二十四話 起きるもの
その後アダル達はユーナの提案により、この日の一日この真祖宅にて休養が取れることになった。本当なら時間が無いため休養はいらないと思って居たが、さすがにこの半日緊張状態が続き、それぞれ疲れが見えているそうなのだ。現に眠っているヴィリスとハティスがそれを体現していた。
「・・・・・まあ慣れない事を敷いたからな。付かれてもしょうが無いか・・・」
慣れないというのはアダルが多く多用する人化状態での一部だけ力を振いやすいように展開している一部獣化である。今までは戻すと表現していたが、それはアダルだけが用いれる表現であった。ヴィリスの場合は今や人の状態で居る時間の方が長く、殻割りしたばかりのため、竜の体に慣れていない。と言うのに一部だけその状態にするというのにも苦労したようだった。そのため、彼女は想いの他疲労をため込んでいたようだった。ハティスにしたってそうであろう。疲れていたが故に真祖の術にかかり、眠りこいてしまった。
「・・・・仲間の疲労状態が見えないとは。・・・・・はあ」
反省したアダルは準備して貰った客間の寝室で頭を抱えた。その真祖宅には客間が複数あり、その一室にアダルとハティス。もう一室の方にヴィリスが休んでいる。男女で分けた訳だ。
「・・・・まあ、こっちの方が休めるよな・・・・」
正直あのままホテルで休むことになっていたら、心は休めなかったであろう。何せヴィリスと同じ部屋であるのだから。
「・・・・別に嫌って訳じゃ人だがな・・・」
思春期の時に死んでこの世界に転生してきた。其れが関係しているのか、最近そのときの感情というものが戻ってきていた。
「・・・・・前に旅したときはそういう感情は抱かなかったんだがな・・・」
百五十年前は人化をせずに旅をしていた。だが今回は人の姿でこの世界に出て来た。其れが違いなのかと思ってしまう。
「違いなんてそれくらいだよな。・・・・」
逆にそれくらいしか明確な理由は分からなかった。
「・・・・・・思えば俺が人の姿で居るとき。多少外見は良くなっても、前世の姿に似ているんだよな。・・・・・何でだ?」
気になることは考え込むアダルだが、この件は珍しく困惑していた。どうしてか考えようとしても頭がぐるぐるする感覚に陥り、思考が纏まらない。
「・・・・はあ。・・・・気持ち悪くなってきた。・・・・もうその件は止めよう」
そして思考は先程の事に戻ってきた。
「・・・・・二百年くらい生きているって言うのに精神は成長していない。・・・・いや、人化したときの体に精神が引っ張られているのか?」
ということはこの姿を成長させれば精神も成長すると言うことなのかと思ったが、すぐに行き詰まり、座っていたベットに寝転んだ。
「・・・・・そもそも成長の仕方が分からねえ。・・・・・はあ」
深いため息を吐きながら目元を手で隠す。
「・・・・・・・ここは・・・」
ふと隣のベットから声が聞え、アダルは上体を起こす。
「起きたか。・・・・よく眠れたか?」
「・・・・ええ。・・・・・眠っていたようですね。・・・・・どのようにしてこうなったか教えていただきたいのですが・・・・」
急に見知らぬところで目を覚ましたからか混乱して、頭を抑えている様子だ。
「それもそうなんだが。・・・・・お前はどこまで覚えているんだ?」
答えたいのは山々と言いたげだが、まずはどこまで記憶しているのかが気になった。其れによってどこから話すのかが分るから。
「えっと・・・・・。たしか朝方になって、貴方が起こそうとしたところは覚えています。・・・其れを感じ取ったから私も起き上がろうとしたのですが、・・・・急に意識が遠のいた」
「なる程。・・・・・・そこからか」
あそこまではどうにか意識があったと言う事が確認でき、自然と頷いていた。
「分かった。じゃあまず個々はどこかって事から話すとするか・・・」
どこから話したとしても彼からしたら驚くようなことばかりだろうなと思いながらも口を開こうとする。だがそこで少しだが意地悪なことを思いついてしまった。
「・・・・・・」
「ん? 如何したのですか? そんな意地悪をしそうなときの表情を浮かべて・・・」
そして其れは顔にまで漏れてしまっていたようだった。
「・・・いや、一瞬本当に意地悪をしそうになったんだが、其れも時間が無駄になるから止めておく。・・・さて話を戻すが。個々は真祖の住居。俺たちは今この場所で昨日の疲れを癒やすために休ませて貰っている状況だ」
アダルの発言に彼はすぐに首を傾げる。勿論言葉は出ない。と言うかアダルが言ったことに理解が追いついてない様子だった。その表情が呆けていたことから其れが窺える。
「・・・・・あの。・・・・嘘ですよね? 先程の言葉は・・」
「嘘じゃないぞ。この状態で嘘をつけるほど俺たちには時間が余り残されてないんだからそんな無駄なことはしない」
語彙を強く言うと、ハティスはようやく現実を受け入れようと努力していた。
「・・・・ええ。良いでしょう。今のこの状況に関しては受け入れるとします。ですがその前に言うべき事はありますよね」
疲れた様に口にするハティス。その言葉からは疲れ意外にも他の感情が込められているのはアダルも感じ取った。最早驚きすぎて毒気を吐く気力も無い彼だがそれでもやんわりと責めているようだった。責められることをした覚えは当然ながら有るため、まずは謝罪することにした。
「まあ先にこの場所にについて話したことは意地悪が過ぎたな。悪い」
「・・・・・思えば自分も昨日同じように意地悪なことをしてしまいましたから。これでチャラという事にしておきますよ」
大人な対応を見せるハティスにアダルは少し曖昧な笑みを向ける。
「さて、お前が知りたがっていたあの後の事だが。・・・・お前達は真祖の術によって眠らされたんだよ」
彼には詳細に話した方が誠実だと思い、アダルは彼に話し出す。
「俺からの視点だが。何時までも立ち上がる気配が無くてない。それどころか倒れる音が聞えた。お前達を見てみると正しく地に伏せって動かなくなっていたんだ」
「・・・・・死んだとは思わなかったのですか」
いきなり倒れたら殺されたと思っても仕方が無いとは思う。だがその問いにアダルは首を振った。
「まあ一瞬思ったが、すぐに呼吸音が有るのは分かったからな。・・・・まあお前達が寝たせいで俺は人質を取られることになった訳だが・・・」
嫌味にきこえるようにわざと其れを口にするとハティスも少し反省した顔を出した。
「それは・・・・・。申し訳ありません」
「・・・・・・まあ慣れない事を敷いた俺も悪いからな。これに関しては何も言わないが。・・・・・いろいろ気をつけろよ?」
注意する口調をした後に話を戻すように話し出した。
「.そのあとすぐに真祖本人がはそこに姿を現した」
「・・・・・犯人がですか?」
「ああ。其れは俺も驚いたよ。だからそこで不味いと感じて俺はまずあいつに謝った。勝手に入ってきたしまったことは悪かったってな・・・」
決め顔で言うが、其れは命乞いであった。幾ら格好良く言ってもやっている事はかっこうわるいと思われるようなことである。だがそこを責めることは当然ながらハティスには出来なかった。何故なら術に嵌まってしまった後ろめたさと、彼の行動によって
今があるのだと言う事を重々分かっていたが為。
「この山に入った時点で俺たちは何時殺されてもおかしくなったんだそれだけは偶に入れておけよ」
「・・・・はい」
其れしか答えることはで出来なかった。
「・・・・・。まあ真祖は最初から俺値を頃好きなんて亡かったらしいからな。お前達を眠らせたのも、俺と二人で話したかったらしいからな・・・・」




