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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
五章 顕現 堕天の青 快楽の赤 
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七十一話 未知の能力

『・・・・・面倒なのが残っていた。・・・・・いや、そもそもあっちは囮だったのか・・・・』

 エアトスは苦そうな表情を為ながら冷静に分析をした。そう考えれば納得のいく部分が存在する。アダルは態と戦いを引き延ばそうとしていた部分が存在したからだ。何故態々そんな事を為るのか疑問だったが、最初から捨て駒として時間稼ぎの為にやっていたのなら納得出来る。

『・・・・・なんか嫌な雰囲気出してるね・・・』

『・・・・・そうだな』

 神獣種の出している雰囲気から、肌がひりゆくような感覚がある。それがなんなのかは本能と直感が警告している。

『俺達にとって。彼奴らは危険だ』

『・・・・・戦いたくないけど・・・・・まあ、無理か』

 そして彼らが現れてしまったのだからわかる。おそらくは簡単にハ逃がしてくれそうもないということを。

『・・・・・どうする?』

『・・・・・・仕方が無いだろ。俺達はやるべき事をやるだけだ』

 何をするのか。それは本来の目的を遂行すること。

『戦闘不能にすれば街は返ってくるだろう』

 それはあくまで臆測に過ぎない。だが結構自信があった。

『街一つを他の空間。または他の場所に転移させる事は結構簡単だ。そして大概の場合は要となる物を壊せば元に戻ることも多い』

 ハティスが見せたのは街を消した能力だけ。だがたったそれだけを見てエアトスはどう対処すれば良いのかを見抜いてしまった。

「正解ですよ。わたしを消せばここに待ちが戻ってきます」

 誤魔化しても仕方が無いと判断したハティスはあえて肯定することにした。それにはヴィリスも信じられない物を見る目を向ける。

「・・・・・いいの? 教えちゃって・・・」

「・・・・もうバレてしまっていますから。ここで誤魔化しても仕方がありませんよ」

 口ではそうは言っているが、内心は悔しいのかすこし苦い表情を浮かべている。それを見てしまっては彼女も返す言葉がなかった。

「・・・・・それにしても凄いですね。私が見せたのはあれだけだったのに。たったそれだけで仕組みが分かってしまうなんて」

素直な称賛であった。ハティスの方からしてみれば。だが魔王種の方からは煽りとしか受け取られなかった。

『同じ様な仕組みを何回も見てきている。そこに欠陥があるのに何故か誰もそこは修正しない。・・・・・何でしないのか意味が分からないな』

「・・・・・そうですね。たしかにこの術は使用者が要です。そして使用者が倒れれば元に戻ってしまう。・・・・・これは重要な欠点ですね。・・・・お教えいただき感謝いたします」

 その口ぶりから死ぬ事なんて考えていないという風に受け取られた。現にハティスは今後の為の参考をもらえたとして純粋に感謝している。そこからは自身が負けることを考えていないのだ。それどころかその意識がここにあるのかも怪しいところである。

『まあ、いい。とにかくお前を殺せば元に戻る。それが分かったなら、あとは実行為るだけだ』

『・・・・・戦いたくないけど。・・・・・仕方が無いか』 

 今回の面倒事に消極的だったメアリも腹をくくった様子だ。これを言い終わった時点でヴィリスとハティスの周りをメアリの軍勢によって取り囲まれていた。

『じゃあ、付き合って貰うよ。こっちは散々時間を食わされてイライラしているんだ。それをぶつける相手になって貰うから』

 メアリの方としてもアダルを相手にして相当の鬱憤が溜まっていた。その証拠に彼女は結界から出た後、最早意識もないアダルをサンドバック代わりにしてていたのだ。それだけ彼にたいしてむかついていた。

「・・・・・来なよ。・・・・・もっとボロボロにしてやるから」

 ヴィリスの呟いた言葉は魔王種には届かなかった。その前にメアリの地上に降りていた部隊が周囲を取り囲んだ状態で襲いかかってきたからだ。そこで慌てる二人でもなかったのだが。

「如何します?」

「一掃しようか」

「・・・・・そうですね」

 暢気にやり取りしている二人だが、そんな事している間に数十もの血の剣が彼らに向かって降りかかってくる。

「溶けろ」

 だがそれらが二人に届くことはなかった。その前にヴィリスが言葉を発した。すると何故かその言葉通りに血の剣がその形状を止める事が出来ずに地面へと落ちていった。いや、形状を保てなくなったのはその剣だけではない。彼ら二人を取り囲んでいたメアリの血の軍勢も一体も残らずにただの血液へと戻って言ってしまった。

『・・・・・は?』

 なにが起ったのか瞬時には理解出来ずに思わず出た声は間が抜けてしまうような物だった。

「さすがですね」

「もちろん」

 ハティスの称賛の声に彼女はそれが当たり前であるかのような振る舞いをする。これくらいは彼女にとっては朝飯前だと主張しているのだ。そしてヴィリスはその鋭い目をメアリへと向ける。

「・・・・・・・ここに散らばっている血液だけど。貴方はもう使えないから。そのつもりで」

 彼女の宣言したことが理解出来なく、憐れにもメアリはそれを操作しようとした。だが言葉通りメアリの命令は全く受け入れられなかった。変化もしないただの血だまりに成り下がった。

『なんで?』

 少し焦った様子で言葉が出る。理由を聞こうとエアトスの方を見ても彼にも分からないらしく首を振られた。

『何をした』

「教えるわけないですよ」

 きっぱりと拒否するヴィリス。彼女としては珍しく厳しい態度をとっている。それと同時に怒気が放たれ、それによってメアリは思わず1歩下がってしまう。

『・・・・・・ならばこっちで考えるしかないな』

 彼女の怒気はメアリ個人に向けられたものではあるのだが多少は周りの者も感じれる。それを感じながらもエアトスは余裕を装っていた。いや、実際に余裕であった。彼はさきほどのアダルとの戦いにおいてもそれ程損傷していないから。それに彼によって厄介な物を習得してしまってもいた。そのため疲労の様子などもあまり見られない。だが夜宇田からと言って警戒していないわけではなかった。警戒しているからこそ彼女が何を行ったのかを暴こうとしている。そうでなければ仲間であるメアリの戦力が半分になってしまうから。半分だけの戦力のメアリでは勝てないと判断した。

『確か情報じゃ』

「そんな時間与えると思って居るんですか?」

 突如として彼の目の前に現れたハティス。その表情はどこか優しい笑みを浮かべていた。咄嗟の事で目を見開いてしまう。それは油断であり、明確な隙であった。それを見逃さずに彼の体に接触するハティス。次の瞬間には二人とも姿がなくなっていた。

『っ! 青!』

 突然起きた事に声を上げてしまう。混乱しているのかいつもの呼び名で呼んでしまったことを彼女は気付かない。それくらいには驚いていたし、突然いなくなってしまったKと尾への恐怖心が出てしまった。先程も魔王種二体は離されたのだが、全開は彼女が引き離された。それも見て分かる様な形で離された。しかし今回は何故か分からないままにエアトスは消えた。おそらくだがハティスが何かをした事だけは理解出来た。彼は街を消せるくらいの能力を持っていることを思い出すとなんとか心を落ち着ける事が出来た。

『怖い能力』

 冷や汗を拭いながら呟く言葉は自分だけしか聞えない。それが余計に不安を煽ってしまう。そしてその弱くなった心情のせいで余尾ユウガ無くなってきているのも自覚できた。だからだろう。羽ばたいて目の前まで近付いてきているヴィリスの存在に気付くのが遅れてしまった。


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