一話 新たな予感
「体の調子はどう?」
大樹城のヴィリスの管理する階層の屋敷。そのバルコニーにてアダルが空を見上げながら風を感じているとそんな声が聞えてきた。声の主は当然ながらヴィリスである。
「絶好調。・・・・とはいかないが。もう戦えるくらいには回復しているさ」
笑いながら答えるアダルは彼女が新しく入れてくれた紅茶を口にする。
「・・・相変わらず落ち着く味だな」
息を溢しながら吐いた言葉を耳にし、彼女の表情がフッと咲いた。
「そんなこと言ったって何も出ないよ」
少し恥ずかしそうにしながらも彼女はそのポットを沿って布巾の上に置いた。
「さっきの続きなんだが。・・・・・体は問題は無い。正直今まで以上に力が湧いてくる感覚もあるんだ。・・・・だけど相変わらず」
「・・・・・元の姿には戻れる気配がない」
ヴィリスが追従して口にした事にアダルは頷いた。
「魔王種二体と戦い。さすがに分が悪すぎる戦いだったからな。その後遺症なのかも知れない」
何せ数時間ほど彼は一人で二体の魔王種を相手していたのだ。喩え再生能力のある彼でさえ、難しい戦いだった。今生きているのさえ奇跡なことである。
「・・・あんなボロボロにされても生きていたとは。・・・・・・・俺の生存本能って凄いな・・・」
死んでいても可笑しく無い状況だった。それくらい体は消耗し、全身大けがだった。本来ならば出血で死んでしまうくらい血を流してしまった。だがそれでもアダルが死ぬことはなかった。彼の体が死ぬことを許さなかったからなのか。それとも。
「・・・・真祖が渡してくれた物のお陰なのか・・・・」
真祖が結界内に現れたときに渡してくれた物。それの成分のお陰なのかとも考えた。用意周到な真祖だ。それくらいしてもおかしくはない。だからあのドリンクのお陰で命を落とさずに済んだ可能性もある。
「・・・確かにいろんな方に助けられたよね。・・・・だけど最後は明鳥くんの体が頑張ってくれたからだと想うな・・・」
そう言いながらヴィリスはアダルの背後に移動してその肩に両手を置いた。
「だから自分の体も労って。少しは休ませた方が良いよ」
本当ならばもっと体を休ませて欲しい。だが彼は言っても聞かない。だから彼女の方が妥協してことばを選んだのだ。
「・・・休みかどうかは俺が決めることじゃない。・・・・・・向こうが決めることだな。」
魔王種や悪魔種がでなければ体を休ませることに集中できる。だが今はそんな事言っている場合ではないのだ。
「・・・・・」
彼の発言を耳にしてヴィリス半とも言えないような表情を浮かべながらその肩を揉み出した。
「いたっ!」
其れは想いの他に強くて想わず声が出てしまった。それでも尚彼の尾序はその力を緩めることなく、強く肩を揉んでいる。
「・・・・ほら。これくらいの痛みに負けているくらい体は弱り切っているんだからさ。・・・・もう少し休んだ方が良いよ」
心配している表情と声音であるが、その力からは怒りのような物もか暗示取れてしまう。
「・・・・・怒っているのか?」
「・・・・うん。怒ってるよ」
声音は変わっていないが予想通りの返答が返ってきた。
「明鳥くんは働き過ぎで、自分の事を顧みなさすぎるよ」
言葉と共に込められる力は徐々に強くなっていく。今までは我慢できるくらいの痛さだったのが、少しずつ声が漏れていく感じである。
「悪かった。・・・・悪かったよヴィリス」
さすがにこれは謝罪をした方が良いと其れを口にした。
「今回はちゃんと休むさ」
「・・・・・どれくらい?」
期限を設けられると少し痛いところを突かれたような表情をする。
「・・・・・元の姿に戻れるくらい。・・・・・いや、もっと強くなれるまでかな?」
緩めていた力が再び強くなりそうな気配がしたのアダルは言葉を追加する。
「勿論無理はしない。きちんと休むよ」
「・・・・・その言葉信じるからね・・・」
そう言うと彼女はようやく肩から手を離した。アダルは確認為るように両肩を回す。
「・・・・・折れてはないみたいだな・・・」
少し安心する。それでも肩の筋肉は少し傷付いた様子なため、そこを再生させる。
「・・・・さすがに痛かった?」
「・・・ああ。痛かったよ」
反射的に答えてしまう。いつもなら強がるところであるが、それも出来ないくらい体が弱っている証拠だと想うと少し落ち込む。
「・・・・・・休まないとな・・・・」
「・・・・・そうした方が良いよ」
彼女は再びカップにお茶を入れる。アダルは其れに手を付けた。
「・・・・そういえば明鳥くん。前に言っていたことがあ実行されそうだってさ」
彼は目覚めたとに星の意思から伝えられていたことを彼のJにも伝えていた。ソシエテヴィリスはじしんノは派手あり、この国の国家元首である大母竜にも其れを伝えていたのだ。
「召喚はこの城で行われるんだって」
「・・・・そうなのか」
星の意思が召喚する新たな地球人。今回は転生ではなくて体をそのままに転移指せる召喚。向こうの体のままでの召喚はさすがに危険な事から無いかしら特典をつけることも考えられる。
「・・・・一体どんな人達がが召喚されるんだろうね・・・・」
「・・・・選ばれてしまった人達が可哀想でしょうがないよ」
ため息を吐くアダルに同調為るようにヴィリスも頷いた。
「・・・・そうだよね。・・・・何で態々今の時期。・・・・其れも危険なこの世界に」
送り込まれた人からしたら迷惑な話である。想わずそんなかれらに同情の念を送ってしまう。
「・・・・・理由があるって星の意思は言っていたが。・・・・・どんな理由なんだろうな・・・」
おそらく魔王種との戦力補強のためではない。其れは彼の存在が否定していた。嘘を吐くかどうかは判断がつかないが、そこは一応信用してみることにする。ならば何故新たに人を召喚するのか。そこは教えてはくれなかった。だからこそ気になるのだ。
「・・・・一体何のために呼ぶんだろうな・・・」
「・・・・・母様は其れを聞いたみたいだよ。・・・・・すこし困った様な評定を浮かべていたけど、納得はしていた」
其れに少し驚く。だ今にも声を上げたかったが、上げたとことでなんともないから諦めた様に息を吐いた
「・・・・・明鳥くんには教えなかったのかも知れないよね」
「・・・・だとしたら何でなんだろうな」
何か教えたら不味いのかと疑ってしまう。其れか信用がないのか。
「・・・・まあ、信用はないか」
使うなと言われていた光神兵器を使ったのだから。言う事を聞かない存在だと想われているのかも知れない。この前会った時もその声音は怒りが宿っていたのは分かっている。
「・・・・別にそういうわけでも無いと思うけど?」
少し落ち込んでいるとヴィリスからの否定の声が上がる。
「・・・・其れは何を根拠に」
「だって明鳥くんに最初に教えていたからさ」
そうともとれる行動を星の意思はしている。だがそれだけで信用が云々というのは何かが違うような気がするのだ。
「・・・・・なんか嫌な予感がするな・・・・」
どこかで勘の鋭い彼がこの発言をする。正直当って欲しくは内観なのだが、今回は何故か当る気がしてならない。
「・・・・・・・新しく召喚する人物が何か波乱の種にでもなるのかな?」
「・・・其れは確実に言える事だろ。・・・・・予想するまでもなく」
そんな当たり前なことでは無く、何か他の嫌な予感がしているのだ。
「・・・・・一体何なんだ。・・・・これは?」
想わず眉を顰めて彼は考え込んでしまう。そしてこの予感というのは当ると言う事を彼は思い知るのだった。




