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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
四章 集合、神獣種 宣戦布告、魔王種
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三十一話 恫喝

 天井より落とされた人形は抵抗も出来ずに重力に従って床へと落下した。人形の重さはさほど無かったが、落下する際。傲慢の男の力も加わったことから床は人形の形にへこんだのだった。

『・・・・いってぇな!!』

 人形から上がった声は怒りの籠もった荒々しい物だった。おそらくこっちの子鍔使いの方が素なのだろう。

「動こうとは思うなよ?」

 起き上がろうとする人形に傲慢の男はその首に斧を突き立てる。自分に突き立てられた斧に目をやった後、視線を傲慢の男に向けた。

『この程度で俺が止まるとでも思ってんのか!』

 最早自分を取り繕うのを止めた人形は荒く問うた。

「・・・・試してみるか? この刃でお前の首を断ち切っても良いのだが・・」

 そう言うと斧の刃は首に接触する。感触は硬い物だったが男に通っては関係は無かった。力を入れれば直ぐに切り込みは入った。そしてなぜか人形のはずなのに血も流した。そして人形の表情も痛がっているが我慢しているように見えた。

「痛みになれていないな? 傷を負うのはこれが初めてか」

 それだけで傲慢の男は人形のことを見抜いた。そして力を緩めて首から刃を離した。勿論突き立てたままではあるが。

「それで? 何で今更姿を現した?」

 それを問うたのはアダルであった。彼はいつの間にか人形の、枕元まで近付いていたのだ。

『・・・・・さっきも言ったでしょう? 私達の天敵となり得る存在を生れる前に始末しようとしたって』

「それだけか?」

 本当にそれだけなのか。アダルは如何しても疑問で仕方が無い。

「ならやりようはあるだろう。例えば今回の殻割りに参加する前に殺しておくとか」

 それが一番簡単だ。しかも人形の目的ならそうした方が確実だろう。どうして殻割り注を狙ったのか。

「・・・・・・もしかしてお前。ヴィリスを自分の肉体に為るつもりだったんじゃねえだろうな?」

 屈んだアダルは人形の顔をのぞき込む。その際の彼の表情は真顔だった。

『・・・・もしそうだと言ったら?』

「潰すぞ」

『出来る物ならどうぞ?』

 おそらくここで人形を壊したところで本体の方には影響は無いだろうというのは分かっている。いや、先程の反応から見るに多少痛みは本体に持って行くのだろう。だが所詮はその程度。

「あんたは聞きたい事はあるのか? まあ、あるからこうして拘束してんだろうけど」

 アダルは人形に聞きたい事も終ったから後は彼に託した。

「・・・・別に無い。我が此奴を拘束為ているのは必要だと思ったからだ」

「そうかい。ならいいか」

「私はありますよ」

 そう口にしながら近付いてきたのは大母竜だった。

「・・・・・。良いんですか? こいつの狙いはヴィリスですよ? それなのに離れても」

「・・・・良いのです。卵はどうせ触れられませんし。それにもし何かあったときの場合も想定して、私自身の結界も施してきましたから」

「・・・・そうですか。それならいいです」

 大母竜自身がそこまでの処置を行ったのだから安全だと思いたかった。実際安全なのだろう。しかし物事はなにが起るか分からない。実際この場に魔王種が現れるなど誰が想定できたか。・・・・・いや、実際大母竜は想定為ていたのだろう。だが本当に現れるとは思って居なかったはずだ。

「・・・・・。協力者が居ますね?」

 そうでなければおかしいと彼女は考えた。何せこの城に入り込むのは招待された物か、ここに住んでいる者。つまりは大母竜が許可した者しか入れない。全魔皇帝が特別なのだ。普通の悪魔種。敷いては魔王種であろうと絶対に入り込むことは不可能。もしそれが可能だとしたら誰かがこの城に招き入れたとしか考えられない。

「・・・・・まあ、そうだよな」

 アダルもなんとなくそうではないかとは思っていた。だが確信が出来なかった。

『教えると思っているのか?』

「いいえ。ですがその必要はありません。既に誰が貴方の協力者なのか分かっていますから」

 そう言うと彼女は徐ろに手を有る方向に向けた。為るとそこから何かを引っ張るような力が働く。それは一見為ると目に見えないが、アダルや傲慢の男は気付いた。

「うおっ!」

 そして誰かが大母竜の手に吸い寄せられ、その首を掴まれた。誰が捕まったのかを見て、アダルは言葉を無くたのであった。

「・・・・・・まあ、貴方でしょうね」

 どこか悲しそうに顔を歪ませる大母竜はその目で裏切り者を見た。

「ははははっ! さすがだな。こうも簡単にばれるとは思わなかったのだが」

 裏切りがバレたことで吹っ切れたのかその男。ヴァールは笑い出した。

「・・・・笑い事じゃ有りませんよ? 一体なにが目的ですか? 貴方の事ですから力を欲したわけではありませんね」

「ああ正解であるな。自分は別に魔王種と協力しなくても良かったのだが。今更さらに力を望んだところで、上の者達には叶わないことは自覚している」

「ならなぜ?」

 不思議そうに訊ねるとヴァールは不敵に口角を上げた。

「面白そうだったから。それ以外に答えは必要か?」

 そう。彼はこういう男なのである。人と接しているときは少々言葉使いは変だが接しやすい。一見為ると変には見えない。だがその奥底に眠るのは快楽をひたすら追い求めている。退屈を嫌うのだ。昔一人で旅に出たのもそれが理由だろう。そしてそれによって被害を受けたことがアダルにはあった。

「・・・・・・やりかねないとは思っていたが・・・・。本当にやるか?」

 アダルは思わず呆れた。彼は快楽を追い求めるあまり、周りのことを考えない節がある。

「全くもって同意見です。貴方。昔私と約束しましたよね? もうこの様な事はしないと。まさか忘れたとでも」

「とんでもない。忘れるなんて事はもってのほかだ。面白い事をやっと記憶は忘れない主義なのだ。勿論それに付随した記憶もな」

 まるで忘れられたと思われて遺憾だと言いたげな表情をするヴァールであるがそれなら尚更悪い。

「それでも尚。協力したと言うわけですか。・・・・・貴方は私達を裏切って悪魔の側に着くと言う事ですね?」

「そう受け取って貰って構わない。何せ既にこの体は悪魔に。いや、魔王に差し出したのだからな」

 その瞬間ヴァールの雰囲気が変わった。そして人形から感じていた気配も感じとれなくなった。

『ここからなら外しませんね』

 ヴァールの口からそんな言葉が漏れた。そして誰も気付かなかった。ヴァールの手に機関銃が顕現されていたことに。

「あら」

『では、さらば』

 ヴァールらしからぬ笑みを浮かべる彼は近距離から機関銃を放つ。ズドドドドドドっという聞き慣れない破裂音が会場中に響いた。

「母様!!!」

「母上!」

「・・・・大母竜様・・・・・」

 硝煙によって二人の姿はほとんど見えなくなった。

「おい!」

「ちっ! 命令為るな」

 アダルの声に傲慢の男は答えつつ目を見合った。

「・・・と言う事で・・・」

「・・・・仕方があるまい。ここで恩を売っておいて損はないようだからな」

 彼らは会話をしていない。しかし目配せだけで作戦を練ったのだ。

「これは壊して良いのだな?」

「好きにどうぞ」

「そうか・・・・なら!」

 男は一度人形から斧を除けた。そしてそれを振りかぶって人形に叩き付ける。ガッシャーンと言う党規が割れたときのような音を出しながら壊れる人形。

「おぉっ、うりゃぁ!!」

 その反動を利用して手に持っている斧を硝煙の中に投げ込む。ガチンという明らかに鉄と接触した音が聞こえ、それと同時に機関銃の掃射音が消えていった。

「・・・・当ったな」

 持ち前の視力の良さで硝煙の中を見た彼は成功したことを男に伝えた

「・・・・・。考えてみればお前がやれば良かったんじゃ無いか?」

「・・・・・あんたのは物理攻撃のほうが成功する確率が高かったんだ」

 そう言うと彼は手を元の鳥の物に変化させて翼を広げる。つまりは戦闘態勢を取ったのだった。


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