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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
五章 顕現 堕天の青 快楽の赤 
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八話 熱湯風呂

 その後アダルは大浴場にあった数種類の浴槽に浸かり、サウナに入った後に外気浴をするために外の椅子に座って伸びていた。

「サウナ。結構良いのかも知れないな」

 関心しながら外気浴をしていると水風呂で冷えた体温が少しずつ上がっているのを感じ取る。それが気持ちよくてたまらない。これが癖になるのかと納得為る。これを数回行うと整うと言う現象が体に起きるらしいがアダルはまだそこまではいっていない。

「初めて入ったが良いもんだ」

 正確には設備のあるところのちゃんとしたサウナは初めてていったほうが良いかもしれない。アダルが暮らしていたのは大森林の洞窟は真夏だろうが真冬だろうが何故か温度は一定だった。水分も少ない場所出会ったが為財宝が錆びずにいた。だが度の中でそのような真夏に熱くなる洞窟に入ったときはさすがに熱さにつよいアダルでさえも少し堪えた。

「まああの時は水浴びもしなかったな。サウナと同じにするのは失礼か・・・」

 言葉で確認しながら反省の言葉をつづけた。

「・・・・・そういえば前世では苦手だったな・・・」

 熱さにつよい体質になったのは今世から。前世での明鳥は極端に熱さに弱かった。日本と言う地域は湿気が多いため夏になると其れが熱され、ただ熱いだけでは無く蒸し暑くなってしまう。そのせいで汗がすぐに気化してしまい、体温が下がらない。そんな状態が明鳥はきらいだった。体は動かす方だったのもあってすぐに体温が上がってしまう。暑さ対策をしなければいけないのだが、どれも効果は今ひとつ。塩分の入った飲料を飲むようにはしていたが、飲み過ぎてお腹を壊したりなども何度も経験した事がある。そのような苦い経験があるからこそそのような状況が好まなかったのだ。サウナなんて前世では嫌いな部類だった。其れの気持ちよさに気づけたのは今世での体のお陰と言っても良いかもしれない。

「と言うか前世が異常だったんだよな・・・」

 今の快適な状況と比べて前世の夏の苦い思い出が頭を過ぎる。日射病で体調が悪い人を見て放っておけなかったから介抱をしていたら自分も日射病になったり。喧嘩に巻き込まれ、終わる頃に脱水症になっていたり。バイトの厨房では倒れかけたときもあった。どれの暑さ対策を怠った結果の熱中症。アダルはそれに毎年苦しめられていた。最早持病といっても良いくらいにアダルはよくなっていた。

「よく死ななかったよな。・・・・・さすがに死んでも可笑しく無かったと思うが」

 苦笑するアダルだがさすがにもっと早死にしてもおかしく無かったことに肝を冷やす。

「ははっ。・・・・・もう中に戻るかな・・・」

 体温は戻ったと思ったときにこの様な事を考えてしまったが為に少し寒さを感じてしまった彼は中に戻る為に立ち上がった。

「もう一回温泉に入るとするか」

 体を温めるにはやはり温泉が最適だなと思い、中に通じる扉に手を掛けようとした。しかし寸でのところで向こうから開いた。

「あ」

「あ」

 扉を開けたのは青髪の青年だった。

「また遭遇したな」

「ええ。まあ、・・・・・縁があるんだろうな・・」

 結構な広さがあり、他の利用客も多い。そんな中で何回も遭遇為ることは結構あり得るのかも知れない。しかしアダルは何故かここで縁という言葉を使った。直感的にその言葉が浮かんだからそのまま口にした。

「あんたとの縁は良縁だったら良いな」

 投げかけられた言葉に青年は一瞬きょとんとするが、すぐにどこか含みのある笑みを浮かべた。

「其れは自分も思っていたことだ。できれば仲良くなりたい。悪縁だったときには目も当てられないからな」

 アダルも同意為るように頷くと青年に道を譲った。

「それじゃあ、また会えたらいいな・・」

「ああ。そうだな・・・」

 言葉を交え他彼らは各々の目的の場所に向かっていった。

「・・・・悪縁ね・・・」

 そのような言葉はこの世界にあったかと疑問に思ってしまった。そもそも縁の話しを持ち出したのは自分である。それに対して縁の言葉を選んだ彼が気になってしまった。

「・・・・・考えすぎだったら良いな・・・」

 あくまで推測。可能性が低い。証拠が少ない。その全てが間違っている。そうであって欲しいと思っているのかも知れない。言葉にした通り、考えすぎのことを願いながらアダルは最初に入った温泉に向かっていく。

「おい。ここのお湯。何だか殺気より熱くなってないか?」

 ふと周りの客の声が耳に入ってくる。考えすぎの思考を飛ばすには十分過ぎるくらいの言葉が。

「ん? ・・・・・・確かにさっきよりも熱いな。・・・まあ、気にする程度じゃ無いだろ」

 その客が話しかけた男もお湯の水温上昇に気がついたみたいだが、さほど気にした様子では無かった。

「いや、気にすんなっていうがよ。なんだがよ。急に熱くなって言っている様な気がしてならねえんだよ。・・・・・・・あっつっ!」

 水温の上昇についにその客は耐えられなくなったようで飛び上がって、外に出た。

「そんなおおげさって熱いぞこれ!!」

 だべっていた男も熱さによって飛び上がるように温泉から出た。その他の客も同じように温泉から出ている。

「何なんだよ急に!」

「火傷するかと思った・・・・」

 喧噪に包まれつつある大浴場。最早みんな体を休めることよりも安全を優先した。アダルも気になって近付きお湯の中に手を突っ込んだ。

「五十度。・・・・嫌もっと上がるな。・・・・確かにこれは人の入れる温度じゃ無い」

「おい! 大丈夫かい!」

 突如奇行に走ったアダルを心配した近くの老人が心配したように声を掛けてくる。

「ああ俺は大丈夫だ。・・・・・・だがもうここには入れないな・・・」

 折角体を温め直そうと思っていたところだったのに。其れが潰された彼は舌打ちを鳴らした。

「た、助けて!!!」

 悲鳴が聞えたためその方向に目をやる。そっちは岩のような置物があり、その上は事もが一人乗っていた。

「逃げ遅れたか」

「でもこの温度じゃ助けに行く方が大やけどをするぞ」

 いまだにお湯の中に手を突っ込んだままだから分かる。既に水温は八十度近く。アダルを別として普通の人間なら入っただけで火傷してしまう温度である。

「・・・・・・」

 徐ろに立ち上がったアダルはまったく前動作も無く温泉の中に入っていく。

「おい!」

「無茶だぞ! あんちゃん!」

 さすがにアダルの行動に皆が驚きと心配の声を上げる。しかしそれを気にする彼では無かった。それにもう入ってしまっているのだ。心配の声を掛けるのには遅すぎると言っていいだろう。それに心配は無用と言っていい。

「すぐに助けるから少しそこでじっとしていろよ!」

 少年にそう伝えると涙目に成りながらも何回も頷いた。既にこの時点で半分の地点まで来ていた。その足の進む速度もここまで変化は勿論していない。

「あいつだけに格好つけさせるわけには行かねえよな」

「そうだな。俺たちも男気を見せねえと・・・」

ふと後ろからアダルが入っているのだから自分も助けに以降と意気込んでいる声が聞えたからそこで立ち止まって後方を向いた。

「火傷するから止めてくれ」

「何を! お前だってやってるじゃねえか!」

 注意を受けた男はアダルに言われたからと言って引くような人物では無かった。

「俺は熱に強いから入って居られるだけなんだ。それにな平気そうに見えているがもう下半身は大やけどだ。だから入ってこないでくれ!」

 衝撃的すぎる言葉に言葉に男は言葉を飲んで引っ込んだ。其れを確認為るとアダルは再び少年の元へと歩き出した。勿論大やけどというの嘘だ。アダルはこの程度では火傷を負うことは無い。

「さあ、お湯にはつけないから俺の腕の中に・・・」

 少年の元に吐いたアダルは少年に火傷を負わせないようにお姫様だっこをした。

「・・・・暴れないでくれよ」

 その後の言葉は言わなかった。が少年はその意味をくみ取ってくれたらしく何回も頷いて大人しくなった。其れを確認為るとアダルは踵を返して向こう岸まで歩みを進めた。


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