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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
第三章 金剛の翼巨人
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三十話 竜達の計画

で宿泊している者達もさすがにこの騒動に気付いているで有ろう事は察した。彼らはそれでも尚動かない。動こうとはしなかった。なにせ彼らの仕事はユギルの護衛。その主君であるユギルの側から離れるわけにはいかないのと、いざというときに直ぐに逃がす為に動けないのであろう。そうでなくても彼らはアダルに絶対的な信頼を寄せている傾向にある。だからこの程度の攻撃でやられる訳が無いと判断してくれているのだろうと言うことも彼は分っている。勿論こちらに応援を寄越そうという意見も合ったであろう。そこはレティアが彼の邪魔になるだろうからと判断して今はいざというときのために屋敷の逃亡の為の準備をしているのであろう。

 それはさておき、攻撃が止んでアダルは軽く背伸びをして床に無造作に寝転んだ。いかにも死体に見えるように。襲ってきた竜達がそれをみて喜びように無様な形になって。彼自身には一切の傷を負わせることが出来なかった事も気付かずに彼らはこの部屋に入ってくると判断しての行動だ。最初に負った火傷も今は完全に完治している。三十分もの時間が合ったのだ。実際には負って直ぐに完治させていたからあまり時間は関係無いのだが。

 そんな事を考えていると先程攻撃が入ってきた窓から侵入してくる気配を感じ取った。気配は五人。全てから竜の気配を感じとれる。それもヴィリスやヴァールに似た気配。そこから年月は感じとれなかったことからおそらくはヴィリスよりも下の世代である事が窺えた。

「ははっ! こんな物かよ! 案外簡単に死ぬんだな! こんな奴が巨人脳襲撃をとめたっていうのは嘘じゃねえの!」

 一人がアダルの真っ黒になった姿を見つけると愉快げに声を上げて笑い出す。声からして良く言えば豪快。悪く言えば野蛮で態度の悪い男の声だ。

「全くその通りですわね。そもそも巨人というのが妄言だったのかも知れませんわね! 我が国を脅して財宝狙ったのかも知れませんわ。もしそうだったのなら私達はその在任を裁いたのですから褒められるのではありませんの?」

「そうかな? そうだったら嬉しいな! 私母様から全く褒められたことがないから褒められてみたんだよね!」

 二人は女。前者の方はいかにも典型的な竜って感じのいかにもプライドが高いと分る。後者の方はどこか幼さが目立っている。

「ほ、本当に死んでいるのかな? 確認しなくて良いの?」

「おいおい。確認しなくてもわかるだろ? ここまで近付いてもこいつの鼓動は聞こえない。全身焼け焦げている。心臓部にはお前の放った雷の傷が有るじゃ無いか。ここまでやって置いて死なない奴がいる物か」

 心配性の女の声を否定したのは男の声で、どこかさわやかさを感じさせる口調だった。

「そうですわね。五人の本気をぶつけて死なない生物の方が少ないですわよね」

「そうだよねそうだよね」

「はははは! そうに決まっているだろ! 俺たちが力を合わせれば巨人だって怖くねえよ! まあ、その巨人もこいつと一緒に死んじまっただろうがな!」

 彼らの言葉を聞き、アダルは溜息を吐きそうになる。無論それは我慢するが、内心で吐きまくる。なんでこいつ等はこの程度の未熟な攻撃で巨人を殺せると思って居るのだろう。なにがこいつ等をここまで調子に乗らせているのか。おそらくはプライドであろうということは検討が付く。それでいて大母竜にも問題があるとアダルは思って居る。彼女は滅多に子供達を諫める事をしないのだ。それは子供の自主性を重んじているといってしまえば聞こえは良いが、ただ単に放任主義なだけだ。それでいて彼らは如何に自分の種族が優れているかという風に従者達から育てられている。そのために竜達は正確が歪んでいる者が溢れるように存在すると言っても過言ではない。

「それでこれから如何するの。ここはヴァール兄様の領地だよ。もしここで暴れているのがバレたら大変なことになるんじゃない?」

「全くもって問題ありませんわ。ヴォルテスがきちんと作戦を考えてくれましたからね。後はそれを実行するだけですわよ」

 なるほど。彼らは彼らなりに作戦を考えて実行に移していたのだなとアダルは関心してしまった。ついでにその作戦がどのような物か気になったため勝手に口を割ってくれることを期待してそのときが来るのを待った。

「そ、それってどんな作戦なの? あ、あたしそんな作戦聞いていなかったと、お・思うんだけど」

「私も知りたーい。この後はなにをするの」

 都合の良いことに心配性の彼女が聞いてくれた。アダルはなに心でよくやったと思ったが、作戦を知っているであろう三人は溜息を吐き、各々で顔を見合わせた。

「この襲撃は私達が行なった物ではありません。ここに招かれている人間達が行なった事なのですから」

「なるほど! 其奴らに濡れ衣を着せるわけだね! だけどその場合私達はここでなにをしたことにするの?」

「俺たちは人間達がこいつを襲っていることに気付いた。偶然一つ下の階層で集まっていたところ。ここの気配が異様だったことに気付いた。だからこそ無礼である事は承知だったが駆けつけた。しかし既に遅く、こいつは死んでいた。この様な犯行を城内で行なった事に怒った我々がその人間達に罰を与える。という筋書きだな。都合の良いことに人間達はまだこの屋敷にいる。全員始末してしまえば俺たちの筋書きが真実になる」

「なるほど! 口止めか! そのために殺すんだね。頭いいな!」

 確かによく出来ているとも言える。アダルでさえ関心してしまった程だ。しかしそれを考えた奴はこいつ等の実力を高く見過ぎているとも思える。彼から見て五人の竜はまだまだ成長途中。ヴァール程の実力者でなければこの広い階層害からの気配など拾えるはずがない。それに人間を舐めすぎている。彼らは暗殺をするときにこの様な面倒臭く派手な方法は取らない。それでいて彼らは一番舐めてはいけない者を舐めていた。実力すら分らない相手。それでいて再生能力を持っている相手がたかがその程度の攻撃で死ぬと思って居るのだ。たしかに並大抵の者だったら一瞬で竜にやられるだろう。しかしここにいるのは並大抵の者で有るわけが無い。彼の実力は本物であり、それはこの城で証明されている。幸か不幸か彼らはそれを知らない。アダルの被害に遭った者達よりしたの世代であるためそのような出来事があったことは知っている。しかしその場を現実に見たわけではない彼らからしたらそれはまさに言い伝えのような者としか認識していなかった。言い伝えは忠実を元に伝えられている事のため守った方が自身の身を守れる可能性が高くなる。だがそれを常々守ることなどどのような生物であったも不可能だ。何せその恐怖は言った者にしか分らない。後世に生きる者達にとっては理解しがたい事が大半だ。

「・・・・・・さて、さっそく計画を次の段階に進めるとしようじゃねえか!」

「ふふふっ。馬鹿な下等種族だ事。私達の計画に利用されるとも知れず、逃げ出さなかったなんて。人間達はもうこの劣等種の男が死んでいることに気付いていないのかしらね・・・」

「知らないんじゃない? それか知っていても未だに現実を見られていないか。まあ、どっちでも良いか!」

 五人はアダルの元から離れるとその足で廊下に続く扉に近付いている。

「さあ、精々逃げ惑って愉しませてくれよ! ただ追いかけるだけなんて退屈だからな。少しは足掻いてくれることに期待するぜ!」

 層言うとその男は扉に手を掛けて開け放った。


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