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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
五章 顕現 堕天の青 快楽の赤 
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三十話 最悪の連続

 前世でガイア理論というものがあった。それは生物は地球と相互に関係しあい、自身の生存に適した環境を維持するために自己制御システムを作り上げているという仮説である。そしてそのシステムをある種の巨大な生命体とみなす仮説である。要するに星も生物であるということを提唱するための仮説である。明鳥自身そういうこと聞いたことがあった。たまにテレビでやっていたりとか、よく読んでいたラノベなどでも話題に上がるためである。だがよくは知らない。星も生命体というものもいれば否定する意見もある。その程度の認識である。だからこそ今ここでその仮説が正解だといわれて混乱した。そしてもっと混乱したのは、生物だとしたらそこには血液が存在することになる。それが何かなど考えなくてもすぐに浮かんだ。マグマである。そして相手側には今、その血液を操れる能力がある。そこまで考えると思わず頭を抱えてしまった。

『・・・・・つまりだ。今起こっている火山の異常はやっぱり人為的なものってことなのか』

 元気のない声で問うと、星の意思は唯々頷いた。

『・・・・・』

 言葉に詰まり、絶望しそうになるのを押さえつけようと、天を仰いだ。

『・・・・。面倒な力ばっかり持って行くなあ。本当に・・・・』

 零れる言葉からはため息も交じっていた。

『同意するよ。まったくもって厄介な能力ばかりだね』

 声から苦笑いしているのが伝わる。

『・・・・・相手の能力だとすれば。・・・・・どうするか・・・』

 今回の事件はおそらくだが手先の巨獣をつかった物では無く、この場に直接行っている。其れは依り代を得るために来たついでであろう。と言う事はこの事態を収めるためには直接魔王種との戦闘は免れない。

『戦うのはいい。・・・・・だが向こう側が乗ってくれるかなんだよな・・・』

 言ってしまえば向こうには戦う理由はない。何せ最早仕込みは終わっており、何時其れを爆発させるかだけなのだから。幾ら足掻いたとしても最早手遅れである。

『君が考えていた避難も出来ないだろうね。・・・・向こうは姫の体を持っている。・・・いや、他の王族の死体も部下の悪魔種の依り代にしているんだ。君の素性を明かしたところで、王族の意向には適わない』

 今まで疑問だった答えが返ってきて、少し胸が軽くなった。しかしそれ以上に疲れる情報ではあった。

『だからこそ、真祖に頼ったのは良いことだよ。あの子なら王族以上の威光が有るからね。・・・・まあ、少しの混乱はあるわけだし、其れを向こうも狙っているかもだけど』

 真祖を引きずり出すために行った。確かに其れが一番しっくりくる。なにせ向こう側はまだここに神獣種がいる事を分かっていない可能性がある。だったら誰を標的にするのかなんて簡単だ。すぐ近くに居る吸血種の始祖。真祖を狙う。

『・・・・・真祖でも、魔王種の対処は難しいのか?』

『・・・ふふふ、如何だろうね。其ればっかりは僕にも分からないかな・・・』

 どこか含みのある言い方だがもうそこは気にしない。思わせぶりな言動をしてくる事はもう分かっていたのだから。

『・・・・・そうか。・・・・分かっていたがそんな奴と戦うようなのか・・・』

 生物として生きている以上、正直不利である。再生能力を持つ自分でさえ、血液を操られたら、対処のしようがない。

『・・・・・やりようはあるかもだが。・・・・・・正直賭けが過ぎるか?』

 血液を操る相手に対処する方法を今、思いつきはした。・・・・だがこの策は如何せん博打が多く、実行できるかも怪しいところである。

『はははっ! 残念なお知らせをするよ?』

 これ以上残念な事なんてあるのかと疑問に思いながら訝しげな顔を向け、耳を貸した。

『奴ではなくてね。奴等って言ったほうが良いかな?』

 思わず眉を顰めてしまう。奴ではなく奴等。複数形。明鳥の言葉を否定してまで伝えたこと。あまりにも回りくどい言い回しに、彼も疲れてくる。

『ちょっと待て。奴等? ・・・・・えっ? 奴等っていったのか?』

 あまりにも衝撃的な事を言われてしまい、ついには考えが纏まらないくらいにまで混乱した。

『つまりは二体今そこにはいると言う事だよ』

 信じられない。いや、信じたく無いようなことを言われ、明鳥は遂にその場で腰を抜かす。尻餅をついた彼は、少し壊れたように笑った。

『はははっ! マジかよ』

 最早語彙力もなくなりつつある。幾ら二百年近く生きているとはいえ、今は所詮精神体。その体の構造は十七歳の少年のものである。体の構造に精神は引っ張られるため、アダルの状態では起こさないような行動をしていた。

『大丈夫かい?』

『大丈夫かどうかでいったら大丈夫の方だろうな。・・・・ただあまりにも衝撃的すぎて腰が抜けただけだから・・・』

 少し恥ずかしそうにしながら言葉を返す。腰が抜けているため立ち上がれかった。正直初めての感覚で自分でも意外になった。少し痛みも感じるため、安静しようと楽な体勢に座り直した。

『・・・・・・もう一体の方は。・・・・さっき言ってた天使の奴か?』

『・・・・ふっ。正解だよ。・・・冴えているね』

 これまでの話からして、思い至ったことを口にしたらまさか正解だった。明鳥からしてみたら嘘であって欲しいという想いもあったのだが、その願いはあっさり砕けてしまう。

『空気を操る奴もか・・・・・』

 正直言って勝てる見込みがあるのか分からないのが現状である。何制魔こちら側で明確に戦う意志を持っているのは神獣種の三体だけ。数の面では優位かも知れないが、勝っているのはそこだけなのだ。一体だけならまだしも二体同時だとしたら正直言って勝算はない。

『・・・・・相性が悪いんだよな・・・・』

『確かに、神獣体での相性は悪い相手ばかりだね』

 元の姿と言っていたが、その状態のことを神獣体と言えば良いのかと今さらながら思ったが、其れは今は脇に置いておく。

『光。毒。時間。・・・・相手は血液と空気。俺はどっちも相性が悪いんだよな・・・・』

 この中で一番光であるアダルが対応が難しい。どちらも生きていく中では欠かせない者であり、アダルからしてみたら絶対に必要なものであった。

『まあ、そうだね。・・・・・・逆に尤も相性が良いのはハティス。時を止めたら良いだけの話しだからね』

『・・・・そうだな。・・・・ヴィリスだったら姫さんの力と拮抗するかもな・・・』

 幾ら血を操ると言っても、その毒性を変えることは難しいと思える。ヴィリスの毒はその性質を変えたとて、本質は変わらない程強力なものだから。

『そうかもね。・・・・もしかしたら彼女は対応出来るかもね・・・』

『だな。・・・・・問う言う事は俺がやることは時間稼ぎってところか・・・・・』

 空気と血を操れる相手を同時に二人相手する。これは正しく命を賭けないと行けない。だからこそハティスとヴィリスの協力は必然。元々一人で戦うつもりは無かったが、それに戦略的理由が付いた。

『・・・・・・・それでも噴火は免れない。あの場所の地形が悪いからな。溶岩も毒ガスも降りてくるように仕掛けて居るだろうし・・・・』

 一人の犠牲も出さないというのは些か都合が良すぎる。必ずしも護星は払われてしまう。

『その犠牲を少なくするために真祖に頼ったんだろ? ・・・・ところで君の言葉からして、真祖は戦力にカウントしないのか?』

 正直カウントしたいに決まっている。だが・・・・。

『俺はまだ分からない。・・・・真祖を味方だと思ってはいる。・・・だが肩を並べて戦ってくれるのかは・・・・。図りかねているんだ・・・・』


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