四十六話 巨人再戦
アダルは大樹城から遠く離れた平野に来ていた。周りは草原で人工物は一つも無い。ただ馬車が偶に通るのか道が一本通っているだけの平野だ。今日彼がなぜここにいるのかと言うとそれはいつまでも先延ばしには出来ない問題を解決するためだ。
「んん~! うんっ! っと。体の調子も悪くない。これならいけるか?」
体の調子を探り、万全な状態だというのを確認した彼は体を伸ばした。
「さて・・・・・・。やるか!」
意を決したように深呼吸をするとアダルは胸に手を置く。数秒すると触れられている胸は発光し出す。そのタイミングでアダルは押す力を強くする。すると彼の手は胸の中に入っていく。
「・・・・・・あった」
中で何かを探し当てたのか、それを引き抜き始める。案外すんなりと抜き出したそれは当然の如く臓器では無い。取り出したのは発光したキューブ。アダルはそれの中に芽を槍ため息を吐いた。
「このままお前を潰せれば、楽なんだけどな・・・・。そういうわけにもいかないから背葉面切って倒してやるよ」
そう言うとアダルはキューブを砕き中身を上空に投げた。中にあった存在はK¥徐々にその大きさを取り戻していき、辺り一面をその巨体の影で覆った。
『~~~~~~~~』
決して言葉では表せないような咆哮を上げる巨人。アダルはその咆哮を危機、顔を歪める。
「俺の予想通り。こいつには皮膚の再生能力が備わっていなかったな。今度はやりやすいかもな」
巨人の体を見上げ、その状態を確認為る。巨人の腹部には焼とかされた後があり、胸部もいくつもの弾丸痕が残っている。その方かの胴体も肌を剥がされたような跡が見られた。
「・・・・・・・多少は楽だろうが。骨は折れるだろうな」
空笑い気味で呟くアダルはその間に巨人に起った変化にいち早く気付いた。
「ははは! お前てっきり筋肉が発達してないからずっとその体勢だと思って居たが・・」
巨人はゆっくりとした動作はあるがその体勢を変えていく、最終的には
「ちゃんと立てるんじゃねえかよ!」
『~~~~~~~!』
最早高すぎる巨人の顔を地上から見ることは適わない。見上げるのも辛いほどの巨体だ立ちはだかっていた。巨人はアダルの場所を見下ろすとその場で右足を上げると今まででは考えられない速度で叩き付けるように降ろした。
「速く動けるのかよ」
寸でのところで翼を広げ真横に回避行動をする。今まで自分のいた場所には巨人の足がある。先程の踏みつけでその場所を中心に足は沈み、地面が割れていた。
「あの体勢で遅かったから油断したが、立つと速いか。こいつ厄介じゃねーか」
巨人はアダルの姿を視認すると思う一本の足を踏みつける。彼はそれも回避するが、先程攻撃した足を繰り出してきた。
「・・・・・・まるで地団駄だな。まあ当るとヤバいから俺が避けているだけだけど」
巨人の心境はなんとなく分かる。多分蟻を潰そうとしたが、小さすぎて過ぎ逃げられた時の物と同じだろう。そのことに気が触って意地になり、確実に潰そうと試みているような感じなのだろうなと回避行動を取りながら思った。
「今度から無闇に虫を踏むのは止めよう」
蟻に気持ちもわかったアダルはそう決意しながら回避行動に精を出す。正直言って上を見ながら回避しているので避けやすい。いきなり第三の足が出てこない限り、このまま避け続けられるだろう。
「だけどそれじゃ意味が無い。俺はこいつを倒さなければならないんだからな」
本来だったら万全の状態のアダルと同程度の実力者が数人がかりで倒すべき存在であるのがこの巨人だ。先日の戦闘でそれが身にしみて分かっているアダルであったが、そこで有る言葉がリフレインする。星の意志が言っていた君なら勝てると。柔軟な思考力をもってすれば負ける相手ではない
のだという。
「だからこれ以上お前の攻撃に付き合っている訳には行かないんだよ!」
そう言うとアダルは自身の姿を瞬時に元に鳥人にする。そして飛翔しながら大きさも元のサイズに戻っていく。だがそれでも巨人からしたら取るにたらない大きさでしかない。きっと巨人は無視のサイズが大きくなったとしか見ないだろう。彼としてもこのサイズで巨人に勝てるとも思って居なかった。だからこそ考えた。如何すれば巨人を倒す事が出来るのか。物理の攻撃は勿論、アダルの光線を主体とした攻撃も効かない相手に如何するべきかを。
「いろいろ試したいが、できれば早期に終らせたいからな。だから前回思いついてはいたが出来なかった奴を試させて貰うぞ!」
層言うとアダルは己の体をさらに発光させる。すると彼に光の粒子が集まってきていた。これは光神兵器を発動している時に見られる現象と同じ物だった。しかし彼は光神兵器を使うつもりは無い。つまりはこの現象が見られたからと言って光神兵器が発動されるわけでもないと言うことだ。
光の粒子は彼に取り込まれていく。今は昼間であるため巨人が立ちはだかってここら全体が陰っていても光は集まりやすいため、アダルの体にどんどんそれが纏われていく。体全体が白熱化したアダルだが、それでもまだ光の粒子は注ぎ込まれていく。それは最早過剰とも言える程だが、それでもアダルは止めない。彼の目的は過剰なほどの光源の確保であるから。目的の為に続けていく。
『これからお前の目を驚きで染めてやるよ。巨人!』
宣言した声は巨人には聞こえていない。だけど何かしようとしているのだけは分かった巨人は今の状態でアダルを潰そうと試みた。巨人の本能が彼を野放しにしてはいけないと訴えていたからだ。今までは踏みつぶそうとしていたが、それでは不安を感じた巨人は腕を大きく振りかぶった。確実を期すために手で潰そうと考えたのだ。振りかぶった腕を振り下ろす巨人。その早さは先程の踏みつけよりも速かった。巨人も巨人で学習した結果なのだろう。
速く振り下ろされた巨人の手がアダルに触れる。少し硬い程度の熱を持った物体に触れた感触があったのだ。その瞬間巨人は確実に潰したと思った。歓喜に歯茎を見せるほどの笑みを見せる。しかしそれ以上は振り下ろせなかった。それどころかその触れた熱源が徐々に大きくなっていき。最終的に、巨人の手の甲を包み返したのだ。
『!?』
アダルの宣言した通り、巨人の表情は驚きに染まった。しかしこれで変化が終ったわけじゃ無かった。巨人の手を覆った物の正体が徐々に輪郭がはっきりし出した。それは巨大な手だった。巨人の物と遜色ない大きさを誇る巨大な手。刺々しく、鳥の足を思わせる作りをしている。どこかで見覚えのあるそれが巨人の手を覆っていた物の正体だった。
『これだけで驚くには早いぞ!』
巨大な手の奧から腕が出現する。前屈みになっていた巨人の体勢が押し戻された。そしてそのタイミングで発光していたアダルはその大きさを変えた。手や腕に見合う大きさ。つまりは巨人と同程度の巨体を誇るまでに。
『~~~~~~!!!!』
目の前で起った現象を信じられない巨人は唸りながら思わず飛び退いた。
『宣言通り、驚いた様だな・・・。っと。さすがにこの大きさになった事が無いから体重操作が難しいな』
体を起こし、その二本足で立上がったアダルは想いの他この巨体を支えるのが難しい事を感じながらもなんとか転ばずに体勢を保つことが出来た。
『前回は疲労と光神兵器の乱用のため体調が万全じゃ無かったから出来なかったが。声で条件は同じだな』
手足の動作や、体内の調子を確認し何の皹が無いと分かるとアダルはゆっくりとした動作で構えた
『さあ、始めようぜ。怪獣対決をよ』




