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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
第一章 暴嵐の猪王
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三十一話 戦闘開始

「グガアァァァァァ!!!!」

 猪王が真上に広がる空に向け、大きく咆哮を上げる。その音は周辺の空気を大きく震えさせる。幸その場は何もない荒野だったことが幸いして、目に見える被害と言う物は無かった。しかしそれでも相当な威力を誇っており、それを見に受けているアダルは空中でバランスを保つことに勤しんでいた。

「まるで爆風だな」

 呟いたその言葉はすぐに彼方へ消えていく。彼が言葉を口にしている間も、猪王は咆哮を辞めようとしない。アダルは鋭い目で猪王を見据え、おもむろに右腕を掲げる。

「いい加減止めろよ」

 言葉と共に右腕が発光を始める。その光りは徐々に輝きを増していく。上空に目を向けていた猪王は突如現われた光りに驚愕し、咆哮を止め目を背けるように顔を背ける。しかしそれを目にしてもアダルは園行為を止めない。それどころか、光り輝く右腕を振り下ろし猪王に向ける。反対の腕で右腕の肘裏の関節を固定する。

「先制はこっちが貰う。文句は言うなよ?」

 平坦な声で宣言すると、腕全体で輝いていたその光りは手の方に移り出し、発射準備中の砲台ノような状態と化す。

攻輝弾(グリットブレット)

 アダルの腕から貯めていた光りが猪王に向け放たれる。それは巨大な光りの砲弾と化し数秒もしなう地に猪王へと直撃する。

「グゴオオオオオオ!!!!」

 直撃と同時に先程と同じように空気が震える。遠くから見るとまるで巨大な爆弾が被弾した時のように強烈な閃光がその場を包む。猛烈な輝きの中の様子は第三者からでは観測できない。猪王のあげるその悲鳴だけがアダルの攻撃が直撃した事を教えてくれる。アダルは閃光の中につまらなそうな目を向ける。しかしその目には一切の慢心は感じさせなかった。彼は少しの後舌打ちを鳴らす。

「耐えるか」

 アダルが光りの中で見た物。それは、彼が放った光の砲弾を一切の傷を負うことなく耐えた猪王が此方を睨み、余裕そうな表情をしているところだった。

「相当量の闇を供給されたな」

 彼は未だ閃光が止まぬ眼下を見ながら苦々しい表情をし、再び右腕を咆哮の中に向ける。先程と同じように光りを纏わせるが、今回は貯めず直ぐにそれを発射させる。閃光の中に新たな閃光と爆発音がその場に響く。

閃弾雨(ブレットレイン)

 左腕も閃光のに向け先程と同じ行程を繰り出す。その行為が両手によって絶え間なく行われる。両手で繰り出される光りの雨により、閃光の中より次々と爆発音と数多くの小さな閃光が生れ続ける。

「グ・・。オオオオオオオオ!!!」

 そんな閃光の中から、悲鳴の様な猪王の呻き声が聞え始める。その声は時間を立てると共に大きくなり、数秒もしないうちに園声は雄叫びのようになる。猪王によるその行為は周辺の空間を揺らす。その中の様子が分かるアダルはその中で行われている猪王の行動に驚愕し攻撃を一度止め、焦りのような物を顔に滲ませ、翼を羽ばたかせる。

「グオオオオオオオオオ!!!!」

 猪王はなんとその声と共に此方目がけてジャンプをしてきたのだ。その準備を目にしていたアダルが焦ったのはこのためだった。猪王のジャンプはアダルが滞空している高さまで達しようとしており、そのことも彼を驚かせる。

「っ!」

 猪王による体当たりじみた驚異的ジャンプは、いまだ人間体であるアダルという小さな的にに見事直撃する。回避を試みようとしたアダルだったが、あと数秒足りず吹き飛ばされてしまった。





 

 ズドドドド!

 数秒もしないうちに豪音と共にアダルは先程から5キロほど離れた場所の荒野に落下し体を打ち付けた。彼が地面に落下した際の衝撃によって、アダルを中心に小さなクレーターが出来ていた。

「痛っ!」

 猪王の体当たりに直撃した際に、彼の一瞬だが意識を失った。がしかし、落下の際の衝撃によって意識レベルが回復する。彼は体の痛みに耐えながらもゆっくりと上半身を起こす。

「油断したつもりはなかったが・・・・・」

 嘆息気味にそれを呟き、立ち上がる。その際に体に少量ではない痛みが走る。その位置を確認しつつ、自身の体がどの程度ダメージを負っているのか。そして、それがどの程度の怪我なのかというのを体を動かしながら自己で診断する。

「骨折はしてないな。内臓も大丈夫だ。外傷だけか」

 幸い重傷の類いではなかった。彼は徐ろに痛覚が反応している箇所に目を向ける。痛みの走る場所は右脇腹太ももにかけて。そこに目をやるとその部分だけ皮膚がただれ、血まみれになっていた。

「接触した所か・・・」

 おもむろに何故ここだけ被害が多いのかと考えると直ぐに頭に浮かんだ。この秘技脇腹から秘技の太とももの外側に掛けて、猪王が体当たりした際に接触した箇所。この箇所より、巨大な運動エネルギーがアダルに働き、この場所まで吹き飛んできた。

「余計な手間を取らせるな」

 彼はそう呟きつつ左手で怪我をした箇所に手を当てる。すると左手が仄かに白く発光を始め、その光りが傷の箇所全体に広がっていく。光りが纏った箇所の傷は少しずつではあるが数刻前の怪我の無い状態に戻っていく。その風景はさながら巻き戻しを目にしているようだった。数十秒もすれば、傷は完全になくなり、アダルは痛みが無いかと体を動かす。

「大丈夫だな」

 言葉で自分の状態を確認し、彼は徐ろに自身が落下した際に生じて出来たクレーターから出るために足を進める。クレーターからは物の十歩程度で抜けられ、その場所で周りを見渡す。先程の所からそれほど離れていないのと、何も遮る物の無い荒野であるため、猪王がどこにいるのかは直ぐに見つかった。猪王の姿を見るや否や鼻で笑う。肝心の猪王はアダルのことは倒したと思っている様子で、勝ち誇ったように声を上げている。少し離れているためか、その声は少量だがそれは誰にとっても気分の良い物では無い。

「さて・・・」

 それを口にすると、彼は翼を広げる。それはこれまでのサイズではなく、本来のサイズの虹翼だ。アダルはそれで自身の体を包み、元の姿に一瞬で戻り、指を鳴らす。

「今度こそ油断はしねえぞ!」

 翼を数回羽ばたかせ、地面より足を離す。地上より5メートルほど離れると一度上空に目をやり、ある事を考えている。

「さて、行くか!」

 それを口にすると、彼は翼を動かし猪王のがいる咆哮に目をやり、そっと笑う。その行為は直ぐに止め、アダルは上空高く這い上がり始める。それは先程の戦闘時よりも遙か高い、上空1000キロ保護まで達する。この場所より見ると、地上で言う5キロの距離は上空から見ると全く無いと言っていい。それにここは荒野だ。他に何も遮蔽する障害物や邪魔になりそうな建物の類いが存在しない。そんな風景の中ではやはり40メートルを超える巨体の猪王というのはやはり目立つという物。上空からでもはっきりと意場所が分かる猪王は現在、ようやく雄叫びを止め、進軍を再開しようとしていた。

「させねえよぉ!」

 奴が何をしようとしているのか察したアダルは何よりも何よりもスピードを出し、猪王の下へ向う。

「とおっ!」

 一秒もしないうちに猪王の背後まで近づくと、声を上げながら跳び蹴りを食らわす。その声を耳にした猪王は一瞬体を固まらせたが直ぐに回避しようと試みる。しかし、アダルのスピードの方が勝り、彼の蹴りは猪王の体深くまで突き刺さる。筋肉による弾力の為に貫くことは叶わなかったが、猪王を蹴り飛ばすことは成功し、彼はその場に着地をした。

「さあ、本番勝負と行こうか」

 未だ吹き飛んでいる最中の猪王に向けアダルは長髪とも取れる声音でそう口にした。


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