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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
第一章 暴嵐の猪王
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三話 天輝鳥の実力

 不敵な笑みを浮かべながらアダルはイノシシ型の魔物に単身で向っていく。

「本当に危険です。その魔物百を超える個体の群れで行動します。それに牙には猛毒がありますよ!」

 心配なのかそれを注意するこえが焦ったいる。しかしこれに帰ってきた返答は笑い声だった。

「上等だよ。そうでないと百五十年怠惰に過ごして出来た錆は落ちないからな。それに」

 瞬間彼の雰囲気ががらりと変わる。それはまるで何者でも切り裂く妖刀の様に鋭く、冷たい物に。

「お前もみたいだろ? 俺の実力がどのくらいなのか」

 言葉を口にしながら彼は進むのを止めない。そんな中彼の腕に変化が起きる。人間の物であったそれは徐々に形を変えていき、巨鳥であった時の物になっていた。爪は鋭く黄金で出来た鳥の鱗が卑しく光る。彼は指を鳴らしていく。

「まあ、見定めてくれよ。お前に協力する巨鳥の力の真価をな」

 歩みをしていた足を加速させ、疾走させる。彼は遂に群れの中に突っ込んだ。






 右腕を勢いよく掲げる。前方から突進してくる個体がいるにもかかわらず彼は焦る様子がない。

「手始めにこれでも食らっとけ」

 彼は右手をいきなり発光させた。そして輝き纏うそれは形を変えていき、鋭くなっている。

「落ちろ」

 言葉と共に掲げていた腕を振る下ろす。すると纏っていた光は雷となって、突っ込んでくる個体目がけて直進。見事打ち抜かれ、イノシシは動きを止めその場に倒れた。その風景を目の当たりにしたユギルは感嘆の声を上げる。しかし魔物も待ってはくれない。左側からさらに五体が畳みかける。

「なめるなよ」

 アダルはその五体に左手を向け、各々指を開く。次の瞬間、全指先から音と共に光弾が射出される。

「プギッ?」

「プギャー!」

「ピジィー!」

「ペジャン!」

「ポガー!」

 前段急所に命中し、断末魔を上げながらその五体は息絶えた。

「個性的な断末魔だな」

 それを見るわけではなく、次の準備をしていたアダルは右足に重心を置いた。右腕に光を纏わせ、手刀にしたの確認した彼は腕を伸ばしたままその場で回転。勢い良く飛んできた十体を薙ぎ倒した。

「「「「「「「「「「「「ギィヤアア!!!!!」」」」」」」」」」」」

 雄叫びと共に十体以上の魔物が飛びかかってくる。

「はんっ!」

 それをアダルは上空飛び上がることで回避することに成功した。

「これでも食らってろ」

 そう言うと腕を交差させ、指先を魔物に向ける。

「「「「「「「「「「「「ギュアアアアア!!」」」」」」」」」」」」

 無慈悲な光弾が彼らを襲う。圧倒的な光の雨の中、魔物達は倒れていく。

「まだ終わりじゃねぇだろ!」

 着地したアダルは光を纏う右手を掲げる。すると、今度は球体の様な物が出来はじめる。

「オラァ!」

 それを助走を付け、群れの中心に投げつける。

「「「「「「「「「「じょらぁあ!」」」」」」」」」」

 爆音な鳴り響くと同時に魔物の断末魔がその場を支配する。

「まだまだいくぞ!」

 それから数回はそれが続き、百を超えていた群れの個体は残り十体前後まで減っていた。それを眺めると、アルダは徐ろに両手に光を纏い、腕の前で交差させた。

「仕上げといこうか」

 腕を勢いよく水平に伸ばした。すると腕の軌跡上に光刃が形成され、魔物目がけて飛翔する。

「ピギ?」

 一体がこの攻撃に気付いたがその時にはもう遅かった。なぜなら声を出したときには魔物達の体は水平に切り裂かれていたからだ。







「お疲れ様です。アダル様」

 徐ろに彼に近づこうとするユギる。しかしそれはアダルの手によって阻まれた。

「隠れてろ」

 低く、鋭い声が物事の重大さを教えてくれた。ユギルは言われた通り、近くの木の後ろに身を隠した。

「可笑しいと思ったよ」

 彼は独り言ちると呆れた様に項垂れた。

「この森でもの程度の魔物が群れをなしていても生き残れるはずがないのに」

 そのままゆっくりとある方向に歩き始める。すると彼が歩いている方向から轟音が近づいてくる。

「こいつらのボスがいるはずなんだ。それもこの森でも上位の実力を持つ者が」

 さらに近づいてくる轟音。さらに地揺れにも似た衝撃が二人を襲う。

「お前がボスだな」

 顔を上げるアダルは地揺れの原因である何かに目を向ける。そしてそれは現れた。

『ギュアアアアアアアア!!!!』

 今までの魔物の約十倍以上の巨大なイノシシが木を薙ぎ倒しながら姿を現した。

「ちょ!猪王!」

 思わず声を上げるユギル。その声にはこの魔物への怯えが混じっていた。

「うるせぇぞ!」

 魔物に大してなのか、はたまたユギルに大してなのかは分からないが、アダルは怒号を浴びせる。

『ギュアアアア!!!!!』

 しかし彼の声など聞こえてない度いないかの様に猪王と呼ばれる巨大な猪は雄叫びを上げながらアダル目がけて突進を始める。

「俺に挑むのか? いいぜ。さっきの小物じゃあまだ錆は落ちなかったからな」

 言葉と同時にアダルも猪王目がけて駆けていた。

「まずは力勝負といこうぜ」


 巨大な陰と人型の陰は正面から衝突した。普通なら人型の砲は吹っ飛んでいくか、踏みつぶされるかだろう。しかしその陰は耐えた。巨大な陰の牙を掴みその場で耐えているのだ。

「その程度じゃないだろ!」

 獰猛な声が辺りに響き渡る。その声に呼応してか巨大な陰が筋肉を隆起させ、踏ん張っている。

「王を名乗るならこのくらい出来ないとな」

 それでもその場から微動とも動かない人型の陰に巨大な陰は怒りを覚えた。

『ギュアアアアアア!!!!!!』

 雄叫びを上げ、突進する力をさらに強めた。それにはさすがに人型も後方に動いた。しかし

「もっと出来るだろ」

 なぜか嬉々とした声を出し、力を込める。すると巨大な陰の猛進が止まった。

『ギョエ?」

 戸惑いの声を上げる巨大な陰。

「お前は頑張った方だよ」

 人型は巨大な陰に哀れみの声をかける。次の瞬間地表の陰は人型のみとなった。


「お前は頑張った方だよ」

 アダルは猪王を持ち上げ、瞬時に上空へと投げ飛ばす。

「お前がいると人間に迷惑になるからな」

 哀れみの声と共に拳を腰のところで構える。するとそこに様々な色の光が集い出す。

「恨むなら俺を恨めよ」

 拳を勢いをつけ、猪王目がけて突き出す。

彩星砲(ルクス・キャノン)

 声と同時に拳から虹色の光が滝の様な勢いで放たれた。

『ギュラアアアアアアア!!!!!』

 その光はだんだんと猪王に近づいていき、彼の体を捕らえた。猪王もそれに対向しようとするが、如何せん空なので力を逃す場所がない。遂に対向出来なくなり、彼の体を貫き出す。

「来世があるなら、いつか会おう」

 アダルはそんなことを呟き、踵を返す。その瞬間、猪王の体は爆散した。






「お前の眼鏡には適ったか? 俺の実力は」

 木に隠れたユギルに向けて疲れた声で問いかける。

「・・・・・・。想像以上でしたよ。それはもう十分過ぎるくらいで」

 少し間抜けな声が帰ってきて、アダルは笑みを浮かべる。

「しかし、本気では遣らなかったんですね?」

「本気でやってたらお前にも被害が行く事になるしな。依頼主を傷付かせるのは俺としても避けたかった。

 その発言でユギルは驚愕した。どうやら彼はいままでこちらを構いながら戦っていたらしい。それでいてこちらは疎か自身も傷を何一つ受ける事が無いのは、彼の経験と実力がそうさせたのであろう。

「それにしても最後の技は凄かったですね。あの猪王が爆散していましたし。

 最後の技は本当の意味で彼が実力者であることを証明してくれた。これほど凄いのであれば、あるいはと思わせてくれる。

「ところで聞きたい事があるんだが」

「い、いいですけど」

 珍しいですねと続けようとしたが彼の眼差しがそれを言わせてくれなかった。

「あれがお前が言っていた巨大化した魔物か」

 しの声音はいつになく真面目なものであった。その言葉を耳にしたユギルは一瞬息を詰まらせ、俯いた。

「・・・そうです。あれが私が貴方に協力を求めた理由です」

 彼は俯きながら自身を恥じる様な声を出す。

「そうか。あれがか」

 アダルは爆散した肉塊を見て数回頷いた。

「もう一つ聞きたい事がある」

「今回は多いですね? 何ですか?」

 困った様な笑みを浮かべるユギルにアダルはある方向を指した。

「あれは売れるのか?」

 かれが刺した先には彼が最初に倒したイノシシの魔物の屍があった。

「それなりに売れると思います」

「じゃあ、持って行くことにするか」

 彼はその方向に足を進め、魔物の死体を数体方に乗せた。

「さっさと森を抜けるとするか」

 二人は再び歩みを始めた。森林を抜けるのは近い。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 力を貸して下さいという割には鳥の力を疑ってるような?
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