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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
第三章 金剛の翼巨人
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四十八話 巨人の能力

 巨人が地上に落下した衝撃は凄まじい物であり、この周辺は震度七にもなるほどの地震が発生で大地が揺らぎ、落下した際に大きなクレーターが出来た。半径が二キロにも到るほど巨大なそれは広さだけでは無く、深さでも抉っていた。幸いなにも無い草原であったが、それ程の広さと深さによって草原はほぼ壊滅したのだ。

『・・・・・おっとぉ!』

 落下により発生したら衝撃波は上空にいるアダルにも届いていた。それには巨体になっても飛行中のバランス感覚が乱れることが無かったアダルも思わずバランスを崩しそうになった。

『ははっ! 今は地上にいなくて正解だったな。この巨体じゃあの揺れに耐えられないからな』

 地上に惨状を目にしながら軽口を叩くが、内心は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。周りにはなにも無く、近くには人がいないだろうが、今の揺れのせいで被害を受けた者達は必ずいるのは分かっていた。巨人を倒す為にとはいえ、相当な被害を周りに催す。そんな自分の戦い方が嫌にもなるが、今はそんなこと考えている暇など無いと気持ちを切替えて自身も降下する。巨人には光線技が効かない。そのために遠距離からの攻撃という者が出来ない。だから必然的に接近戦になるが、そのためには自分も同じ土俵に立たなければならない。

『だからといってこのまま降りるって訳じゃ無いけど素な!』

 そう言うとアダルは翼をしまって、重力に従った。重力は重ければ重くなるほど落下するスピードを上げてくれる。

『おらぁぁぁ!』

 速度と巨体になった際に増量した体重。それに加えて重力の三コンボの乗った渾身の蹴りが巨人の腹を貫く。

『?! ギュラアアアアア!!!!!!』

 悲鳴が空気を揺らす。この攻撃は有効とみるとアダルはもう一度上昇し、同じように落下する。今度はそこまで高く上がらなかった為大きなダメージは予想出来なかった。だからこそ翼で加速した一撃を繰り出した。今さっき攻撃されたばかりだった巨人はそのダメージから抜け切れていなかったためそれの諸に喰らった。先程ほど悲鳴は鳴かなかったが確実にダメージは蓄積している。

『っと!』

 二回目の蹴りの後、アダルはしばらく巨人の様子を観察するために乗ったまま様子を伺っていた。その隙を見逃さなかった巨人は払うように両手で動かす。その行動を予想出来ていたアダルは難なく避けると上空に退避した。

『・・・・・・。相変わらず頑丈なことで。それに耐久力も出来てきたのか。何よりそんな重傷な状態で体力がまだあるのかよ』

 舌打ちを鳴らすアダルはゆっくりとした動作で立上がる巨人を見守った。

『ギュウララララララララ!!!!!!』

 雄叫び声を上げる巨人の形相は怒りに満ちており、その目は明らかにアダルの事を憎むべき相手と認識しているのが分かった。

『ここからが本番って訳だ』

 巨人の目を見て気合いを入れ直すアダルは上空で構えを取る。巨人もアダルモアダルを真似るかのように構えを取った。

『・・・・・・・』

『・・・・・ギュゥラア!!!』

 お互いに見合う中最初に動いたのはなんと巨人の方だった。突如巨人はアダルの方に掌を向ける。それを一度体に隠すように構えると直ぐにそれを見せ付けるように腕を伸ばした。瞬間巨人の腕は伸びた。それはもうどこぞのゴム人間の如く。

『んなのありかよ!』

 巨人の伸びた手は確実にアダルの方に向かってきている。まさか巨人にこんな飛び道具があったとは思わなかったアダルは一瞬その迫る手から逃げようと考えた。しかしそれだといつまで経っても追いかけられたままだ。最終的に体力が尽き此方が不利になると言うのが容易に考えられた。だからこそあえて彼は巨人に突っ込んだ。

『捕まえられるものなら捕まえてみろよ』

 そう挑発的に言うと彼は体の前で×のマークになるように腕をクロス刺せる。

『そっちがパーならこっちはチョキだ!』

 言い終えると同時にアダルは両腕を解き放つ。腕の軌跡をなぞるように炎の×文字が巨人の伸びた手とぶつかった。瞬間その場に水蒸気が発生し、誰もアダルの放った技と巨人の手がどうなったのか分からなくなった。

『・・・・・・』

『ギュラッ!』

 反応を見せないアダル。痛がる顔をする巨人。それだけでどちらの技の方が優れていたのかが一目で分かる。巨人は腕を縮めて攻撃を受けた掌に目を向けるとそこには×文字にぱっくりと焼かれた様に切り裂かれていた。いや、×文字に焼かれていたのだ。その火傷は手の骨全部を焼いていた。辛うじて炭化はしていない様子だが、それでももう巨人はその手を使うことが出来なくなった。

『ちっ!』

 巨人をそんな状況に追い込んだというのにアダルは凄く不機嫌そうに舌打ちを鳴らす。

『痛みになれやがったか。適応能力が高いことで!』

 先程の巨人の反応を見て確信を持った。骨まで焼いたというのに反応が薄い。と言う事は巨人は完全に痛みに適応したと言うことなのだ。

『まあ、それならそれでこっちにも考えがあるからいいんだけどな』

 やせ我慢では鳴く本当に対策は考えてあった。だからといってこんなに早く適応されたらアダルも面白くは無い。だから彼はさらなる熱技を繰り出すことに決めた。

『熱いからこれ系の技は使いたくないんだけどな』

 小言を口にしながらも彼は両手を合わせてそれを開く。するとその中には小さな火の玉が出来ていた。アダルはそれを頭上に掲げると両腕を開く。すると展開された大きさに比例して火の玉も巨大となった。アダルの上で燦々と輝く火の玉はまるでもう一つの太陽の如く周辺の酸素を糧に燃え上がっている。

『表面温度は三千度。中心温度は九千度。さすがに太陽そのものを再現したらこの星もただじゃ済まないからな。これでもお前は十分苦しむだろう』

 吐き捨てるように口にするとアダルはその火の玉を巨人目がけて投げた。

『ギュラ? ~~~~~~~!!!!!!!!』

 今まで手の傷を道に化できないかと見ていて巨人はアダルの攻撃に今まで気付かなかった。巨人がそれに気付いたのはさっきよりも気温が上昇したのと、先程より明るいと感じ取り、上を見たときだった。眼前に拡がる巨大な火の玉を目にして巨人はどうにか出来ないか叫びながら回避行動を取った。しかし時既に遅し。アダルが巨人に投げた時点で巨人が火の玉に包まれるのは決まっていたかのようにあっという間に巨人は飲まれた。

『~~~~~~~~~!!!!!!!!!』

 中でもがき苦しみながら巨人はうなり声を上げているが外にはその音は全く聞こえない。音を伝える空気さえも中では燃焼材料なのだ。外には伝わるわけがない。

『これでしばらくは時間稼ぎができるな。まあ、これで死んでくれたら楽なんだが・・・』

 そうもいかないのはもうわかっている。このまま簡単に死ぬほど巨人が柔じゃないのは。

『結界も周りに張ってるからしばらくは出てこれないと思う。だが問題はこいつの定期王能力の早さだな。どの程度でこの火になれるのか』

 アダルの考えでは今まで戦ってきた悪魔種の手先となった魔物にはそれぞれ特殊能力が存在した。猪王には牙から暴風を生み出す力が。軟体獣には再生能力があった。今回の巨人もそれに匹敵する特殊能力がもちろんあるはずなのだ。最初はどんな攻撃もはじく硬度を持つ皮膚だと思ったが。どうやらそれは副産物だったということに今さっき気づいた。巨人の特殊能力は適応能力。相手に合わせてその形態を変えることができるのだというのがようやくわかった。

『こっちに合わせて形態を変えるとか。反則もいいところだろ』

 嘆くアダルはあきらめに使い感情をはき出すように息をついて指を鳴らす。瞬間巨人を飲み込んでいた火の玉が消え去り、轟音を立てて巨人が倒れ込んだ。


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