」
「あ、大丈夫です。行きます」
ちょうどガラス越しに中の人と目が合い、気まずくなってたとき。先生に呼ばれてこれ幸いと会釈して逃げる。
自分も男の子だからか、あぁいうのはすごく好奇心をくすぐった。だが、あの場に入れといわれて入れるかといったら、むしろ研究対象にされて終わるだけな気がして、とてもじゃないが無理だ。
「ここの研究では、段階が二つあるの。一つは発現。英雄の力の片鱗を垣間見る段階。例えば、超能力っていう説明が理解しやすい?」
先程の続きなのか、ガラス張りの壁がなくなりまた白い空間に出た瞬間、先生が立ち止まり対峙する形で説明を続けた。
脳内で好きなアニメのヒロインが電撃砲を撃つ瞬間を再生させ、なんとなく納得する。
「二つ目は覚醒。これは意味的には力を使えるようになるってことを指す」
「……ん?それこそ超能力じゃないんですか?」
イメージが間違ったのかと思考を巡らせながら先生の言葉を待つと、先生は厳密に言うと違う。と否定する。
「超能力は副産物的もの。……普通の人間でいうとこの第六感っていうべきだった……?」
「あ、なんとなく理解しました」
「よろしい、あとで花丸をあげるわ」
笑顔を浮かべる先生は、まさに笑うとこんな顔をするんだ。という印象を僕に与えた。同時に、胸が締め付けられる感覚が僕を襲った。目覚めてから小一時間、それぐらいしか経っていないが、どうも先生との距離感に違和感を覚えるしかない。
何故、僕はこんなにもこの人が無表情であることを怖がりされすれど、理解しているのだろうか。
何故、この人の笑顔を見て胸が痛くなったのだろうか。
何故………。
笑顔を直視するのが辛くなり顔を背ける。なぜだかこの人の笑顔を見るのが恐かった。理由は分からない。
「これをあなたに渡しておくわ。自分で使いたいときに使って。………使わなくてもいい」
思考を遮る形で声をかけられ、前を見る。
そこには左腕を突き出す先生がいた。
手の上には小さな棒状のなにかが二本。
なかには緑色と赤色の液体が入っていた。
受け取ろうと右手を差し伸べてから、これは受け取っていい物なのかと理性が呼びかけてくる。
一瞬、伸ばす動きが鈍くなる。右腕を見ると鳥肌が浮き出ていた。しきりに思考はその液体を受け取ることを否定している。だが右腕はなおもそれに手を伸ばしている。あと少しで棒に触れるというところで右腕の動きが完全に止まった。
気づけば左手が全力で右腕を掴み止めている。
身体の動きと、思考がどうにも合わない。
「………………にいるのね」
ポツリと何かを呟いた先生にぐいっと手を掴まれ、液体を握らされた。
なにを言ったのか聞き返そうと先生の目を見て、この人はなにも言わないことを覚った。
真っ直ぐな瞳。
無表情な顔。
静寂を読む雰囲気。
この顔の彼女は絶対に秘密を抱えている顔だ。
そしてそれを彼女は絶対に言わない。
その事を、僕は理解していた。
「これは……………?」
話題を変えるつもりで半ば強制的に受け渡された液体を上に掲げて見る。筒は片方にボタンのような突起があり、片方には穴がある器具のような物だった。たとえるなら、インスリンみたいなやつだ。
「それは、薬。ここの研究の成果の果てに出来た、人を英雄にする薬。恐い薬よ」
「どうしてそんなものを?」
「…………緑は貴方をさらに強くする薬。実感はないでしょうけど、貴方は人を半分やめたような状態なの」
「なかなか刺さること言いますね」
ぐっと泣きたくなる気持ちを抑え、落ち込む。脚が動かないからこそ実感が全然湧かないが、この状態でもその辺の異世界人とは対等に戦えるらしい。というか、普通ならすでに脚は切断されているんだそうだ。
「多分、異世界側もあなたに気づいてると思う。天敵のあなたをこのまま放置するはずがない」
たかが発現。されど発現。といった所だろうか。
きっと覚醒は世界観が一八〇度変わるんだろうなぁ、とどうでもいいことを考えながら薬を見た。すすんで打とうとは全く思わないが、興味は少しだけある。と、
「……赤は偶然の産物の中和剤。その一本しか現物はないけど、暴走したらそれを打つこと」
「ぼ、暴…走……です、か……?」
この人にはデリカシーがないのだろうか。
不安にさせりるようなことしか、僕は先程から聞いてない。
その上説明が全くない。
先程の思考は、はやめ捨てるとして赤色の薬を見た。これを打てば、「人」に戻れる。
「そう、だからこそのそれ……部屋に戻る」
「……………………」
薬のはいった器具を二つ、見つめたまま僕は数秒動かなかった。もしこれを使うときが来たなら、確実に緑の方を使う可能性が高い気がする。そして、それはきっと今度こそ死ぬときかもしれないと。そう思ったから。
記憶はないけど、二度目の死を、僕は覚悟することができなかった。
名前のない英雄、どうでしたか?
実は内容変えました(根本は変わらず)
ストーリーの進み方を大分変えた次第です
それでは次の投稿で
感想、誤字脱字報告等もどしどし待っておりますm(_ _)m