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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
第三章 金剛の翼巨人
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三十八話 魔王種

星の意志が発した言葉は彼に取ってはとても衝撃的な物だった。だからこそアダルはなにも反応為ることが出来なかった。

『あれ? 反応薄いな! もしかしてなんとなく察しがついてた?』

 軽快な声音で口にする星の意志の声になんとか反応を見せようとするが美味く出来なかった。アダルのぎこちない反応を目にした星の意志は首をかしげたが、すぐにアダルの考えを呼んでくれた様子だった。

『そうか。あまりに衝撃的すぎる内容だったから反応に困ってしまったんだね! ごめんごめん。軽く話すような事じゃなかったね』

 謝罪の言葉すらも軽く答える星の意志。その段階で大分混乱から回復していたアダルはもう星の意志のしゃべり方はこれから治ることがないことを確信していた。

『別にいい。考えたら分ることだからな・・・・。そうか・・・・・・。俺たちは殺されたのか・・・・』

 回復したとは言え、未だに受け入れる事は出来ないでいた。先程星の意志のしゃべり方について考えたのもの現実を逃避為るのに丁度良かったから過ぎない。正直この世界に転生してきてこれほどまでショックを受けるような衝撃を与えられたのは初めてだった。今まではショックを受けることはあっても割と直ぐに立ち直るか開き直ることが出来ていた。しかし今はそれが出来ない。それは今世の体が精神耐性が備わっていた為なのか。それか心底思い悩むような事に当ってこなかった為なのか。それすら分らなくなっている。それ程今の彼には衝撃が強すぎる事なのだ。

『・・・・・・・・理由。理由は聞いているか? 俺たちを殺してしまった理由を』

『ごめん! そこまでは聞いてないや。というか聞けなかった。あっちの星の意志も今の君みたいに思い悩んだような顔をしていたから。ただ殺してしまった償いがしたいっていって僕に十五個の魂を渡してきたんだ。それと自分の権能を削り取った物もね』

 肩を竦める星の意志。その態度は何がしたいんだろうねと言っているように見えた。実際彼が考えている事も同じ様な物だろう。

『そこまで為る奴がいるのか? 自分が殺してしまった生物に対して思い悩む奴が』

『そんなのいないよ! 少なくとも僕はあいつ以外そんな事する奴なんて見た事無い。しかも自分の権能を削るとも思っても見なかったよ。まったくもって馬鹿だよね!』

 なにを思ってそうしたのか。測りしれはしない。だけどきっと苦労しないようにと思って渡してくれたんだとは思って居る。そこまで破格の対応をしてくれるのはそれ程あっちの星の意志の罪の意識が強かったからだろう。今目の前にいる奴の言葉からして星に住んでいる者に対して破格の対応をする奴の方がおかしいという考えが一般的なのだろう。もしかしたら自分が命を喩え間違いであっても奪うことなどどうも思って居ないのかも知れない。そう考えたら自分は恵まれてると思った方が気が楽になった。だからといって自分の命を奪った奴の事を許せるかと言ったらそれはまた話が違うが。

『今のでこの話は終り。さて、本題の方に入ろうか』

 層言うと星の意志は自身の手の中に透明な球体を作り出して、それをアダルの方にはなった。攻撃かと思い、この体では迎撃する事が適わないので思わず体を背ける。しかしそれは彼の体に当る寸前に急停止した事によって当ることはなかった。いつまでも攻撃が当らない事に疑問を抱いた彼は正面に目をやるとそれはただ彼の前で浮かんでいるだけだった。

『それを手にとって。そしたら詳細が見えてくるから』

 些か信じがたいことだがそれでも彼は球体を手に取った。すると球体の中から様々な映像が飛び出していく。

『うあっ!』

 驚くあまりそれを放ってしまった。しかしそれは落ちる事無く漂った。

『ははっ! そんなに驚かなくても良いじゃん。これは君がいた世界の技術でもあったんだよ!』

 星の意志の言う通りこの球体は映写機のようなものだった。冷静になれば分ることだった。

『驚くなって言う方が無理だ。何か分らない門を渡されて、そこから映像が飛び出してきたら誰も驚くだろ』

『ははっ! 確かにそうかもね。むしろ知っていたからこそ驚いただろうし、混乱を起こすことがなかったね。そこは助かっているよ』

 なにに対してあえて付け加えるのなら説明をしなくてと言うのだろうな予想するが、それを口にしてしまって野暮だろう。

『浮かんでいる事に関して言えばなぜか聞きたいが、それは止めとくとして』

 アダルが目を向けるのは映写機によって上に移し出された映像。移し出されたものは十個以上もあった。それらが全て何かしらの巨大生物によって生物が蹂躙されたものばかり。見ていて気分を悪くする類いの映像だらけだった。

『これは全部悪魔種の仕業か?』

『そう。正確には魔王種といった方が良いのかな?』

 聞き慣れない言葉に耳を貸したが、おそらく星の意志が悪魔種の事をそう呼んでいるのだろうと思いあえてスルーした。

『・・・・・・。聞かないんだね、僕が彼らを魔王種と言ったこと』

『聞いたところでだと思ってな。どうせ悪魔種の幹部の総称かなんかだろ?』

 その堪えに星の意志は笑った。笑い方からしてどうやらその答えは不正解だったらしい。

『それも間違いじゃないけど正解じゃないよ。魔王種って言うのはね。悪魔種の想いが作り出した指導者達のことを指す種族名だ』

『作り出した?』

『そう作り出したんだ。本来思いが具現化する事なんて無い。具現化するにはとてつもなく濃密で混じりっけの無い思いがいくつも無ければならないからね。いくつと言っても少量で言い訳じゃない。百から千。万にも到るほどの者達が同じ事を考えなければそれは現れる事はないのさ』

 だけどそれが実際に誕生してしまった。その理由にアダルは直ぐに行き着くことが出来た。

『地上を追い出されたから悪魔種を上回る新たな種族が生れたのか』

『そうだね。それが尤もたる理由だ。悪魔種達は執念深く一度された事は死ぬまで忘れないし、死んでもその念を抱く者だっている。地上を追放されて、封印されたって、彼らの思考は止まる事が無かった。新しい種族を生み出す環境を満たしてしまったのさ』

 生れるのは当然の結果だねと言うと星の意志は腰を下ろして映像を見上げる。

『彼らに込められた感情は復讐がほとんど。だからこそ地上全ての生物を駆逐しようとしている』

『まあ、分らなくはないが。迷惑な奴等だな。自分がやった事は棚上げして被害者ぶるのはたちが悪すぎる』

 疲れた表情を放ったその言葉に星の意志も同意するように頷いた。

『まったくだよね。反省もしないで封印されたから復讐するっていうその根性が分らない。まあ他人がなにを考えているかなんて分らなくて当たり前なんだけど。まあそれはさておきだ。魔王種っていうのは悪魔種の想いの塊であり理想的な指導者として作られた連中だって事は覚えておいて。あっ! この情報はクリトの元王様にも言っていいからね』

 クリトの元王様。おそらくフラウドのことを指しているのだろうと冊子ながら有る疑問が頭に浮かんだ。

『一つ質問だ。魔王種っていうのは悪魔種達の想いから出来たって事は、その強さも悪魔種以上って事で良いのか?』

『あんまり応えたくない質問だけど正直に言っちゃう。その考えは正解だよ。君たちが倒してきた獣の力が一だとしたら魔王種は百を超えるだろうね。もしかしたらそれ以上の可能性だって有る。強いなんて者じゃないよ。星の権能に匹敵するぐらいの戦力は持ち合わせている。もし彼らが地上に現れたら本当に全生物が絶滅しちゃうくらいの力を持っていると考えていいよ』


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