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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
四章 集合、神獣種 宣戦布告、魔王種
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四十二話 観戦

 四体の巨人達が各々神獣種達と対峙している中。アダルは世界樹の枝に座り、その様子を眺めていた。正直言って体調はまだ本調子じゃ無い。体内の毒が未だに彼の体を蝕んでいることに変わりは無いのだ。しかしそれも彼の光によって浄化されつつある。だから全く戦えないというわけでは無いのだ。ただ元の姿になれないだけ。だから戦闘には参加は出来ない。この姿で戦ったところで苦戦するのは目に見えている。下手したら足手まといになるだろう。

「ああ、やっちまったな」

 あの時毒と気付いていながら飲み干した自分を殴ってやりたい。普通飲まないだろう。しかし自分の能力に過信した事が仇となった。

「これからは気をつけないとな・・・・」

 過信した結果が今回の失態だ。ならば過信はこれっきりにしなければこの先命を失いかねない。自分のも守る存在の物も。軽口のように口にしたが、それはきちんと心に刻まれた重い言葉だった。

「さてさて。今回はゆっくり出来るとは想うが。・・・・・・どいつもこいつも化け物ばっかだな」

 変貌したアストラ。ハティス。ベルティアの姿を見てアダルはその言葉が零れた。アストラは牛の怪物。ハティスは狼。ベルティアは人型の虫となったのだ。今思えば星の意志のところで見た神獣種はアストラとハティスのことだったんだなと思い至る。

「一番の化け物はやっぱ、リンちゃんか」

 彼女だけ唯一この戦場で姿を見ないが、最早彼女の役目は終った物だとアダルは考えてる。元の姿に戻ったとしても見上げるほどの巨体。それを彼らと同じくらいのサイズにしてしまったのだから。

「なにをどうやったらあのサイズまで圧縮できるんだか・・・」

 彼女の特異性は頬かの者達と引けを取らない。或いはそれ以上だろう。何せ彼女のお陰で巨人の優位性を崩す事が出来たのだから。

「・・・・・なにを隠してるんだ? ・・・・・それとも自覚無く使って居るから詳細は知らないのか?」

 後者の考察はあり得ないかと切り捨てる。しかし実際はその通り。彼女自身自分の能力のことをあまり知らないのだ。

「まあ、兎に角だ。これで負けることは無くなったな。問題があるとすれば・・・」

 元々アダルはこの巨人達との戦いを心配しているわけでは無い。ここに居るのは彼らの実力が見れると思ったからだ。もし心配事があるとすれば。

「魔王種と戦っているあいつの方だよな・・・・」

 ミリヴァはヴァールの体を乗っ取った魔王種の一体を連れて自信の作り出した結界の中に消えていった。アダルからしたらあっちの方が心配だった。

「・・・・・・・。どうしているんだか」

 勿論彼女の実力をうたがっているわけでは無い。なに生前襲われた時に一番このからだを傷つけたのは彼女だった。いや、その表現は生ぬるい。瀕死の重傷を負わしたのは彼女だったのだ。再生する上であっても瀕死になるくらいの重傷は彼であったら早々有ることでは無いのだ。珍しいくらいである。珍しいと言う事は何回かそう言う相手と戦ったこともあるのだ。だから彼女の実力はよく知っているつもりである。しかし何せ相手が悪い。今回ミリヴァが相手にしているのは実力未知数の魔王種。どのような能力を使うのか。どんな生態をしているのか。どのような思考を持っているのか。まったく分からない明いてである。星の意志が警戒するほどの相手が弱いわけが無い。悪魔種の願いで生み出された存在が弱いわけが無い。星の意志と同じように全魔皇帝が転生者として呼んだ者達が弱いわけが無いのだ。だからこそ心配だった。果たしてミリヴァの実力で魔王種の一体を倒せるのだろうかと。もし倒せるのだったらこの先戦いは楽になるだろう。何せ基準が出来るのだから。しかし物事はそう簡単には進まない事をアダルは知っているし自覚している。

「大丈夫か?」

 杞憂であって欲しい。そう願いながらも願う結果にはならないのだろう。せめて彼に出来る事は彼女の身になにも無い事を祈るばかりだ。

「彼女が死んだらヴィリスが悲しむからな」

 これ以上彼女の悲しむ姿は見たくないと本能的に思ってしまう。そんな打算的な想いからアダルは彼女の身を案じる。正直言って彼女の事を心配しているのは紫乃程度でしか無いと言う事でもある。アダルに取ってはヴィリスの姉と言うだけでそれ程仲が良い存在では無いのだ。彼の中にある罪の意識とミリヴァの中にある憎悪の意識。これが有る限り二人が仲良くなることは無い。二人が今回同じ方向に向かっているのはどちらもヴィリスのことだったから。

「まあ、心配しても仕方が無いんだろうな。結果は終ってみなければ分からないんだから」

 勝敗はミリヴァが結界を解かなければ分からない。だからどうなるかはそのときなってから考える様に使用と思い至る。

「そんな事よりも今はこっちの方に集中為るか」

 言葉を吐きながらアダルは目の前で行われている戦闘に目を向けた。

「ベルティアは虫か。そういえば暴食の象徴って蝿だったよな・・・・・。なんだあいつにぴったりだったのか」

 七つの大罪にはそれぞれ象徴としての動物。或いは幻獣が存在する。暴食の象徴の一つは蝿。つまりは虫である。その点で言えば彼女はおそらく本当に暴食の罪を元にして生み出された存在なのだろうと言う事はなんとなく察せられる。だがおそらくは大罪をベースに生み出されたのは彼女だけであろうとアダルは考えていた。何せ他のメンバーからは大罪を想わせる部分を見せられてもそれ以上に優秀な面の方が目立っているのだから。例えばハティスだ。今日初めて会ったときいびきを掻きながら寝ていた彼だが、接してみれば勤勉な面のほうが彼の本性だった。おそらくは何かしらの情報網を持っていていろんな知識を頭に入れることを趣味としている事が窺える。偶に腹黒い面や煽りを入れてわざと喧嘩させようとするなど性格が悪い面も出ているが基本的には怠惰の反対である勤勉である。他の二人もそのような者だ。アストラは一見不遜である。いや、不遜なのは変わらないだろう。その態度が傲慢に見えることも確かにある。しかしそのしたのは確かな優しさと能力と人を見る目が備わっている。そうでなければ自分に対してあのような振る舞いはしない。リンちゃんだって大して大罪要素が見当たらない。自身もそうだがヴィリスやリヴァトーンだってそれは当てはまらない。敷いて言うならリヴァトーンは嫉妬の象徴の悪魔であるリヴァイアサンをモデルしているのでは無いかとは想われるがそれだって七つの大罪的にはあまり関係がないだろう。

「じゃあ俺の考察も当てにはならなかったか・・」

 今日彼らを見て想った考察は全くではないにしろ見当違いだったのだろう。

「気になるのはやっぱり、リンちゃんだな・・・・」

 彼女だけ一切素性が分からない。彼女も常に何かを怖がって話したがらない。今日半日の付き合いだが謎ばかりの人物だった。アストラもなにやら彼女には警戒している様子だし。それに何故か彼女にだけ当たりが強い気がする。

「気のせいかも知れないが・・・」

 そうじゃないかもしれない。何故アストラは彼女を警戒しているのか。それは本人しか分からないのだろう。しかしもしかしたら・・・・。

「・・・・・・・知っているのか?」

 彼女が。リンちゃんがどのような能力を持っているのか。そして彼女の正体を。

「・・・・・・まさかだよな・・・」

 ここにいる神獣種達は今日初めてお互いを認識したはずだ。それなのにその前に知ってる事はあり得ない。もしあり得るとするならば。

「星の意志がアストラにだけ伝えたからか。自分で調べていたからかだな」

 多分どちらもあり得ないかと思いながら、所詮は自分がそう考えただけだとこの問答を終らせた。


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