十四話 予定変更
このような駄文でも読んでくださっている読者の皆様。更新が遅くなって申し訳ありませんでした。実は十三話の更新の後。夜中に四十度近い熱が出てしまいました。幸い重大な病気とかでは無かったのですが、その後もなかなか体調が回復しない状況が続いたためその間更新が出来なくなってしまいました。申し訳ありません。これからも駄文なりに書いていくつもりなので応援よろしくおねがいします。
扉が開かれるとそこは豪華に装飾された二階構造の広間だった。天井にはそれぞれ色が違う十二ある人の影が上からこの場を見守るかのように描かれていた。天井に絵が描かれていない場所から巨大な水晶で出来たシャンデリアがこの謁見室を優しい光で灯してくれる。しかしこの場にいる者達はこの明かりとは違い、決して優しい者だけではないだろう。そんな事を考えながら、アダルはその中に一歩踏み出した。 まるで前世の野球球場を思わせるその場で王族を名乗る者達は皆、二階部分に当たる観覧席のように高く設置された場所に座っていた。アダルは真っ直ぐ足を進めると、ふとその存在に気付いた。自身の進行方向にその二階に進める階段があったのだ。アダルはその階段の前で足を止め、徐ろに階段を見上げていく。階段の正面に座っているのは他の王族とは違う椅子に座った三十代くらいの優男の姿であった。彼は頭に王冠を乗せている事現、クリト王国の国王だろうアダルは悟る。そんな彼はアダルが階段したまで来たのを伺うと、徐ろに立ち上がった。
「歓迎いたします。巨鳥殿」
そんな事を言いながら、彼は自身の目の前にある階段を下り始めた。
「我の名前はエドール・クリト。現クリト王国にて、若輩ながら国王を務める者です」
階段を降りきると、自身の自己紹介を始める。
「態々、遠く汲んだり。ご足労願い、感謝の念しかございません」
礼儀正しいのか、彼はアダルに向い頭を下げた。それにはさすがの王族達はざわつき出した。アダルもさすがに慌てた。
「本日は謁見のご予定でしたが、急遽。我が大祖父、フラウドの要請によりここ会議場で巨大猪王対策緊急報告会を開く事になりました。突然の予定の変更。お伝えしなく大変申しわけありません。謁見はまた後日催させていただくので、ご容赦ください。」
彼は心底申し訳なさそうに再び頭を下げた。そこでアダルは納得した。だからここが会議室と思わせたのかと。
「頭を上げてください、クリト国王よ。それでは国のトップとしての威厳が保ちません」
少し、畏まった感じでアダルはエドールに頭を上げるように促した。
「お優しい方なのですね。巨鳥様は」
すると階段の方から女性の声が聞こえた。そちらの方に目を向けると絶世の美女を体現しているような女性が楽しげに微笑んでいる。
「お初にお目に掛かります。私めはエドールの妻にして、ユギルの母。カトレア・クリトと申します。以後お見知りおきを」
そう言うと、彼女はドレスのスカートの裾を持ち上げ、軽い会釈をする。
「そうだな。そんな奴に頭を下げる程、無駄な行為は無いな。困っている奴をほっとけないお人好しなんだから」
そんなアダルを良く知っている風な言葉が突然その場に響いた。その言葉にはさすがのエドールも頭を上げ、声のした方に目線を向けた。
「フラウド大祖父様」
先程アダルが入っていた扉にもたれているフラウドの姿にエドールは驚愕している。思わず彼は今、自身が疑問に思っている事を口にする。
「巨鳥殿と面識があったのですか?」
「・・・・まあ、随分と昔からな。最近は連絡を取り合ってなかったからお前は知らないだろうが」
嘘は何一つ言っていない。彼からしたらこの世界に生れる前からの知り合いであり、前世では幼なじみだった仲だ。それに連絡も取り合っていなかった。本来ならば、最初に「この世界に来てからは」と付けるべきだが。彼の言葉にエドールはめを見開いて驚いている。他の王族達も驚いた様子でその場はどよめき経っている。しかしフラウドはその場の空気を読まずに呆れたようにエドールに向って言い放つ。
「お前は真面目すぎるのが欠点だな。そんな性格だとこの先、余計苦労するぞ」
アダルは目線で「お前が言えた義理じゃ無いだろ」と訴えたが、見向きもしないで彼はエドールを窘める。しかしそんな呆れ顔の彼にエドールは反論を返してきた。
「しかしですね、大祖父様。彼は事実我々が招いた客人です。客人に対しては最高の礼儀を持って対応する。これは常識でございましょう。しかしもてなしもせずに最初から会議に参加させるなど、非常識にも程があります」
「真面目を通り過ぎて、最早堅いな。いつも言ってるだろ? もっと柔軟になれと」
「自分はいつでも柔軟ですとも。むしろ大祖父様の頭の方が堅いと思います」
その言葉にはさすがのフラウドも反応し、とブラに背を預けるのを止めた。
「どこが頭が堅いだ? 俺ほど柔軟な頭の持ち主はいないだろう! そうだろアダル」
突然降られたアダルは一瞬だけ、驚くように肩を上げる。
「柔軟・・では無いだろうな。お前は昔からいつもある一方のことしか考えていなかった印象があるから」
「な!」
「援護射撃ありがとうございます。巨鳥殿」
彼の言葉で相当ダメージを受けたらしいフラウドは体がよろけた。対するエドールは何故か勝ち誇ったような顔をしている。
「大祖父様の古き友人が申すのですからこれは紛れもない事実でありましょう! さあ、お認めください。貴方の方が頭が固いと」
フラウドは「ぐぬぬっ!」悔しそうに唸っている。その姿はまるで裁判映画で尋問中に決定的証拠を提出された被告人のようだとアダルは思った。彼は徐にカトレアに近づきある事を聞いた。
「あの二人はいつもこんな事を?」
彼女はゆっくりと頷くと、曖昧な笑みを浮かべる。
「お見苦しい所をお見せして申し訳ありません」
彼女は少し恥ずかしオスに顔を赤らめて鋭い目線をエドールに向け発射する。
「エドール様? 今、自分がどこにいるか。分かっておいでですか?」
発せられたその声でこの場に空気が凍った。その声はあまりにも冷たく、痛々しい。それはまるで吹雪を連想させた。その声でこの様子を楽しんで見ていた様子の王族も黙らざるおえない。
「す、すいません。巨鳥殿。お見苦しい所を」
その声をかけられた本人は慌てたように姿勢を正しす。その姿勢は異様と思うくらい綺麗な物だった。フラウドはこの状況に呆れたように溜息を吐きながらこちらに足を進めてくる。彼はアダルの近くで足を止めると、まだ何か言いたげなエドールを無視して、徐ろにかかとを二回鳴らした。すると、会議場の明かりはすべて消える。数瞬の後にフラウドの足下を中心に巨大猪王の画像が移し出された。
「エドール。俺とお前との茶番の時間はここまでだ。ここからは国家存亡に繋がる話を始める」
「まず状況から説明しておこうか。何せ、未だにこの危機的状況を理解していない馬鹿共が存在するらしいからな」
そう言うと、フラウドは二階にいる一部の王族に非難の目を向ける。向けられた一部の王族達は小さく悲鳴を上げる者もいたが、そうでないものも存在為る。その者に数秒間、フラウドはその目を向け続け、再び、足下に映されている画像に移す。
「今回、王国に来ると黙されている個体がこいつだ。特徴としては、全長三十メートル程の巨体。基本的に真っ直ぐしか進めない。そして、歩くのが遅いなどあるが一番の特徴は嵐並の暴風を出すこの牙だ」
「あの! 質問良いですか!」
二階の者がフラウドに手を上げると、彼はその者に頷きで返す。その者は立ち上がると、一歩踏み出した。
「王位継承権。第十一位のアリウスです。質問なのですが、もしこの個体が王国に侵入したら被害はどのくらいになりますか?」
彼の言葉に反応為るように足下の画像が変わる。それはこの国の地図だった。
「予想される被害は建物だけだ。しかし、これはあくまで予想でしか無い。こちらにはこの個体の情報がすくな過ぎる」
「そうですか・・」
報告会はフラウド中心に回されていく。しかし、まだ始まったばかりなのだ。




