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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
四章 集合、神獣種 宣戦布告、魔王種
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五十一話 援軍

 リンちゃんの戦いが終わったのを見届けたアダルはその顔を顰めた。

「あれは・・・・・・。えげつないな・・・・」

 彼女の出生は知らない。しかしおそらくでは有るが怪異種の血が入っていることは検討が付いた。何せあのような空間に穴を開けるなどの事が出来る種族など怪異種以外に出来ないはずだから。悪魔種や魔王種なども行えるのだろうが、少なくとも他の神獣種は真似できない芸事であろう。

「それに結構残酷なところもあるんだな・・・」

 彼女自身はとても臆病で有る。しかしだからといって何もしない訳ではない。時には反撃する事も出来る者だった。臆病ではあるが温厚ではないのだ。

「それでいて本当に怖いのはあれで未熟だって事か・・・」

 戦いを見てアダルはすぐに分かった事があった。リンちゃんは多々買い慣れていないこと。そして自分の能力を理解していないこと。

「空間に穴を開けられること。巨人を縮めること。そして幻術に嵌める事。・・・・・一体どこに共通点があるのか。・・・・・全く分からないな・・・」

 どんな能力なのかアダルでさえ理解が及ばない。おそらくは戦場にいるなかでハティスのみがその答えに到達できそうだな。と朧気に考えた。

「一体どんな仕組みがあるんだか・・・」

 そこまで思考してアダルはそれ以上は考えるのを止めた。どうせ考えた所で答えには行き着かなそうだなと思い至ったから。

「さてさて他は・・・・ってベルティアはもう終わっているんだったな。・・・・他の二人は・・・・・。ありゃ」

 ベルティアが既に戦闘が終わっていることを思い出したアダルはアストラとハティスの戦いに目を向ける。すると素っ頓狂な声を上げて顔を顰める。

「どっちももう終わりそうだな。・・・・・っていうかどいつもこいつも何であれだけ強いんだか・・・・・。俺は苦労して倒したっていうのにな・・・」

 圧倒的巨体を誇る巨人に対応為るためには自分も同じ大きさにならないと駄目だった。それ故に余計に体力を消費した。それでも光神兵器を使ったときよりはマシであったのだが。

「・・・・・・。彼奴らもクラスメイト。・・・なんだよな?」

 神獣種は事故で共に死んだ元クラスメイト。というのは星の意志から聞かされていたこと。だが彼らは本当に元クラスメイトだったのか。アダルには自信が無い。元クラスメイト達とはそれなりに交流してきたつもりだ。しかしあのような性格の者達は居なかったと記憶しているのだ。

「・・・・・・こっちに来て性格が変わったか・・・・・。それとも元からあんな性格の連中だったのか・・・・・。どっちもの可能性があるな・・」

 結局どちらも合わさって今の性格になったと言う結論となった。確証は無いためあくまで自分の中ではそうなのだなと勝手に結論をつけただけである。

「って、そんなくだらないことを考えている場合じゃ無かったわ」

 今は情報集めの方が大事だ。これから共に戦うという者達の能力や特性を知っておいたほうが次の共闘時連携がつけやすくなる。そしていざ対立したときの備えにもなるだろう。こんな風にアダルはあまり神獣種を信用出来ないで居た。先程旧友であったヴァールの裏切りにあった為、慎重になるしかなかったのだ。別に彼はヴァールの裏切りに傷付いているわけでは無い。彼の性格からしてずっとこの城の中で生活するのは無理だと分かっていた。そして刺激を求めていずれ大母竜を裏切るであろうと言う事も。だから彼が裏切り者だと分かったときも内心で納得してしまったくらいだ。だがそのせいで有る疑念が生れてしまったのも又事実である。もしかしたら神獣種の中にも裏切り者がいるのでは無いか。もしくは、裏切る可能性がある者がいるのでは無いかと。

「可能性があるのは。・・・・・・・・」

 彼が見たのはベルティアとハティスであった。二人の性格上裏切っても不思議では無い。ベルティアは元から食物としか見ていない節があるし、ハティスもその胡散臭い性格から何を考えているのか分からない人物でもある。

「・・・・・・・今のうちから裏切りを警戒しているって。俺も性格が悪いな・・・」

 素直に共闘関係になる者達を信じられない。しかしそれは当たり前って言ったら当たり前であるのだ。彼らは共闘関係に有るだけで仲間では無い。一種の同盟のようなものなのだ。

「完全に信用は出来ない。俺も・・・・・。そう思われている可能性もあるしな・・・・」

 だがそれでいいとアダルは思った。共に戦うのだからと言って、仲良しこよしでは絞まらない。各々自分の目的の為に共闘しているのだとアダルは感じ取っている。出なければあのような癖の強い連中が無条件で悪魔種との戦いに参加するとは思えないのだ。

「もうすぐ終わりそうだな・・・・・。数刻で終わるとか。・・・・・・・早いな・・・」

 もしかしたら各自わざとここまで時間を取ったのでは無いかとすら思えてくる。各自は実力者だ。それこそ巨人程度であったなら元の大きさであっても戦えていたであろう。しかしそれならば疑問が残る。彼らは何故態々時間を掛けたのかという疑問だった。しかしそれはすぐに分かってしまった。

「証明のためか・・・・」

 実力の証明。それ以外で意図的に時間を掛ける理由が思いつかない。巨人を倒す事は簡単な事なのだろう。しかしその時間があまりにも短すぎると巨人が弱っていたからとかの声が上げられる事になる。これ以上時間を掛けることも出来ない。苦戦しているように見える為である。そのためこの程度の時間で終わる必要があるのだ。ベルティアはそんな縛りを気にせずにさっさと倒してしまった。リンちゃんもおそらくそんな事を気にしては居ないだろう。と言うか気にしている暇など無かった。しかしハティスは気にしている。アストラも面倒だとは思っているだろうが、彼に付き合っている形だ。本来ならもっと早く巨人を倒しても良いのに時間を掛けているのはこのせいだろう。アダルだって同じ条件だったらそうするだろう。

「はあ。これは本格的に鈍った体を鍛え直さないとな・・・」

 ため息を吐きながら呟いていると上空に何かが現れるような気配を感じた。それはとてつもなく邪悪な気配であった為険しい表情のまま彼は上空を見上げた。

「・・・・・ちっ!」

 澱んだような禍々しい色の霧が上空がを覆い始めた。それを見た瞬間アダルは舌打ちを鳴らし、合図のように戦場にいる神獣種に向けて叫んだ。

「巨人共の援軍らしきものがくるぞ!」

 その声に戦場にいる神獣種は直ぐさま反応して上空を見上げる。

「はははっ! あたしのおかわりが来たんだ!」

 ベルティアはまだ食事が続けられることに歓喜した。

「・・・・・もう・・・い・・・・や」

 リンちゃんは戦いがまだ続くことに嫌気が差してその場でしゃがみ込んで耳を押えた。

「・・・・・勘弁してくださいよ」

 ハティスはもうすぐ巨人が倒せそう名ところで現れた新たな敵の存在に余割れを吐いた」

「趣味が悪い奴もいる者なのだな。・・・・・勉強になった」

 アストラはそう言いながらも顔では不機嫌なことを表していた。

「・・・・・・。これは俺がやるべきか。・・・・・・まあ、毒は抜けたから良いんだが。・・・・・それでも今日は休むつもりだったたんだけどな。・・・・ままならないものだ」

現実が上手くいかないことをしみじみ思い知らされたアダルはため息を吐きながら霧に目をやると、徐々に何かが形成為れるのが分かった。その大きさは元の大きさの巨人の肩幅より大きかった。つまりは巨人がさらに追加されることが分かってしまい、アダルはまたも顔を歪めたのだった。


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