二十話 気付いたこと
メイドがいなくなってから十分ほど。ヴィリスは暇を持て余していた。あまり今回の殻割りの儀やこれからのことを考えたら自己批判に繋がりそうだという考えからあまり尊母事は頭に浮かべることは無かった。彼女がずっと考えていたのは自身の恰好が似合うかどうかについてだった。
「・・・・私的には似合うと思うけど・・・・・。明鳥くんはこれを見てどう思うかな?」
正直彼女はこの恰好を綺麗だと言って欲しい。先程のメイドも彼女の恰好とメイクを見て「お似合いです」とは言葉にしたが、それはもしかしたらお世辞かも知れない。メイドの仕事は使える者を褒めることも含まれている。だから本心なのかどうかは彼女には分からない。
「似合うって。・・・・・綺麗だって言って欲しいな・・・」
だがヴィリスはアダルの言う事だったら100%信用出来る。嘘をつくこともある彼だが、基本的に心から思った事を言う傾向にあるというのを彼女は理解しているから。
「・・・・そういえば随分と逢ってないな・・・」
大樹城に着いてから数週間。彼女は一回もアダルと面会をしていなかった。会いにすら行けなかったのだ。ほぼ毎日長姉であるミリヴァと一緒に何かをしていた。時には絵を描いたり。有るときは雨楽器の練習をしていた。芸術全体を愛するミリヴァは何というかその類いのことをする事にたけていた。だからあまり日窓と思うことは無かった。だが一回だけ。彼女はアダルに会いに行こうとした時があった。従者達がアダルが巨人を討伐したことを話しているのを偶然にも遠くから聞こえたのだ。耳を澄ませて聞いてみれば、その巨人はこの世界樹を超すほどの巨大な存在だったと言うではないか。そんな存在と単独で闘ったのだから彼はきっと無理をしたんじゃ無いかと心配になったのだ。だからこそ彼に逢いに行こうとしたとき、ミリヴァに止められた。彼女はヴィリスの目的を知っていたかのように先回りをして彼女を待ち受けた。ヴィリスは如何してもアダルに逢いたいと願ったが、その願いだけは聞き入れてもらえなかった。彼女はミリヴァの屋敷にひきもどされてた。そのとき逢ったミリヴァは彼女にこう言ったのだ。『あまり、あの者と付き合わないように』と。その時のミリヴァの表情はなぜか悲しそうに見えた。そして彼女が心配していることは自分が伝えると言ってその場を後にした。だがそうは鳴らなかった。実際にミリヴァはアダルの前に姿を現したが、ヴィリスの事については一切触れずに黙っていたのだ。そんな事とは知らないヴィリスはミリヴァがアダルに自分が心配していることを伝えてくれも物だと思って居る。実際はそうでは無いとは知らずに。
「・・・・・・逢いたいな。逢って話しがしたいな・・」
思えば再会してからこんなに逢わなかったことは無かったなと思い返してみる。再開した直後から暇さえ有れば彼と一緒に行動を共にしていた。アバッサへの遠征の時も付いて行ったし、その後。ここへ来る途中までは一緒にいた。不思議と彼と一緒にいると心が安らぐような気がした。暇を持て余している彼が良かった。眠りについている寝顔がきゅんとした。思い返す事はそんな事ばかりだった。
「ははっ。これじゃあ私が明鳥くんの事が好きみたいじゃん」
そして遂に気付いてしまったのだ。自身のある感情に。
「・・・・・はは。そんな訳無いよね。ここまで一緒にいたからって。離れて気付くなんて・・・・。そんなわけ・・・・」
必死に自分を取り繕うと為る彼女は言い訳がましく言葉を紡いだ。
「確かに明鳥くんは良い人だよ。恩もいっぱいあるし。・・・・あの時は助けてくれたし・・・。だけど。だけどさ、なんで今更気付くんだろ」
他にも気付くタイミングは合ったって言うのに。
「・・・・気付いちゃったな・・・」
取り繕えない。ここで彼に好意をもっている事を否定出来ない。
「・・・・・。今日はがんばろ」
このままいけないと感じたヴィリスは無理やりsの話しを終らせる事にした。別に人と会話しているわけでは無いのだから結局は自己完結しただけ。それも答えも出ないまま出会ったが、別に良かった。無理やりにでも心の平穏を保つためにはそうするのが一番だったから。
「・・・・・・。どんな人達なんだろ・・・。今回招待された人たちって。メイドさんの口ぶりから為ると大分変わった人達そうだけど」
思い返してみれば先程のメイドはまったく彼らを賛辞するようなことを言わなかった。それでも大母竜が招いた客だから誠意をもって接していたのだろう。だが口ぶりでなんとなく分かってしまったのだ。招かれたものたちが変人。或いは問題児の部類に入ることに。
「明鳥くんはその部類に入ってないよね?」
彼女の不安げな言葉を裏切ることになるとことヴィリスは知らない。何せアダルは従者達。そして一部の竜からはその変人。問題児達の筆頭格に見られているのだから。それは前回訪れたときのことを考えればなにも不思議なことでは無いのだが。
「・・・・・その人達って、なんで呼ばれたんだろ? 母様のことだから何か考えが会ってのことなんだろうけど・・・」
前情報がまったく入ってこないせいか、ヴィリスは今回招待された者達が神獣種であることを知らない。
「悪魔種との戦闘のために呼んだのかな? もしそうだったらその人と多も相当強いって事なんだろうけど・・・」
もしかしたらアダルと同等の存在なのかも知れないなとヴィリスは考えた。
「・・・・考えても仕方ないですよね。まずはその人達に逢ってから。そこから付き合い方をきめればいいことですし」
そう心に決めタイミングでドアがノックされて、開かれる音が部屋に響いた。
「どう? ヴィリス。可愛くして貰った?」
「・・・・姉様」
入ってきたのは先程用事があると言って出て行ったミリヴァだった。彼女は化粧を施されたヴィリスの姿を見た瞬間に驚きを隠せずに声を漏らした。
「さすがね。元が良いからどんなメイクをしていても綺麗になる都思って居たけど。ここまで綺麗になるとはさすがにわたくしも思って居なかったわ」
予想外の綺麗さにミリヴァは思って居たことをそのまま伝えた。
「そんな・・・・。あのメイドさんの腕が良かっただけだよ・・・」
謙遜為るように言い返すとミリヴァは首を振った。
「そんな事無いわよ。元から美しかったけど、今のヴィリスならきっと誰が見ても一目惚れしちゃうわね」
勢いでそう言ったミリヴァであったが直ぐさま不機嫌になった。理由としては。
「もしそうなった者がいればわたくしが排除しなければ。不用意に近付こうとする者は許せないわ」
自身の可愛い妹に近付こうとする者に立ちして嫉妬を剥き出しにしたからだ。
「だけどそのくらい綺麗よ? これはお世辞じゃ無いのだけど・・・・。わたくしの言う事は信用出来ない?」
「い、いえ。そういうわけではないんです。ただ、そこまで言っていただけるとは思わなくて・・・・。その・・・。素直に嬉しいです」
少し恥ずかしそうに顔を赤らめたヴィリスにミリヴァは抱きついた。
「ほんとに可愛いのよ。本音を言っちゃうとこの美しさを独り占めしたいくらいに」
耳元でそう言われると余計に恥ずかしさが増したヴィリスはミリヴァを引きはがした。
「そ、そういうのは・・・。恥ずかしいので、止めてください」
「そう? 別に良いじゃ無い。姉が妹を褒めておかしいは無いでしょ?」
「いえ、その。言葉が少し恥ずかしいから・・・」
恥ずかしがるヴィリスを見てミリヴァは微笑むのであった。




