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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
四章 集合、神獣種 宣戦布告、魔王種
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三十九話 リンちゃんの内心

 ベルティアとリンちゃんは森を進んでいく。と言って進む方向に木など無かった。理由としては巨人が吹っ飛ぶ際に土を抉りながら進んだせいだ。

「ねえねえ、リンちゃん」

「・・・な・・・に? ベルちゃん」

「巨人ってさ、美味しいのかな?」

 ベルティアからの質問にリンちゃんは困惑の表情を見せる。

「あ、味・・・は・・・・わかん・・・・ない」

「そうなんだ・・・・・・。でも味が悪かったとしても食べ応えはありそうだよね?」

 巨人の味やら、食べ応えやら。ベルティアの言っていることがリンちゃんは理解が出来なかった。それは考え方が違うから。ベルティアはアダルが言った通り、七つの大罪の暴食を司っているかのような飲食っぷりである。その細い体のどこに収納されているのかと疑問に思うほど。そんな彼女は先程からおそらく一般の彼女と同じ体型の人間が摂取していい量では無い程の食物を口にしていてもすぐに腹が鳴ってしまっている。おそらくは彼女の腹はブラックホールのごとき何かがあるのでは無いかとすら思える。それくらい彼女は何かを食べ続けなければいけないのだ。別に食べなくても死ぬわけでは無いのだろうとリンちゃんは思っている。だがそれでも食べ続けているのはおそらくだが、彼女が本当の大食漢だからだろう。何せ彼女が何かを食べるときの表情は嬉しそうであるから。食べるのは好きだからこそ続けていると思える。

「まあ、美味しそうで言ったらあっちの二人の方が美味しそうなんだよね」

 そう言うと彼女は牛の化け物と狼の方に目を向けた。二人は今巨人と対峙している。各々一体ずつ。狼の方は爪を埋め込んだあとはただひたすら巨おジンの攻撃を避けるだけ。牛の化け物は巨人の方が彼の迫力にビビってしまい一向に戦おうとしていない。というかそもそも動いているのかすら妖しい。もしかしたらもう既に化け物の雰囲気に押されて息が絶えているのかも知れない。それくらい動いていないのだ。対する化け物の方は何というか暇そうである。元々彼はこの戦いには乗り気では無かったと言う。そしてどのように襲われたとしても普通に対処できるという余裕の表れであろう。そんな二人を見て美味しそうと言えるのもおかしいことなのだが。

「り、リンちゃん・・・・は?」

 不意に疑問に思った事を口にすると彼女満面の笑みを浮かべた。

「リンちゃんは不味そうだからパス」

 突然の否定の言葉にリンちゃんは思わずその場に立ち止まった。先を歩んでいたベルティアはリンちゃんが付いてこなくなったことに気付いて立ち止まって振り返った。

「如何したの急に立ち止まって。早く行こうよ。巨人が吹っ飛んだ場所までまだ遠いんだから」

 ベルティアからしたら全く悪意が無かった為、彼女がなぜ立ち止まったのか分からなかった。

「・・・・どう・・・して?」

「ん・ なにが?」

 彼女はリンちゃんの如何しての意味も話からに様子だった。仕方が無く彼女は続きの言葉を紡いだ。

「・・・・どう・・して。リンちゃんは・・・・美味しく・・・なさそう・・・な・・・の?」

「えっ? だってリンちゃんからはあたしの嫌いな臭いが為るからかな?」

 嫌いな気負いと不思議がるリンちゃんは首を傾げる。

「そっ! 一応何でも食べれるあたしだけどさ。食べたくない物もあるんだよね。例えばさ。明らかに嘘をついている物を食べると吐きそうになるんだよね。だから嘘をついている人ってさ臭いで分かっちゃうんだよね」

 言葉にしながら彼女はリンちゃんに近付き、耳元に口をあてた。

「リンちゃんからはさ。嘘をついている臭いがするんだ。だからあたしはリンちゃんを食べたいとは思わないよ」

 そう言った後にベルティアは数歩下がって彼女の顔を見る。リンちゃんは明らかに混乱したような表情を為ている。勿論その顔からも嘘が臭っていた。

「まあ、あっちの狼からも嘘の臭いがしているんだけどね? だけどなぜかその嘘からは芳醇で刺激的なにおいがするんだよね。だからあっちは食べたいと思うかな?」

 不思議がるベルティアはなにが違うんだろうと何回か首を傾ける。

「まあ、いっか。それよりさ、早く行こうよ。あたしお腹空いてきちゃった」

 そう言いながら彼女は再び足を進めた。後ろにいたリンちゃんも彼女に付いて行くように歩みを始める。歩きながらもリンちゃんは先を行くベルティアに目を向けている。彼女としては正直ベルティアにまでそんな事を感づかれているとは思わなかった。

 リンちゃん絡み手の自分というのは何というか臆病で怠け者というのは分かっている。話すのが怖いから言葉が途切れる。注目されるのが怖いからなるべく人間の姿になって目立たないような恰好をしてきた。基本的に臆病だからなのか。不思議な力が宿ってしまった。能力の本質は彼女でもあまり詳しくない。怪異種と妖精種のハーフである以上の情報を彼女自身が持ち合わせていない。だから自分が嘘をついているという自覚すら無いのである。それなのに周りからはそのような目で見られていた。そのことが彼女はショックなのだ。

「・・・・なにが・・・・・嘘・・・なん・・だろ・・・」

 小さな呟き。それは当然前を行くベルティアには聞こえていない。自分でも予期せずに呟いたことだった。そのことに驚くほか無いリンちゃんはただ人形を強く抱きしめた。

 分からない。自分が分からないのだ。自分の性格も。能力も。心の闇も。なにもかも彼女は自分が分からない。そして気付かないのだ。自分がなにを偽っているのか。

「・・・・・・・今・・・・は・・・違う・・・か・・な」

 不意に今の状況を思い出す。確かに女子二人で話しているのだが、これから向かう場所は巨人が居る場所。それも二体。吹き飛ばされた個体を心配して向かった個体が居るのだ。一体だけだったら。・・・・嫌、もしかしたら二体ともベルティアが対峙してくれるかも知れない。それは勿論期待している。彼女の口ぶりから為ると巨人を倒せるとは期待できる。そうでなかったら美味しいのかなとは言えない台詞だろう。そして向かわなかったら苦手意識を持っているアストラと呼ばれていたあの牛の男に文句を言われるかも知れない。正直怒られるのは嫌なので、仕方が無く向かっている節はある。この状況を思い出してしまい、今は自分の事よりも巨人をどうするのかを考えた方が良いと思い、そのマイナス思考を横に置いた。

「ああ! 楽しみだな! 今日は久しぶりに楽しいことばかりだな~」

 足を進めるごとにポジティブな事ばかり思い浮べているようだった。リンちゃんはそんな彼女を羨ましそうな目で見ていた。自分にはあのような事は言えないし、楽観的にも慣れない。そう言う意味で言ったら彼女もアストラと同じ部類なのかも知れない。思考は違うだろうが、自分の強さを疑わないからこそ出来る態度である行動だ。

「・・・・・・うら・・・やま・・・しい・・な」

「なにが羨ましいの?」

 まさか聞こえているとは思わなかった独り言を聞き返されて彼女は言葉に詰まってしまった。振り返ったベルティアの表情は微笑みを目にして余計に言葉を発せ無くなってしまった。

「あっ! もしかして殺気のあたしの発言気にしてる? まあ、普通はそうか。ご免ね?別に別に悪気が有ったわけじゃ無いよ? ただあたしってさ、思っちゃったらそれを口にしちゃうんだよね? だからリンちゃんを傷つけようとしていったわけじゃないから。・・・・・ってそう言う言い訳ももう遅いか。あはははは!」

 ベルティアは又失言していることに気付くと思わず笑い出したのだった。

「まっ! そういうわけだからあたしの言葉はあんまり真に受けなくて良いよ。と言う鎌に受けないで欲しいかな? あたしはさ。リンちゃんや今回殻割りした娘とは仲良くしたいなって思うからさ。そう言う意味では美味しくなさそうって言うか、食べたくないって方が近いかな?」


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